早期診断ではなく早期理解を
衝動性が高くて、言語理解はできるのに話を聞いてなくて、
「わかってるのにわざと聞こえないフリをするんですよー」とか
「言ってることは分かってるんですけどね…」とか
「言っても聞かなくてイライラしてきちゃうと、引っ叩いちゃうこともあります」とか
まあそんなお子さんがよくいます。親御さんがつい叩きたくなるタイプの子って言うんですかね。
こんな相談を受けてる時に、やれ「動きは多くないですか?」などと発達障害を連想させる言葉を使って聞き取りをしようとすれば、一瞬で保護者の顔色はくもります。
さっきまであんなに心配していたのに「でも大丈夫です!」と明るく元気に答えられてしまう。
いやいや、さっきまで引っ叩きたくなるくらい大変だって言ってたじゃああん…と頭を掻きたくなる。
発達障害という言葉は、確実に子育て世代に浸透してきてます。視線が合うとか指差しとか多動なんてワードを言った日にゃ、保護者の方々は思うのです。
「発達障害じゃないかと疑われてる…!」と。
こう思われたら最後、1歳6か月児健診から3歳児健診まで「様子を見たい」となってしまい、必要な支援は入らないまま親子共々、疲れさせてしまうわけです。
ここで大切なのは、支援を受け入れない=助けて欲しくない ではない点です。
相談を利用したくはないが、相談はしたい。
健診で発達面の心配がある場合や、保護者がどのように子どもと関わっていいかわからない場合、私の自治体では心理士による個別相談の事業が利用できます。
無料です。
カウンセリング1時間、大人が利用したら何千円とかかります。それくらいの価値がある相談が無料です。
ですが、相談利用を提案するとほとんどの保護者の方が言います。
「そこまでじゃないんで」
でも相談利用を提案する前は、当たり前のように皆さん心配されてます。「うちの子、成長がゆっくりですか?」「動きが多いですか?」と。
相談は利用したくない。でも相談はしたいんです。
保健師にピックアップはされたくないんです。でも困ってるし、心配もしてるし、どうしたらいいかは知りたいんです。
じゃあ子どもとその保護者のために私は何をすべきか。健診の場で具体策を伝えきるしかないんです。
保健師に選ばれて質の高い心理士の面談を受けるより、
質はそこそこだけど保健師に選ばれることなく相談できる方が、保護者にとっては良い場合もある。
不思議なもので、さっきまで「相談は利用しなくて大丈夫ですー」と仰っていた保護者も、具体策伝え始めると食い入るように聞いてくれます。
早期理解を目指したい
私がお子さんの発達の状態を伝える際によく使う言い回しが、見る力と聞く力です。
衝動性が高く、わかっているのに人の話を聞いてない(すぐ忘れてしまう)3歳児ならば「見る力が強いが、逆に聞く力は弱い。言葉だけの指示では聞こえてないことが多い。」と伝えます。
わかる人にはわかってしまう。遠回しだけどつまり発達障害の特徴に当てはまることに。
でも「発達障害」という単語を出そうものなら、保健師の言葉が保護者に届きにくくなります。
そりゃそうです。「もしかして発達障害を疑われてるのでは?」と不信感がある状態で、冷静に保健師の話を聞けるわけありません。
保健師側の疑念を解消しようと「心配はしてますけど、成長もしてるので」の健診場面でよく聞く言葉が返ってくるでしょう。
私が目指すのは必ずしも早期診断ではなく、お子さんへの早期理解です。
理解が出来ればイライラしなくて済むかもしれない。理解が出来れば保護者の方が「この方法はどうだろう」と臨機応変に対応を考えられる。
理解されれば、お子さんの健やかな育ちにつながる。
だから保護者に理解してもらえるなら、多少言い回しを変えてでも、聞いてもらえる方法をとりたいなと私は思います。
これからすること
保護者の方に具体策を伝えるときは、「一般的に、〇〇タイプの子には●●のやり方がわかりやすいと言われてます」と言うようにしてます。
あなたのお子さんを〇〇タイプですと決めつけてないよ感&●●のやり方を選択するかは好きにしてね感
があって保護者に助言が入りやすくなる気がするからです。
保護者の中には「〇〇タイプの子の場合は、どんな相談先があるんでしょうか?」と返ってくることもあります。
本当は自分が悩んでるけど「友達が〇〇のことで悩んでてー」と話す方が、相談しやすかったりしますよね?これと同じ気がします。
支援者側は、保護者にお子さんの特性を認めさせたくなることがあります。
私もよくこの状態に陥っては疲労し、無力感に苛まれます。
また園の先生が困ってるのに、保護者には園の困り感が響いていないとき、どうにかわからせてやってくれ!というスタンスで保健師に連絡が入ることもあります。
繰り返しになりますが、私の目標は保護者にお子さんの特性を認めさせることではなく、正しく理解してもらうことです。
そのためには日々の事例検討や、情報収集、自己研鑽が必要です。
また自分が伝えた具体策が、その後役に立っているのかを聞き取ることも忘れずに。
さあ、明日も健診頑張りましょうー