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【体験談 その3】

 これは、私の体に実際に起こった出来事に
なります。少しばかり怖い方向に話が進みま
すので、苦手な方はほんとうにこのまま読ま
ずに閉じてください。

         
         
          *
         
         

 魚の腐ったような匂いがする。家族が買い
物から帰ったとたん、そう言ったのは先日の
ことになります。昼食に魚料理をつくって食
べたわけではなく、生ごみも臭いが漏れない
よう、きちんと台所の袋に入れ閉じておりま
した。おかしいね、と首をかしげながらやり
過ごしていたのだが、私には、思うものがあ
りました。

 買ってきた材料で調理した夕食を食べ、し
ばらくナイター中継を見たあと、勝負の行方
を見届けることなく寝室へ向かいました。私
の仕事は炎天下のもと外での作業ゆえ、睡眠
は必要不可欠です。熱中症対策を含め早めに
就寝することにしました。午前一時ごろだっ
たと思います。仰向けで寝ていましたところ、
突然の胸の痛みに目を覚ましました。肺が押
しつぶされるような苦しい痛みです。何で、
と思いながらやわらげようと何度か寝返りを
打ちました。時間にして十分程度だったろう。
そのうち痛みは半減しました。その日は眠気
も勝ってか、そのまま朝まで眠ってしまいま
した。ベットから起きると何事もなかったよ
うに痛みも消えていたのです。
 そしてまた、夜になりました。明日も勤務
日でしたので、早めに横になりました。痛み
で目を覚ましたのは、午前一時です。(  うう
っ)と呻き声が出ました。再び肺が押しつぶ
される痛みに襲われました。寝返りを何度も
打ちながら、病気だろうか考えましたが、そ
れならば普通に仕事などできないのではない
か。朝起きて夜ベットに入るまでは痛みを感
じることはありません。何で?頭を働かせて
いると、魚の腐ったような臭いがしたのを思
い出したのです。
 一概には言えませんが、もしかすると家族
が買い物から帰る途中、悪い霊を連れてきて
しまったのだろうか?(何も無いところで魚
の腐ったような臭いがすると危険だと聞きま
す)いやいや、そんなことあるだろうか?
考えてみましたが、痛みが半減したところで
炎天下の仕事を思い、その日も無理やり寝て
しまいました。

 胸の痛みを感じはじめてから三日目の夜で
す。やはり同じ時刻、きっかり午前一時、肺
が押しつぶされる痛みで目を覚ましました。
これまでは、痛みがやわらぐまでやり過ごし
ていましたが、エアコンをつけていたにもか
かわらず、気づくとびっしょり汗をかいてお
りました。今度ばかりはヤバイな、と決心し
てガバッと上半身を起こしました。すると、
私から1メートルくらいの距離を保ち中空に
留まったまま、青白い煙のようなものが揺れ
ていたのです。こちらを伺っている気配がし
ました。素早く仰向けの姿勢に戻り、ここか
ら去ってください、去ってください、目を閉
じて胸の前で手を合わせました。

 私は子供のころ、両親が共働きでしたので
祖母に育てられました。祖母は、「  南無妙法
蓮華経」を毎日唱えておりました。以前の記
事でも書きましたが、私が中学二年生のとき
に亡くなり、亡くなってからも助けられた経
験があります。今回も、自分ではどうするこ
ともできなかったので、祖母を心に浮かべな
がら、「  南無妙法蓮華経……」と呟き続けま
した。胸の痛みが徐々に遠ざかっていくのを
感じました。完全に体から消えるのを待って
目を開けると、青白い煙のようなものは消え
ていたのです。

 あれは何だったのでしょうか。助かったの
でしょうか。話を聞いてくれそうなやさしい
人に霊がついてくる場合があると聞きます。
もちろん、悪霊の仕業だと断定はできません
が、不思議な夏の夜の体験であったことは間
違いありません。

          *

 お読みくださいまして、ありがとうござい
ました。



#眠れない夜に

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