立派なことが言えなくても自信を持って話せます!|光文社新入社員シカマルの出版就活
「面接で自信を持って話ができないと結果が出ない」ということがわかり始めたのは、就活も終盤に差し掛かった頃だった。面接を終えて、「今日はうまくいったな」と思えたときは大抵うまくいっていた。もちろん、逆もまた然り。
だから、僕は最終面接で自信を持って話せるように準備をしようと思った。
といったところで簡単にできるものじゃない。おそらく一人で黙々とやる就活だったら、最後まで心配性な自分に負けていたんじゃないかと思う。
どうにか自信を持って話せるくらいまでに自分を変えられたのは、間違いなくOB訪問のおかげだ。
そんな立派なことは言えません!
僕はグループ面接が本当に苦手だった。
同じ空間にいる就活生が、とんでもなく優秀に見える。彼ら彼女らの話す内容を聞いていると、より一層そんな風に思えてくる。
例えば、志望動機。僕の志望動機はいたって単純で、要するに「本が好きなので本に関する仕事をしたいです」ということだった。
気分屋なので、「好きじゃないことに関わる仕事は辛いだろうな〜」と考えた僕は、自分の好きな本、特に小説に関わる仕事がしたいと思っていた。だから出版社。以上!(ちなみにこの舐めきった姿勢は、なんとまだ持ち続けている。)
そんな僕は、他の就活生の志望動機を聞くたびに、「か、勝てない…」と思っていた。とにかくみんな、立派なのである。「誰かに何か伝えるのが好き」とか、「世界にまだない価値を届けたい」とか。そしてその全てが、これまでのなにかしらの経験に基づいているという徹底ぶりだ。
さらに、さして特徴もない自分の学生生活も、大きな不安ポイントだった。僕が大学時代にやったことといえば、毎日のように映画館に通っていたことくらい。大したことはしていない。学業も大して真面目にやらずに、たまに苦労してレポートを出すと、先生からたくさん赤をもらって「大学生の書く文章ではない!」などと言われていた。
でも、面接でライバルのガクチカを聞くと、みんな「YouTuberをやってた」「体育会系で活躍していた」「長期留学で文化の多様性を学んだ」という華々しい経歴をたくさん持っている。
【ガクチカ】「学生時代に一番力を入れたことはなんですか?」という就活定番の質問のこと。就活生の勝負所であり、地力が出やすい(私見)。
羨ましい!そんなキラキラした経験が切実に欲しい!僕もチキらずにどんと一年くらい留学して、文化の多様性を学んでおくんだったとその度に後悔した。
そんな僕がなんとか就活をやり切れたのは、間違いなくOB訪問した先輩のおかげだった。
↑そんな感じのノリでもないくせに「流行りに乗ってる大学生」を演じたくてTikTokとか言ってる一年前の自分。
何もない自分でも戦える!
就活は、学生時代の経験とか趣味とか、すでに手に入れているものの比重が極めて大きいと思う。しかし僕がOB訪問で得たものは、そうした中でかろうじてできる”努力の仕方”だったのかもしれない。
出版業界へのツテがなかった僕は、OB訪問を仲介してくれるサービスを利用してなんとか数人の方とお話しすることができた。この令和の時代に生まれたことを心から感謝した。OB訪問で出会った方の中には、僕を出版業界の方々が集まるお花見に誘ってくださるような親切な方までいて、すごくすごくお世話になった。
例えばESの書き方。「ESは面接で話す内容を意識して書きましょう」という就活体験記を読みながら、「いや面接受けたことないから知らないし!」と思っていた僕は、当時頭を抱えていた。だからこそ、面接が(というか就活が)どういうものかを熟知している出版業界の先輩の話は、とんでもなくありがたかった。
そこで知ったことは山ほどあるのだけど、中でも一番印象的だったのが、「出版は『ガクチカ』の代わりに『あなたの好きなこと』を聞かれるよ」ということだった。お話を伺ったその時は「そんな面接があるかよ」と思ったものの、実際受けていると本当にその通りだったのでびっくりした。初めは疑っていた自分をぶん殴りたい。
先ほどの先輩によれば、興味範囲は「広く浅く、局所的に深く」ということだった。この格言めいたアドバイスも、正直はじめは話半分に聞いていたのだが、すぐにこれが本当だと実感する。
ちなみに僕が語った好きなことは何かと言うと、「映画」「小説」「テラスハウス」、この三つ。
テラスハウス???というツッコミが今すぐ入りそうだが、これが意外とウケた(気がする)。「テラスハウスの一体何が面白いの?」と若干食い気味で聞いてくる面接官を相手に、「テラハは人生の教科書なんですよ!」と私は熱弁した。その面接官は妙に感心したような表情だったが、隣に座っていた優しそうな女性の面接官は笑ってくれた。
とはいえ、この話題をESに取り入れてから、僕の就活模様が好転し始めたこともまた事実だ。本当に、テラハ様様である。
面接対策は台本作り
面接ごとに振り返りを毎回やったのも、先輩からのアドバイスだった。これがなければ本当に僕の就活は悲惨なことになっていたことを思うと、このアドバイスをくださった先輩には一生頭が上がらない。
では具体的に何をしていたか。
面接終わりに、聞かれた質問とそれに対する答えを覚えている限り書き出す。さらに、もっと良い答え方はなかったのかを考えたり、「ここから聞かれると思わなかった」という質問を書き出したりと、予想される質問と回答の精度を上げていった。
こうしてできた「台本」を元に、次にこれを聞かれたらどう答えようという想定をしておく。台本があれば、話し下手な僕でもまるで自信があるかのように話すことができた。
大体同じESを書いていると(どうしても自分のアピールポイントは限られているので、内容的には同じようなものになる)、大体同じことを聞かれる。聞かれることがわかっていれば、答え方も決められる。予想していた質問が来た上で準備していた回答をうまく答えられた時は、内心ガッツポーズしていた。
練習していたことが出せる時は、やはり自信を持って答えられる。そういう面接は、今振り返ると楽しかった。
↑某出版社に出した企画案。よく知りもしないのに「ワセジョ」とか言うのがグーパンものだし、何より単純にタイトルがダサい。
最後に
同じ業界を目指す就活生のそうそうたるポテンシャルにビビっていた一年前の僕のような人は、きっとたくさんいると信じたい。でもやっぱり、やりようによっては、なんとかなるもんだと思う。やりようが分からなかったら、知っている人に聞けば良いのだと学んだ。意外と親切に教えてくださる方はたくさんいて、そのことが僕にとって何よりの救いだった。
その「やりよう」というのは、もちろん人それぞれだと思う。ただ、自分が決めたことを納得がいくまでやり通したことが自信に繋がったと、当時を振り返って感じている。
とか言っている僕だが、光文社の最終面接でOB訪問した先輩の名前を間違えていたことは、生涯忘れられない事件となった。そのことに気づいた瞬間、今まで経験したことのない量の汗が一気に噴き出してきて、面接が終わる頃には脇がスースーしていた。この時の妙な清涼感については二度と思い出したくもない。
散々「OB訪問が〜」とか「自信が〜」とかいっていたくせに、結局最終面接の緊張感の前で僕は、見事にテンパり散らかしていたのである。今就活に臨んでいる方には、お世話になった先輩の名前を決して間違えてはいけないという、人間として当たり前のことだけは念を押しておきたい。
そしてそんな重大なミスを犯した僕に内定を出すという、光文社の懐の深さには今でも驚いている。こんなポンコツな面接をしたやつが内定しているという事実が、誰かのちょっとした自信になってくれればいいな、と今は思っている。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?