「あの日の私」に贈る本たち~もしも本屋さんを開くなら~
メディアパルさんの素敵な企画に、参加させていただきます。
私が本屋さんになったら、どんなコーナーを作って、どんな言葉をPOPに書くかな……と考えると、それだけでとてもワクワクしてきます。
私なら、ぱっと見渡せるくらいの狭い店内で、どこに何の本があるかすぐにお答えできるくらいの規模感がいいな。
でも、小説も実用書も、短歌の本も、マンガもちゃんとあるような、頼もしい品揃えがしたいです。
(できれば、全部の本、作家さんについて、私が熱弁できるくらいでいたい。)
色々考えて思いついたのが「あの日の私」に贈る本、というテーマでした。
この記事では、特に、棚に面陳(表紙を見せる陳列のこと)したい書籍をご紹介していきます。
内容は言うまでもなく、タイトルや表紙にもインパクトがある本を選んでいます。
ぜひ、書棚をくるくると見て回るイメージでお付き合いください。
学校で配られた「読書記録カード」に引っ張られて、つい読了本の数ばかり追いかけてしまっていた私へ贈る1冊。
かまど・みくのしん『本が読めない32歳がはじめて本を読む』
今まで読書を全くしたことがなかった32歳のみくのしんさんが、ガイド役のかまどさんに手助けされながら読書に挑む様子が収められています。
1行1行、丁寧に読み解いて、主人公に寄り添って感動していくみくのしんさんの姿、「読書に正解なんてない」というかまどさんの言葉。
そのどれもに、読書への熱がむくむく湧き上がってくる1冊です。(こちらの本は後日、別の記事で詳しくご紹介する予定です。ぜひお楽しみに。)
「自分は独りぼっちだ」と思ってしまっていた私へ贈る名作文学。
太宰治『女生徒』
太宰のもとに送られてきた少女の日記を題材に書かれた、言わずと知れた名作『女生徒』。
朝起きてから夜眠りに就くまでの様子が、鮮やかに描かれています。
そこに綴られている彼女の心情は果てしなく等身大。
厭世的で大人びているようでいて、どこか青い部分もあって、その些細な揺らぎまで含めて魅力的で。
太宰作品をまだ読んだことがない、という方にもおすすめなので、目立つ場所に置いておきたいです。
「物語」が好きで好きで仕方ない、「物語」の虜になった私へ贈る2冊で1つの世界。
住野よる『また、同じ夢を見ていた』
住野よる『腹を割ったら血が出るだけさ』
『また、同じ夢を見ていた』は、1人の女の子が、1匹の猫に導かれて3人の女性に出会う物語。
幸せの意味、人生の意味について、やさしい言葉と温かなストーリーで語りかけてくれます。
この本への私の想いは、こちらのエッセイで綴っています。
人生において大切なことを、ページをめくるたびに何度だって教えてくれる1冊です。
そして、『腹を割ったら血が出るだけさ』は、そんな『また、同じ夢を見ていた』と地続きの世界にある物語。
読んでいる最中に感じる胸の痛みは、どこか懐かしくて、どうしようもなく「生きている」ことを実感させられます。
世の中のめまぐるしい変化に、不安になってしまう私へ贈るSF小説。
山本弘『アイの物語』
ロボットとは? 人間とは? という大きな問いへのヒントをくれる、長編小説『アイの物語』。
舞台は数百年後の未来、地球は機械に支配されていました。
ロボットに隠れてひっそりと暮らす人々に物語を聞かせて楽しませる、「語り手」の青年は、あるとき、美しいアンドロイドに出会います。
SF小説ではありますが、世界観もすんなり入ってきますし、「アンドロイドが青年に語る物語」を軸にした構成も魅力的。
AIの進化に、期待と不安がない交ぜになる今、機械を通して人間を描き出すこの小説を、ぜひ手に取っていただきたいです。
(本書にも「物語の力」が描き出されているので、前の見出しで触れた『腹を割ったら血が出るだけさ』の隣に置いておきたい。)
目の前のことに精一杯になっていた私へ贈る、心和むエッセイ2冊。
森下典子『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』
森下典子『いとしいたべもの』
森下典子さんのエッセイは、上品かつ鮮やかな言葉選びと、はっとするような視点が印象的で大好き。
『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』は、映画化もされたベストセラー作品。
ご自身の茶道の経験を通じて、「生きること」について丁寧に教えてくれる1冊です。
そして、『いとしいたべもの』は、タイトル通り「食べ物」をテーマにした短編エッセイを集めた本。
中学生の頃に何気なく手に取ったのですが、私はこの本がきっかけでエッセイが好きになりました。
今も忘れられないのは、「カレーパンの余白」。パン屋さんでカレーパンを見るたび思い出してしまいます。
まだ短歌の魅力を知らずに、眠れぬ夜を過ごしていた私へ贈る2冊の歌集。
木下龍也『オールアラウンドユー』
木下龍也『あなたのための短歌集』
木下龍也さんの短歌は、鋭い言葉選びで世界を切り取っていて、けれどその世界観は生々しくも優しくて、大好きです。
五・七・五・七・七の定型に収まっているので読みやすく、短歌鑑賞初心者さんにもおすすめ。
1首1首にたっぷりの余白が設けられた『オールアラウンドユー』は、しばし現実を忘れさせてくれて、心にゆとりを作ってくれます。
そして、『あなたのための短歌集』は、一般の方から寄せられたお題をもとに木下さんが詠んだ、100首の短歌をまとめた1冊。
人生の折々に寄り添い、その人の人生まるごと肯定するような素敵な短歌が目白押しです。目についたページをぱらぱらと読むのがおすすめ。
自信がなかった私へ贈るシリーズマンガ。
三星たま『夜の名前を呼んで』シリーズ
大好きなマンガシリーズ。5巻完結なので、1冊ずつ本棚に差しておくのはもちろん、シリーズ買いできるセットもひとつは置いておきたいです。
このマンガの主人公は、不安になると「夜」を呼んでしまう体質の女の子。それを治すために必要な「自信」を身につけるために、日々一歩ずつ成長していきます。
絵もかわいくて、温かい気持ちになれるストーリーなので、ぜひ色々な方に知っていただきたいです。
ミステリーも胸キュンも欲しい、昭和レトロな世界観も好きな、欲張りな私へ贈るシリーズマンガ。
都戸利津『謎解きレトリック』シリーズ
昭和の始め頃を舞台に織り成されるレトロ・ミステリー。
「人のウソが聞き分けられる」能力をもつ主人公の浦部鹿乃子と、卓越した洞察力と観察眼をもっているのに貧乏な探偵・祝左右馬の二人が、様々な事件を解決していきます。
鹿乃子と左右馬の人となりや関係性はもちろん、登場する人たちみんな魅力的で、人と人との縁が繋がっていくようなストーリーもとても素敵。ぐいぐい読み進めてしまいます。読後感も爽やかで大好き。
(10巻で完結済みなので、安心して踏み込めるのも嬉しいです。)
ドラマ化も話題になっていますが、個人的にはアニメ化も見たい……!
昭和初期の空気感や季節の移り変わりの様子などなど、アニメ映えする要素も多いと思うので、関係各所の皆さま、何卒お願いします。
心が疲れたとき、ふっと捲れる本を探していた私へ送る画集。
orie『ILLUSTRATION MAKING & VISUAL BOOK orie』
柔らかなタッチが印象的な、ほんのり切なく優しい雰囲気の作品を描いていらっしゃる、イラストレーターのorieさん。
素敵なイラストはもちろん、orieさんの言葉も一緒に楽しめて、「読みもの」のような一面もある画集になっています。
捲るたび温かい気持ちになれて、うっとりしてしまいます。
ちなみに、orieさんは、私が幻冬舎ルネッサンスさんから出版させていただいた電子書籍『春を呼ぶ少女』の表紙を描いてくださったイラストレーターさんでもあります。
orieさんの描く女の子は、どこか儚さがありつつも、強い意志を感じる瞳がとても印象的で大好きです。
(私が本屋さんをやるなら、せっかくなので『春を呼ぶ少女』の販売ページに飛べるQRコードを付したポスターか、大きめのPOPも掲示しておきたいです。)
もしも本屋さんを開いたら
もし私が本屋さんを開いたら、かなり欲張りなお店になってしまいそうです。
大好きな本はまだまだいっぱいあるので、もしよろしければ、こちらのマガジンもぜひ。
まとめにかえて、メディアパルさんの記事の素敵な一節を引用させていただきます。
ということは、なんとも欲張りなこの記事を含む『桜色の本棚』のマガジンそのものが、私の本屋さんなのかもしれません。
せっかくの読書の秋。
新しい読書体験に浸るのももちろん楽しいけれど、これまで出会った素敵な本を振り返ってみたり、読み返してみるのもおすすめです。