鋸山に行って来たよ-16
これまでのお話
時刻は16時40分。17時から夕食に向かう予定だけど中途半端な時間つぶしが必要になる。
「もう夕食行く?ランチのピザ少なめだったから私は食べられるよ」
「うん。なら行こう」
港町を偵察に行った時は海沿いの車道を歩いたけど、車が多くて歩道が狭かったからあまり車が来ない駅前の道をおさらいするように進む。
おしゃれなカフェの前を通り、たぁは言う。
「ガイドが住んでいた家に似ている。僕は違う場所にいたけど」
彼は若かりし頃、筋肉自慢のラフティングガイドだった。ガイドたちはこんなおしゃれの場所に住んでいたのか。
「それってダニエルの家?」
たぁはよくダニエルの家に遊びに行っていた。私も一度行ったことがあるけどその詳細はもう覚えていない。
「それとは別」
じゃぁ、私の知らない場所だね。
それにしても海外の人はそして最近は日本人もシェアハウスを利用する人が多い。
「私は誰かと同じに家に住むの絶対無理だけど、みんなよく何年も一緒に暮らせるよね」
場所によっては雑魚寝生活だし。
山小屋では環境上、諦めがつくけどプライベートを守りにくいのと騒音問題でゲストハウスですらもう無理な私。
たぁは若い頃、「みんながやるなら僕もOK」という感じだったらしいけど、ガイドの家を使わずに離れた場所に他のガイドと二人で家をシェアしていたことを思うと、その頃ですら大人数で暮らすのは出来れば避けたかったのかもしれない。
一緒にたくさんの経験を積みながら年を重ねた私たち、静寂を望むようになった今は、彼もゲストハウスを望まなくなっている。
求めるものが変われば、考え方にも変化は起きる。
目的の寿司屋さんに到着。
名を船主と言います。
時間が早いのが良かったのか、すぐに席に案内してもらえた。カウンター席には料理人がいて目の前で握っている。既に多くの席は埋まっているものの清潔感があって、各テーブル空間があり居心地が良い。
テーブルにはタッチパネルが置いてあり、ハイキングを楽しみお風呂で温まった体は冷えたビールを要求。まずはそれを注文だ。
「ここにベルトコンベアあるよ」
たぁはテーブルの隣に蛍光灯で明るく照らされたそれを見つけた。ってことは回転寿司かレストランかわからずにいたけど、やっぱり回転寿司屋なんだね。ただ他と違う点はベルトコンベアの前には扉があり、それを開けないと品物は取れなくなっている。コロナのためか素敵な配慮。これなら他の人に誤って取られたり、子供がいたずらで触ったりされずに衛生的だ。
タッチパネルでメニューを見れば見慣れた100円の品などどこにもない。ウェブサイトでこのお店を知った時から、そのことは既に承知済みだったけど、500円以上のオンパレードに節約家はちょっと躊躇してしまう。だけどこれも想定内と言えば想定内、ならば・・・・・・。
今日くらい、値段(あんまり気にせず)、レッツエンジョイお寿司タイムっ!
地元のお魚ページからじっくり見ていく。どれもおいしそうだけどお腹には限界ってもんがある。これぞっというもので満腹にしたい。
寿司屋に行けば必ず注文する大好きなえんがわには「午前中で売り切れごめん」と書かれている。後で注文しよう。
「えっ、太刀魚の刺身?」
焼き魚で一位二位を争うほど好きなそれをお刺身でいただけるなんて地元ならではだ。
いろいろ見たけど、まずはオーソドックスにマグロ3点盛り、ウニ・いくら・ネギトロ3点盛り、サーモン3点盛りに魚屋で生きたタコが売っていたこともあり唐揚げを注文。
注文後、丁度良くビールが届いたのでまずは喉を潤そう。
「かんぱーい」
「うーん、コレコレ」
すると早々にマグロとウニとその仲間たち3点盛りがベルトコンベアで運ばれてきた。
うわっ、見るからに見慣れた品と違う。
まずはたぁがマグロを食す。
ぱちくりおめめがもっと開く。
「おいしいっ!」
そんな顔と素直な意見を聞いたら、そそられるじゃないか。
つられて私も同じ品を口に入れる。
びっくり仰天、マジうまいっ。
歯がなくても噛めるほど柔らかいのに味が濃い。お金をだすと魚ってこんなにおいしくなるんだっ。
「いくらは小粒で一つずつからしっかりと味がする」
たぁの表現力が増している。確かにその通りだ。
極めつけはウニ。クリーミーさが口の中に広がりまくった後、米と交じりあう。その後、海苔が合流して一つで三回味わえる。
最高じゃないか。
熱々で届いたタコの唐揚げも切れ味が良く、使っている油がいいのかパクパク食べられる。それはたぁも一緒。
「今日は一万円くらいしちゃうかもよ」
「超えてもいいほどのおいしさだよ」
ごもっとも。事前にこのお店を調べて値段に負けずに中にはいった私、エライっ。
注文したすべての品を食べ終わった後、えんがわを頼もうとタッチパネルを開いたら悲しいかな、完売してしまった。
「午前中で売り切れごめん」と書かれた品が夕刻まで残っていたらすぐに注文しなくちゃだめだね。ならばと気持ちを切り替えて太刀魚を注文。
表面があぶり焼きされている。焼かれた匂いと味が届き、歯が下りると生の柔らかさに到達する。
濃いっ!
やっぱり太刀魚っておいしい。
顔をほころばせながら食べている私に興味を引いたたぁに一口上げた。結果・・・・・・彼の好みではなかった。残念、そんなこともあるよね。
250円のアジのたたきは小皿で提供されて丁度良い量とお値段。ぷりぷり感が溜まらないよ。
たぁのビールがなくなり彼は地元ウィスキーハイボールを見つけた。
「私、後で頼むから先に頼んでいいいよ」
だけど彼に届いたハイボールはそれはそれは濃いようで。私もビールを飲み終えて注文したところ、そう濃くなかったので両方を混ぜたらいい感じになった。
もうお腹もパンパンに近いけど最後にウニを一皿、お互い一巻ずついただきご馳走様。
お支払い金額8600円也。
値段が気になるのは支払い時と明細書を確認した時だけ。早々に払ってしまえとクレジットカードを店員さんに渡す。
すんばらしいおいしく楽しい時間をありがとうございました。
明日も戻って来たいくらいです。
【無空真実よりお知らせ】
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
11月22日にAmazon Kindleより電子書籍を出版いたしました。
私のんとたぁが彼の母国であるニュージーランでハイキングやキャンピングカー旅を楽しんだ旅行記です。
日本とは異なる環境下で旅する二人。
今回も自然に触れながらゆっくりとした時間を過ごしていくことで頭の中のモヤモヤを解放へと導くことが出来ました。
夫婦喧嘩やとんだすったもんだ、瞑想での気づき、そして自然が与えてくれる豊かな時間まで、模索して生きる二人の旅をどうぞお楽しみください。