伊豆天城山でハイキング-08
お天気はいいし、後部座席は狭くとも快適だし、みんなで旅行をしているという喜びから会話は止まらない。
特にららは笑顔を振りまきながらポジティブエネルギーを放出しまくっている。姪っ子ながらかわいいわ。
高速を使わずに国道135号線を走っている。しばらくすると住宅街から湾岸景色へと変わった。
いい、すごくいいっ!!
ちょっと温度が下がり始めた11月、空気が澄んでいるせいか遠くの景色までクリアに見える。
私たちもそうだけどそれ以上にささ家族のテンションは高い。それもそうだよね。10月に釣りをしようと訪れた時は曇りと雨、今日とは雲泥の差だ。彼らは毎年伊豆を訪れていて今日は一位、二位を争うほど、空と海のコラボが美しいと教えてくれた。
お誕生日に絶景を大好きな仲間たちと一緒に見られるなんて最高。
今日11月3日、文化の日は晴れることで有名だ。
私のお陰?・・・・・・・なわけないか。
透き通った空気の中、キラキラ水面の先に大きな島が見える。
「ほら、大島が見えるよ」
運転手を担当してくれているれんの声が一段と大きくなった。
「あれが大島なんだ。でかいね」
「大島までどのくらいで行けるのかな」
誰かが発したそんな些細な言葉からネット検索が始まった。
「伊東港からジェット船で45分で行けるらしいよ」
何でも簡単に調べられるようになって忘れるのも早くなった。だけどすぐに答えがわかるからこそ話はさらに盛り上がる。
「えー、そんなすぐ行けるの?」
「竹芝からも行けるみたい」
「熱海からも」
「あっ、また別の島が見えてきた」
大きくて一番近い大島だけが見えるならまだしも、今日という日を盛り上げようと私たちを包み込むエネルギーはさらに手助けしてくれてなんと伊豆七島、すべてを見ることが出来た。
「本当に今日はお天気に恵まれているよ」
れんの興奮は収まらない。何度も伊豆に訪れているけどこんな幸運はめったにないと言う。
新しい島が見える度に指差して、ささはグーグルマップで位置と名前を確認しながら教えてくれる。
騒ぎ立てる私たちの会話に参加をしていないたぁだってちゃんと耳はこっちに傾けている。窓を開けて腕を乗せて、その景色を笑顔で見ているだけで彼がこの状況に満足していることが伝わってくる。
「本当にラッキーだね、私たち」
「本当だよ」
興奮が収まらない私たちは何度も同じ言葉を口にする。気心知れた仲だからそれもOKだよね。
楽しい、眩しい、幸せ。
スマホにこの美しい風景を残したいけど後部座席海側に座るのは写真に興味のないたぁ。ららと私は必死に撮影を試みるけど余計なものまで写ってしまう。
「ママ、前の席から撮って」
「はいよ」
その写真はまさしく今日の幸運を収めたものだった。私もたぁにお願いして絶景が与えてくれる幸せを記録した。
車はそれなりに多いものの止まることなく順調に進んでいる。幸い、渋滞にも巻き込まれずに済んでいる。
「ランチは伊豆高原ビールで食べようと思っているんだよね」
伊豆高原ビール?それってビール工場かなにか?
「ららは小さい頃に一度行ったことがあるかな。海鮮丼が有名なの」
「あっ、そういえば私もこの辺りで評価の高い回転寿司見つけたんだよね」
「え、気になる」
「名前はぁ・・・・・・」
代名詞が覚えるのが苦手な私、思い出せない。
気になってググってみても確かな情報が得られなかったので、ささの案に従って伊豆高原ビールを目指す。
正午、135号線に面した本店に到着。この周辺にはいくつもの飲食店が集まっていた。
「あっ、このお店だよ」
伊豆高原ビール本店の隣に私が調べて寿司屋があった。名前は憶えていなくとも視覚で記憶する私はネット画像を覚えている。
「改装工事中だって」
よかった、ここに決めなくて。
まぁ、決めたところで隣に第二候補はあるんだけどね。
主な登場人物:
私-のん、夫-たぁ、
姉-ささ、姉の夫-れん
姪っ子-らら、甥っ子-ぼう
これまでのお話
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