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伊豆天城山でハイキング-20

7時15分過ぎ、ささ家族と一緒に食堂に行くと他にお客さんはいなかった。

朝食はスクランブルエッグとサラダとその仲間たち+食パン。

いつも朝食はバナナだけの私たち。朝からたくさんの食事を摂ることに抵抗はあるけど、おいしそうだし、何よりもこれからのハイキングを思えばしっかりと食べておいたほうがいい。

「昨日のパンでしたらご提供できますけど」

「大丈夫です」

「大丈夫です」

「いりません」

「大丈夫です」

「お願いします」

今日も腕白食いのれんだけが注文すると昨日同様、熱々のパンが数個やってきた。食パンも厚切りなのにさらに食べられるなんて細身の体の一体どこに入るのかしら。


ゆっくりと食事をしながらもこの後のことを考えて、各自食べ終わったら「ご馳走様」をして食堂を後にする。

昨夜、ららはハイキング用のズボンを持ってくるのを忘れたと言っていた。

「パパのレインパンツを履くからいい」

そう言って今朝、履いてきたけどサイズは合っていないし、何よりも暑そう。

「昨日、私が履いていたスポーツパンツでよかったら貸すよ」

「うーん、大丈夫」

最初はためらっていたけど、パンツを見せたら「こっちのほうがいい」と判断して履くことになった。

「そのほうがいいよ」

ささのアドバイスも役に立ったのであろう。


昨日、運転をしてもらったお礼としてワイン代は全て私たちが持つことにしていた。彼らは三人分の地域クーポン券をすべて使いきれるか心配と言っていた。

「それなら小さいサイズのワイン分、1600円を私が現金であげるからクーポン使って支払えば」

「はぁ」

あれっ?

ささの返答から有難みが伝わってこないぞ。私はクーポンサービスを使わずに自腹を切ると言っているのに。

「すごく優しいこと言っているんだよ」

恩着せがましく言う自分が子供に思えた。


予想以上に準備に多くの時間を費やしてしまった。9時にはハイキングをスタートしたいと思い、約束の8時半にチェックアウトを済ませて、荷物を車に積めるものの、ささがなかなかやって来ない。

しばらくしてオーナー夫人と話しながら出てきた。

はぁ、これじゃ朝食を早くしてもらった意味ないじゃん。

ペンションの駐車場は狭くて車を出すのが大変だったけど、この敷地を良く知るオーナー夫婦が外に出てきてガイドをしてくれたおかげで無事に出られた。

部屋は広くて清潔で、お風呂も良かった。食事もおいしくて、オーナー夫婦のおもてなしは最高なのに、値段はお手頃。

また来たい。

素直にそう思える宿だった。

いろいろとありがとうございました。


天城山ハイキング発着地点の駐車場まではここから車で約20分。今日もれんが運転してくれている。ささは昨日、家から小田原まで運転したらしいけど「仕事で毎日に運転しているから」休みの日は極力それを避けたいらしい。

「ららは山道運転うまいんだよ」

れんがそう言うとささも賛同した。
彼女は大学生中に車の免許を取得したけど私はまだ彼女の運転を体験したことがない。
ららもその言葉を聞いてまんざらでもないような顔をしている。

「なら運転してよ」

私がそう言って次の宿へと向かうまでの彼女の運転が決まった。

彼女はまだ二十代。もしその年齢もカバーできる自動車保険に入ると年に20万円以上かかってしまうらしい。だけどれんとささだけなら半額以下で済む。子供たちが運転する機会は少ないということで彼らだけの保険に入り、子供たちが運転するときは800円で済む日割り保険に加入するらしい。

なんて賢い家族たちなんだ。
れんは調べるのが得意でお得な情報をいろいろと知っていて、私たちも教えてもらうことが多々ある。

ららは嬉しそうにスマホを取り出し、日割り保険の申し込みをしていた。


9時に目的の天城高原ゴルフコース駐車場付近にある無料駐車場に到着。

私とたぁは準備万端だ。スティックを組み立ててトイレにさえ行けばすぐに出発できる。だけど、ささ家族はなぜだかここで着替え始め、靴も履き替えている。

彼らは宿で一体、なんの準備をしていたんだろう。

とりあえず「彼らと行動すると時間がかかる」を知っていたので、余計なことは言わずにたぁと遊びながら待つ。

各々トイレに行って、なぜだか20分も要した9時20分、やっとハイキングを始められる。


主な登場人物:
私-のん、夫-たぁ、
姉-ささ、姉の夫-れん
姪っ子-らら、甥っ子-ぼう


これまでのお話


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