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伊豆天城山でハイキング-16

車から荷物を降ろして宿へと向かい、こぢんまりとしたレセプションでチェックイン。

予約名を告げてから全国旅行支援を利用するべくワクチン証明を提出。地域クーポン用の書類をもらってから、夕食の話へと変わった。

「18時からと19時半からどちらになさいますか」

「18時からお願いします」

早々に答える私。
18時は我が家の夕食時間だからこの時間に頂けることはありがたい。

ここで部屋の番号が書かれている二つのタグを渡された。

「隣に大風呂の予約表がありますのでご希望の時間にタグをかけてください」

見てみれば18時半まですべて埋まっている。

全ての部屋にトイレ・バスはついているけど、せっかく大きな浴槽があるんだから夕食前にひと風呂浴びたいと思った。なのにこれじゃ無理じゃん。

「夕食19時半からにしようか」

ササはすぐに解決案を出したのに若干、疲れを感じていた私はついわがままになってしまった。

「そんな遅くから食べたら、夜寝られなくなっちゃうよ」

胃が弱い私、出先で遅くに夕食を食べて寝られないを多々、経験している。特に明日はハイキング、出来ればしっかりと寝て挑みたいものだ。

だけど他のお客さんにお風呂の時間を変更してもらうわけにもいかないし、遅めにチェックインしたのは私たちだ。私の意固地のせいで場の雰囲気が重くなってきた。

「夕食前にはお風呂に入りたいよね」

ササも意見が同じなら、ここは私がおれるべきだろう。

「夕食を19時半でお願いします」

大浴場は二つあり、幸い18時半は両方とも空いていたからラッキーと思うことにしよう。ちなみに22時以降は予約制の貸切風呂ではなくなり、男女別風呂で自由に入れるようになる。

朝食は通常7時半からだけど事前にハイキングに行くことを伝えていたので、7時15分からにしてもらえた。


三人一部屋のささ家族は二階、二人部屋を利用する私たちは受付の隣だ。
ドアを開けると真っ暗な広めの室内に空気洗浄機のブルーライトだけが灯っていて偶発的に艶っぽいムード。

悪くないねぇ。

だけど残念ながらベッドはツイン。
たぁとくっついて寝るべくダブルベットが良かったけど、事前にわかっていたことだから仕方がない。

お風呂まで一時間強ある。ソファに座って一息ついて荷物を整理した後、地域クーポン用の書類に記載を始める。GOTOキャンペーンの時は紙のクーポンだったけど、今回は電子クーポンだ。

説明書きに沿って、アプリをダウンロードして、番号を入力して、金額を確認して。


初めての作業ってちょっと緊張する。


だけど、お得のために私はがんばるわっ!


そんな思いをよそにたぁは持参した折り畳み式ギターを広げて弾いていた。


時間って早く過ぎることもあれば遅く過ぎることもある。

一般的に楽しい時間は早く過ぎると言うけど、別に楽しくもないこの作業をしているだけで、気づけば18時半近くになっていた。

時間泥棒さんはいつ何時、現れるかわからない。


二つの貸切風呂、家族ごとに入ってもいいけどららはお父さんと一緒に入浴する年はとっくに過ぎているので、男女分かれて入ることに。

ささ家族が迎えに来て、階段を下りて浴室へと向かう。

お風呂は内風呂だけでなく露天風呂まであった。

嬉しい、ワクワク、お風呂大好きっ!

予約時間に制限があるので早々に服を脱いで内風呂へと向かう。

体を流した後、お風呂に浸かろうと手を入れてみると思った以上に熱いのでかけ湯で体を温めてからゆっくりと浸かる。

うーん、いい。

L字型をしたお風呂、三人バラバラに入れば体を触れることなく、さらに視界に入れることなく個人空間を楽しむことが出来る。

様々な場所を試したところ、熱い場所と適温の場所があり適温の場所で互いに体が触れないように三人集まって浸かる。

体はすぐに温まったのでちょいと冷やすためにも露天に行ってみればこっちは小さめサイズ。お湯はぬるめで長湯に向いている。


尽きない話に花を咲かせていると隣の露天に男性たちがやってきた。

「わぁっ!!!」

たぁのびっくり声がこっちにまでしっかりと聞こえてきた。

「大丈夫?」

女子全員顔を見合わせて心配する。

「お風呂に段差があると思ったのになかったら、足滑らせちゃった」

「怪我はないの?」

「大丈夫。ただびっくりしただけ」

良かった。ハイキング前に余計な怪我をしなくて。


ららは先に上がり、私とささはその後も話し込み、ぬるま湯で冷えた体を内湯で温め直してから浴場を後にした。

「わっ!」

部屋に入るとれんがソファに座っていた。
思ってもいない人が部屋でくつろいでいるとこっちが間違えたのかと思い、焦ってしまう。

たぁに化粧水を渡して彼にもつけさせる。

「のんが戻って来たってことは僕の部屋のドアが開いたってことだよね」

あぁ、鍵はささが持っていたから部屋に入れなかったんだね。

「うん、もう二人とも部屋にいるよ」

「じゃあ、僕も戻ります」

「それではのちほど」

「のちほど」

11月上旬、お天気に恵まれているせいか暖房をつけずとも部屋は温い。

幸いなことだ。



主な登場人物:
私-のん、夫-たぁ、
姉-ささ、姉の夫-れん
姪っ子-らら、甥っ子-ぼう



これまでのお話



無空真実の電子書籍です。よろしくお願いします。





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