伊豆天城山でハイキング-19
夕食後はお互い部屋でのんびりするのかと思いきや、私たちの部屋にささ家族が遊びに来た。
宴はまだまだ続くのね、嬉しいわっ!
家族と行っても友達みたいな感覚で付き合えるって素敵なこと。
こういう時、ベッドと小さなデスクしかない部屋だとゆったりできないけど、ここの部屋はゆとりあるスペースで二つの椅子の他にソファとテーブルまで用意してくれている。有難い限りです。
折角、遊びに来てくれたんだから何か出さないと。
急いでお湯を沸かし、お茶を作る。
「最近のお気に入り持ってきたんだよねぇ~」
そう言ってちょっと自慢げに“カントリーマアムチョコまみれ”をテーブルに並べる。
「あぁ、これねぇ」
えー、知っていたの。
それにそんな反応?
発見したおいしさと喜びを分かち合いたかったのにぃ。
残念・・・・・・斬り(古いか)。
満腹なせいで誰も手を伸ばさない、私たちも。
メインイベントである明日のハイキングに向けて待ち合わせ時間を決める。とりあえず朝食は7時15分にお願いしているのでそれまでには食堂にいかないといけない。女子組は朝からお風呂を楽しみたいから6時頃に各自、お風呂に集まることになった。
話題豊富なささ家族、明日の予定さえなければこのままずっと話し続けていられただろう。だけど今日は朝も早かったし、明日の事を考えて1時間ほどで部屋を後にした。
「おやすみ」
「また明日ね」
彼らがいなくなった後、片付けと明日の準備をしてからベッドを動かす。
ツインベッドをダブルっぽくしないと。
ベッドの間に設置されていたミニテーブルとランプは私のベッドサイドへと移動し、二つのシングルベッドをくっつけて完了。
ベッドに入りたぁ側へと移動して暖を取るも、ちょうど狭間の上に体があるから寝心地が悪い。プロフェッショナルスリーパーのたぁが寝付いて、体が十分温まったところで自分のベッドへと移動した。
今日は早く起きたし、いろいろと行動したからぐっすり寝られるはず。
寝られるはず。
そう期待していたのに、なかなか睡魔さんがやってこない。
久々にささ家族と旅行したことで神経が興奮気味なのかな。元々寝つきが悪いだけに、いつもとは違うベッドで寝るのは得意じゃない。それにららに放ってしまった言葉も気になる。
副交感神経の働きを邪魔するように交感神経が活発に働いて、頭はずっと動いている。トイレに行くと、静かな室内に響く流れる水の音が響く。
隣の部屋にも聞こえているかも。
寝られない自分の心痛を他人にまで与えたくないと気を使って、また目が覚める。
仕方ない、ぐるぐる動く頭で浅い夢を彷徨いながらでも体は休めることが出来るから静かに横になっていよう。
早朝4時、深く寝られないとなぜだかトレイが近くなる。
他人様の睡眠の邪魔にならないようにそっと動いて、ドアを開けて用を足したら(できるだけ)静かに水を流したら・・・・・・
あらっ、すっかり目が覚めちゃった。
それでもスヤスヤ寝ているたぁを見ているとそこが楽園に思えてくる。
もう少し寝てみよう。
横になっても頭が動いて、今日の予定やこれからのこと、どうでもいいことが浮かんでくる。
いやっ、体を休めよう。
部屋にお風呂があっても、大浴場が気持ちいから使うことはないね。
らら、昨日の言葉気にしているかな。それにしてもどうしてあんなに頭でっかちちゃんになったのかしら。
はぁ、もう無理だ。
5時半過ぎ、ベッドから出る。
「たぁは朝風呂入るの?」
「入らない」
「わかった」
タオルを持って静かに部屋を出る。
6時前、大浴場にはまだ誰もいない。
やったね、独占風呂っ!
服を脱いで、内風呂に入ると温度は昨日に比べてマイルドになったようだ。
誰かと一緒に浸かるのも楽しいけど、こう誰とも話さずに周りを眺めてお湯を感じて一人リラックスできる状態はやっぱり好きだ。
露天風呂に行ってみるとシートがしてあった。
昨日、入浴中も蚊が飛んでいたので彼らが溺死しないようにそして大量の死骸だらけのお風呂にならいようにとの配慮かもしれない。
シートを外して入ってみる・・・・・・ぬるい。
うーん、実にぬるい。
入り続ければ確実に体は冷えていく。
内風呂で温め直しているとささたちがやってきた。
「早いね」
「寝られなかった」
「私も」
性格が全然違う、ささと私。
十代は喧嘩ばかりでまともに口を利いたことがなかったけど、年を取って互いを知りあえば、さすが同じ両親を持つだけあって似ているところが多いことに気づく。
ららもうまく寝られなかったらしい。
血だね、血。
多分、互いに昨日を思って、今日を案じて神経が興奮していたんだろう。
そんな話をしながら、体を洗ってもう一度温め直したら、先にお風呂を上がらせてもらおう。
主な登場人物:
私-のん、夫-たぁ、
姉-ささ、姉の夫-れん
姪っ子-らら、甥っ子-ぼう
これまでのお話
無空真実の電子書籍です。よろしくお願いします。