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制度改正に思う、介護経営の視点

今回の介護保険制度改正の目玉は、なんといっても科学的介護の導入。…準備体制できていますか?準備体制を整えるためには二つの視点が必要だと感じています。それは、マーケティングとマネジメントの視点。今後の自法人の経営にとって必要なトピックだと思い、備忘録として記述しました。

科学的介護の導入はデフォルトになりそう

今回の制度改正の目玉である「科学的介護の導入」は各事業所から提出されたデータを国が蓄積分析し、事業所へアドバイス等フィードバックするというPDCAサイクルの構築が軸となっています。

中長期的な運用によりある程度介護に関する「定義」なるものが出来上がれば、今まで一人一人の介護職員の経験則に頼りきっていた介護業務に、マクロな視点で得られた「定義」もプラスし、介護レベルの底上げにつなげたいという厚生労働省の思惑が見て取れます。

もちろん、介護の一律化を推進するものではなく、利用者個々のケアに新たな視点を加え、利用者さんのQOLの維持回復に繋げなければ、有効な政策とはなり得ません。

事業所の収入に関係する報酬の加算について、今回の制度改正においては、科学的介護の導入に紐づけられた新規加算がたくさん設定されました。このことからも、科学的介護導入への取り組みに、全国の介護事業所を誘導したいという、厚労省の本気度を私は強く感じています。

導入においてはICT機器・仕様のアップデートが必須

科学的介護導入に関する厚労省の思惑がわかったところで、「はい!導入します!」と方針のかじを切ろうとした瞬間に、乗り越えなければならないハードルが立ちはだかります。

それは、今現在ICT機器を導入していない事業所はICT機器を導入する必要があるという点。また、すでにICT機器を導入・使用している事業所においても、使用しているICT機器が、科学的介護の仕様に対応できない場合、新たに科学的介護に対応可能なICT機器に乗り換える必要があるという点です。

いずれにしても、全国規模の動きがある中で、ICT機器導入のスケジュール調整には、かなりの時間を要する可能性があることは覚悟しておいた方が良さそうです。

現時点でICT機器を導入していることが前提

来年度から科学的介護導入に踏み切るには、現時点でICT機器を導入していることが前提となることは分かりました。そこで私が気にかかったことがこの度の記事の本題です。

それは、なぜICT機器を導入している事業所と、そうでない事業所に分かれたのだろうか、ということです。

自事業所はICT機器を導入しています。どういう経緯でICT機器を導入してきたか、自らの行動を振り返ることによって、その要因が明らかになり、今後の経営に活かせる思考法が導き出せるのではないかと考えています。

ICT機器導入の経過

ICT機器導入の動機は、働き方改革による生産性の向上をはかり、人材確保・定着につなげる、という目的でした。

ICT機器を導入後、介護記録の転記等無駄な作業をなくすこと、ペーパーレス化の推進により生産性が向上しました。生産性が向上することにより現場に余裕が生まれ、働きやすい職場環境が実現しました。おかげで職員の定着率がアップし人材の定着につながっています。

自事業所でICT機器を本格運用したのは4年前の4月。そして4月からの運用のために、その前年度の中期経営計画にICT機器導入を組み込み、7月には導入元の企業の製品説明会に参加しています。導入元企業の選定においては、毎年参加している福祉産業展での情報が判断材料となりました。

マーケティングの視点

さかのぼって、人材確保のためにICT機器の導入を中期経営計画に組み込もうとした動機を考えてみます。当時は計画策定時にSWOT分析と、「機会」「危機」と「緊急性」「重要性」のマトリクスを採用しました。

人材確保は当事業所にとって、「緊急性は低いが重要性の高い危機」でした。課題解決の優先順位を考える上で、とかく緊急性の高い課題にフォーカスしがちですが、中期経営計画策定時にはおのずと視座も上がり、長い時間軸視点で思考できるため、経営計画に組み込むことができたのだと思います。

マネジメントの視点

中期経営計画策定のメリットとして挙げられるのが、計画的に多額の投資が実現できる点だとおもいます。

この度の制度改正に話を戻してみましょう。来年度の制度改正に対応するためにICT機器の導入が必要となりました。その場合、来年度に導入するためには多額の経費を大至急来年度の予算に計上する必要があります。

想像してみてください。そのような場合にすんなりと会計責任者が「はいそうですね。」と首を縦に振って何百万、何千万という金額を予算に計上してくれるでしょうか?

また、ICT機器を導入するにあたって、現場職員の理解を得るために、丁寧な説明を根気強く行いました。このようなきめ細かいマネジメントは不可欠です。

予測できる未来を自組織にとっての機会へ

変化の時代、先の見えない時代VUCAの時代と呼ばれることの多い令和です。経営に必要な視点、その一つが「虫の目、鳥の目、魚の目」です。虫のスケールでマネジメントし、鳥のスケールで現状を把握し、魚のように時代の流れをつかむマーケティング視点です。

予測できる未来を、自事業所にとっての危機にするか機会にするかは、中期的な経営視点を持てるかにかかっています。そのために日々インプットとアウトプットに努めて、外部に対するマーケティング思考と内部に対するマネジメント思考に磨きをかけておく必要があると、私は考えています。

また、ゆでガエルに喩えられるような現状維持バイアスに陥らないよう、直感的に「これは必要!」と感じたことにはすぐに取り組む実行力も必要だと思います。スピーディーな決断がいつでもできるよう、心身ともに健全なコンディションを維持しておきたいものです。

まとめ

・介護業界において科学的介護の取り組みは必須です
・科学的介護にはICT機器の導入が必要です
・ICT機器導入は事業所の主体性が求められます
・外部にはマーケティング視点、内部にはマネジメント視点が経営の軸になります
・非常時ではなく平時のうちに中期計画に取り組みましょう

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