【読書感想文】幸せに生きる方法。 愛するということ|エーリッヒ・フロム
1956年の出版以来、世界中で読み継がれるErich Frommによる名著「The Art of Loving (愛するということ)」。
英語版を読み終えたので、感想を書いていきます。
著者と本書について
著者のErich Frommは、ドイツ出身の社会心理学者です。
1900年、フランクフルトのユダヤ人家系の元に生まれました。
ハイデルベルク大学で社会学・心理学・哲学を学んだ後、1931年同大学の精神分析研究所で講師となります。
1934年、ナチスが勢力を伸ばしたことを契機に、アメリカに活動の拠点を移し、コロンビア大学やベニトン大学などで教鞭を取りました。
その後もメキシコやニューヨークにある大学で教授を勤め、1980年スイスに構えた自宅で息を引き取りました。
フロムが生きたのは、第一次世界大戦の敗北や世界恐慌を経験し、どん底の状態にあったドイツです。
そんな中、後にユダヤ人の大量虐殺など、非人道的な政策をとることになるヒトラーは、民主主義的なプロセスを経て、政権を獲得したのでした。
個人の自由を賛美しなておきながら、なぜ民衆は、彼の敷いた「全体主義」に傾倒したのか。
本書は、フロムの代表作「Escape from Freedom (自由からの逃走)」に継ぐ、人間が幸せに生きるためのヒントを示した一冊です。
感想
ここからは、本書の内容と、僕の考えを書いていきます。
愛とは能動的に与える行為
本書の中でも有名なのは、次のフレーズではないでしょうか。
多くの人が
「愛されたい」
と思ってるのに対し、フロムは愛は受け取るものではないと断じます。
これにはどういった意図があるのでしょうか。
僕は、他者に愛を与えることが、人間の本当の幸せだから、フロムはこのように書いたんだと思います。
本書によると、人間は根源的に「oneness」という感覚を求めており、その対極にある「separateness (孤立感、孤独感)」に耐えられない生き物だそうです。
これは、僕の経験でもその通りだと感じています。
人間は何かを拠り所にする(縋る、依存する)ことで自らを保ち、生きていける存在だと思います。
この「oneness」を得られない状態を癒す簡単な手段として、性行為やアルコール、ドラッグに頼ろうとする人もあるでしょう。
しかし、これらの行為には、「本物の愛」が伴っていないため、本質的に満たされることはない。
そうフロムは言います。
本物の愛とは
では、何が欠けているのか。
それは、自分と他者への「尊敬」と「思いやり」です。
アルコールやドラッグに依存することは、自分の肉体を犠牲にする行為ですから、自分自身を尊敬し、思いやることはできてないでしょう。
では、他者に依存することはどうでしょうか?
その裏には、
「私が幸せになりたいから、あなたが必要」
という、自分主体の感情があると思います。
自分が幸せになるために、他者を大切にする。
尊敬したり、思いやったりする。
これは、「本物」の尊敬や思いやりと言えるのでしょうか?
人間は何かを拠り所にすることで自らを保ち、生きていける存在だ、と書きました。
本物の愛を知るには、自分を拠り所として生きることが鍵なんじゃないかと思います。
本物の愛を知るために
そして、本物の愛を知るためには、次の2ステップがある気がしています。
ありのままの自分を受け入れる(自分への愛)
自分以外の他者に、積極的に関心を持つ(他者への愛)
1つ目の「ありのままの自分を受け入れる」ということは、「こうならなきゃ」という自己否定を手放すことです。
これは、言い換えると自分への愛になります。
自分のことが嫌いで、受け入れられていなかったら、自分を拠り所になんてできないでしょう。
本書でも、自己愛についての記述があります。
自分を愛して初めて、自分を拠り所に生きられるようになり、2つ目の他者への愛が芽生えてくるのではないでしょうか。
なぜ、他者に愛を与えることが本当の幸せなのか
「愛とは能動的に与える行為だ」
という言葉の真意を
「他者に愛を与えることが、人間の本質的な幸せだから」と書きました。
なぜこう思うのかというと、
他者を愛することで、自分の人生の意味が見つかるからです。
「夜と霧」の著者、ヴィクトール・フランクルは、人生の意味を知ることが、豊かな人生を歩むための鍵だとしました。
この世界の誰か、何かに愛を与えたいから、そこに自分の人生の意味が見いだされるのではないか。
そう思うのです。
例えば、
愛するパートナーを守るために、自分の人生を使う
という決断も、その一つかもしれません。
自分が無条件に愛を与えたいから、そこに自分の人生の意味が生じるんです。
(これが「愛されたいから愛する」という、トレードオフの関係だと、成り立たないと思います。)
そして、愛を与える対象は、身近な人である必要はないとも思います。
近所の顔見知りの人、同じ地域や国に住む人、世界中の人や動植物、有機物、無機物、宇宙全体、過去、未来…。
この世界のすべてに対して、愛を与えることができると思うんです。
特定の人だけを愛している人の愛は、本物ではありません。
世界のすべてを愛するからこそ、自分にとって「本当に」大切な人に、「本物の愛」を与えることができる。
そう思います。
まとめ
The Art of Loving(愛するということ)の読書感想文を書いてみました。
正直、この本は徹底的に「愛すること」について考察されていて、まだまだ自分の中で言語化できていないことが、たくさんあります。
何度も読み返しながら、著者の真意を心で感じられるようになりたいと思いました。
ちなみに、英語版を読みましたが、優しい表現で書かれていて、難しい単語も、そこまでない印象でした。
多読をしたい人にもおすすめの一冊です。
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