ポールダンサーはストリッパーなのか、アスリートなのか?
昨今、男性アーティストが女性の性的魅力をテーマにした作品を発表できるのか?
そんなことを考えている丸山です。
高尚なコンセプトでもなんでもなく、多くの男性が10代の頃から持っているであろう感情をベースに表現したいだけなんですが、現在では難しいようです。
これは、2018年にポールダンサーを撮影した作品です。
制作当時、NYのギャラリーからは、"今のアートの世界では、こういうテーマは人気がない。女性が女性を撮影する、もしくは、男性も自分の裸を撮影するくらいのガッツを見せる必要がある"と言われ、まだ発表できていません。
しかし、この度、東京のギャラリーでこの作品を発表する機会を得ることができました。性的なテーマはデリケートですが、写真家とモデルがお互いを尊重し合えば、作品を制作し発表することは可能だと考えています。
今回発表している作品は、2012年に撮影された"NUDE"という女性のフォルムと動きの美しさを捉えようとしたプロジェクトの一部になります。
2012年に制作したときは、9人のコンテンポラリーダンサーを撮影しました。
2018年の作品では、自分のパフォーマンスをセクシーだと感じ、それを表現しようとする女性たちは誰なのか、動きの美しさも含めて考えて、ポールダンサーを被写体に選びました。
しかし私のこの短絡的で無知な考えが、モデル探しを難しくしたのです。
SNSなどで活躍している世界中のポールダンサーに撮影の協力を依頼しました。
条件は
”ハイヒールを履いて裸で魅力的なポールダンスをする”
しかし、多くのポールダンサーは、裸になったりハイヒールを履いたりすることに抵抗があるようでした。
コンテンポラリーダンサーは裸になることを躊躇するする人はほとんどいなかったので、これは意外な気がしました。
どうやらポールダンスの業界では、アスリート系、フィットネス系、ストリップ系などがあり、特にアスリート系のダンサーはストリップダンスとの関連性を過剰に避けていたようです。
#notastripper (ストリッパーではない)と言うハッシュタグのキャンペーンがあります。
これは、ポールダンスが元々ストリップクラブなどのアダルトエンターテイメントの一部として関連付けられていた歴史から距離を置く試みのひとつです。
近年では競技スポーツやフィットネスの一種として認知されつつあります。それには強力な身体的スキルと筋力が必要で、アクロバティック、芸術的な演技を伴います。また、いくつかの国では、ポールダンスは公式のスポーツとして認定され、オリンピック種目の候補として検討されています。
しかし、このハッシュタグとそのメッセージは、一部で物議をかもしています。
これに対抗するハッシュタグとして、#yesastripperがあります。
これは、ポールダンスをストリッピング(ストリップショー)の一部として受け入れ、それ自体が正当な職業であり、尊重されるべきであると主張する人々によって使われます。
ポールダンスのルーツがストリップクラブにあることを認識し、ストリッパーとしてのアイデンティティを肯定する立場を示しています。
女性が自分の体を自由に表現し、それを享受する権利があるとされています。したがって、ポールダンサー自身が自分のパフォーマンスをセクシーと感じ、それを表現したいと思っている場合、その表現は尊重されるべきです。
双方の立場を尊重し、今回は#yesastripperのスタンスをとっているダンサーに協力してもらうことにしました。
そこで今回のプロジェクトに興味を持ってくれた一人がJordan Kensleyです。
彼女の交友関係は広く、このプロジェクトに共感してくれた2人のダンサーを紹介してくれました。
3人のダンサーは私のスタジオで素晴らしいパフォーマンスを披露してくれ、このようなプロセスを経て出来上がった最終作品に満足しています。
今回のプロジェクトで、ポールダンスの歴史を知り、様々な立場の人から意見を聞き、多くのことを学びました。
私の作品によって、鑑賞者が女性の性的な魅力、力強さ、独立性、そしてその尊厳を感じ、理解することを促せたらと思います。
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