にっぽんぐるぐる鉄道の旅 ~福岡市地下鉄箱崎線編②~
みなさまこんにちは、Y.K.です。
今回は箱崎線編第2回目となります。
本来であれば今回は箱崎線を走る車両をご紹介するところですが、実は箱崎線の車両は空港線を走る福岡市交通局の車両と同一になっております。
そのため、前の記事でご紹介しました「空港線の車両」をご覧いただければと思います。(なお、JR九州保有の車両は箱崎線には入りません)
今回は車両の紹介に代わり、箱崎線において存在したものの凍結されてしまった計画「西鉄貝塚線との相互直通運転計画」についてお話しようと思います。
実は、箱崎線は計画当初から「西鉄宮地岳線(現在の西鉄貝塚線)との直通運転について検討が必要」とされており、貝塚駅が箱崎線・西鉄貝塚線で向かい合って同じ駅舎に入る構造で建設されるなど、当初から西鉄貝塚線との相互直通運転が意識されていました。
また、箱崎線と西鉄貝塚線は線路設備もある程度共通であり、線路幅は1,067mm(狭軌)、電車に送られる電気の種類も直流1,500Vとなっております。ただし、電車を安全に運行するための信号などの設備(保安装置)が異なるため、その点は車両側で対応する必要があります。電車の基本的な両数は箱崎線が6両、西鉄貝塚線が2両(ただし一時期3両の電車もあった)となっております。
◆◆箱崎線と西鉄貝塚線の直通計画◆◆
当初は箱崎線と貝塚線貝塚~西鉄香椎間での相互直通運転として、6両編成の電車を使用する計画となっていました。後に貝塚線内の直通運転区間が貝塚~三笘間となりました。しかし、西鉄貝塚線の各駅のホームが3両編成の電車までしか対応していないため、直通列車に対応するためにホームの延伸費用がかかります。また、西鉄側も相互直通運転のために6両編成の地下鉄対応車両を用意する必要があります。
ならば地下鉄側に6両編成の電車があるのでそれを使えば…と思われる方もいるかもしれません。しかし、西鉄が車両を用意しなかった場合、地下鉄の車両で西鉄貝塚線を運行するごとに西鉄が地下鉄へ「車両使用料」を支払うことになり、西鉄側の年間負担が大きくなってしまいます。西鉄が車両を用意していれば、西鉄の電車で箱崎線を走行することができ、地下鉄側が支払う車両使用料でそれを相殺できるため、地下鉄側も西鉄側も年間負担が過剰にならなくなります。
その後、2010年になると新たな案が出されました。それは、「直通も含めた箱崎線の運行区間を天神(空港線)~中洲川端~貝塚~西鉄新宮間とし、車両は地下鉄線内完結も含めすべて3両編成とする案」です。この案でも、当初は西鉄貝塚線側において三苫までの直通とし、西鉄新宮には乗り入れないものとされましたが、後に西鉄新宮まで乗り入れる案に変更されています。
この案では、地下鉄と西鉄の双方が直通用の3両編成の電車を製造し、箱崎線関係の列車両数をすべて3両にすることになります。こうすることで、もともと3両編成に対応している西鉄貝塚線の各駅のホームを延伸する必要がなくなります。また、箱崎線の列車を地下鉄線完結・貝塚線直通ともに空港線の天神まで乗り入れさせるため、貝塚線のみならず箱崎線各駅から天神への利便性が向上します。
しかし、この案では現在行われている貝塚~西新・姪浜への直通を全てなくすため、天神より先の西新・姪浜方面へ行く場合は乗り換えが必須になります。実は箱崎線から乗って天神までの駅で降りる人よりも、天神より先の駅で降りる人の方が多いという調査結果もある(2015年調べ)ため、意外と見逃せないデメリットとなります。だからと言って直通列車を3両で西新・姪浜まで走らせた場合、6両編成が原則の空港線内で混雑が悪化し、特に朝夕ラッシュ時の乗客数に耐えられなくなります。また、現在の天神駅には電車の折り返し設備がないため、地下鉄側にその設置負担が発生します。地下ということもあり、その費用は決して安くありません。
以上のような理由からこの案では直通実現が進まず、2018年にまた新たな案が出されました。それは、「西鉄側で2両の、地下鉄側で4両の相互に連結可能な電車をそれぞれ製造し、貝塚駅で分割・併合を行うことで、直通列車は貝塚線内では西鉄の2両、地下鉄線内では地下鉄の4両を合わせた6両で運行する」というものです。この案では、貝塚線や地下鉄線の既存設備に過剰に手を加える必要がありません。また、貝塚線直通列車が地下鉄線内で6両になるため、輸送力を気にすることなく空港線の姪浜方面へ直通させることができます。なお、箱崎線内完結列車は4両編成となるようです。
一見メリットの多いように見える案ですが、大きな欠点があります。それは、貝塚駅での分割・併合に時間がかかる点です。今回の事例に限らず、電車や列車の分割・併合には多くの手順を踏む必要があり、普通の停車と比べて時間がかかりがちです。特に西鉄新宮発の中洲川端・姪浜方面行きが該当する電車の併合においては、この案において5分程度の時間を要すると見積もられています。現行のダイヤでは、箱崎線と貝塚線の乗り継ぎ時間はほとんど5分以内で完結することを考えると、この案で直通運転しても時間短縮効果は薄く、1分程度短縮できれば御の字という程度です。
また、「既存設備に過剰に手を加える必要はない」と書きましたが、それでもある程度の設備改修は必要です。貝塚駅の直通対応改修、箱崎線内におけるホームドアの4両(箱崎線内完結列車用)対応化工事などを施工する必要は出てきます。
その後の2021年、先述の分割併合案では時間短縮効果が薄く、初期投資額に対して利便性の向上ぶりが割に合わないという結論が出されました。そのため、現段階では直通運転計画を事業凍結すると発表されたのです。しかし、相互直通運転の可能性は残すとのことですので、もしかしたら今後良い案が出た際に計画が復活するかもしれません。
今回もご覧いただきありがとうございました。
次回は、箱崎線の駅をご紹介します。