【フランス パティスリーウィーク2024】今年の共通テーマは『サヴァラン』。当店は、趣の異なる〈3種類のヴェリーヌ〉を販売致します!!!
シェフの進藤です。
何よりまずは【ダイナースクラブ フランスパティスリーウィーク】という、パティスリー参加型イベントの説明を。
【ダイナースクラブ フランスパティスリーウィーク】とは
上記の名称は、2021年から始まった〈フランス菓子〉をテーマとしたグルメイベントの事。
そのイベント内容は、各回毎に主催者から共通のテーマ〈お題のお菓子〉が発表され、参加する各店舗が〈そのお題のお菓子〉にオリジナリティーを加えたアレンジ作品(商品)を発表し、それを決められた期間(約1か月間)店頭販売するというもの。今年は7月1日~31日まで。
事務局から頂いた情報によると、過去、記念すべき第1回目は東京圏のパティスリー 64店が参加し、テーマは「パリ・ブレスト」。つまりお客様はその期間、その店その店で考えられた〈異なるパリブレスト〉を味わえたという事。
第2回、一昨年のテーマは「ミルフィーユ」。初回に比べて大幅増の12都市166店が参加し、メディアにも取り上げられて大変話題になったと説明がありました。
そして、昨年の第3回から当店も参加させて頂く事に。その年の共通テーマが〈エクレア!〉だったので、当店オリジナルエクレア、その名も【エクレール クロッカン】という新商品を作り、1カ月の間販売させて頂きました。想定を越える〈多くのお客様〉にご来店頂く結果となり、暑い中、当店を目指して足を運んで頂いたお客様、大変ありがとうございました。因みに、昨年の参加店舗は全国230店越え!との事。
そして、今年の参加店は全国あわせて約300店を越える?との事で…。回を重ねる毎に、このイベントが熱を帯びていくのを肌で感じ、参加させて頂く私も勝手ながら嬉しい限り。
進藤洋菓子店は今年も、微力ながらご協力させて頂きます(笑)。
タイトルで述べた通り、今年の【共通テーマ=課題のお菓子】は〈サヴァラン〉!
次は、フランス菓子〈サヴァラン〉の説明に。
フランス菓子〈サヴァラン〉とは
私がパティシエとして働き始めた“駆け出し”の頃、〈バイブル〉の1つとして熟読していた本に〈サヴァラン〉はこう書かれています。
要約すると、元々〈ババ〉という名前のお菓子があり、〈ババ〉とはしっかり焼いた粗めのイースト発酵生地(≒パン生地)に、酒やシロップを全体に染み込ませたケーキとの事。そして〈サヴァラン〉はそこから派生した物であると。
製菓学校で教えていた私の認識では、〈生地の製法〉や、焼き上げた生地にシロップやお酒をたくさん含ませて提供するといった〈菓子の構成〉は、〈ババ〉〈サヴァラン〉共に差程違いは無く。
強いて言えば、上記の写真をご覧頂ければ分かる通り、サヴァランは〈サヴァラン型〉で焼き上げるので、焼き上がりは小さな〈ドーナツ〉のような形。それに比べてババは、円筒形の型で焼くので焼き上がりは〈キノコ〉のような形状に。大きな違いはその位かと。
ずっとその認識でいたのですが、今回のイベントに参加するに当たって色々調べてみると、イタリアでは〈ババ〉と〈サヴァラン〉に境界線は全く存在しないとのこと。また、日本の巨匠〈西原金蔵氏〉は〈ババ〉を焼くのに〈クグロフ型?ゼリー型?〉を使っておられたり、フランスの巨匠〈ピエール・エルメ氏〉に至っては、形は〈サヴァラン〉でありながら商品名は〈ババ〉であったりと…。
結局、私がたどり着いた結論としては、現代のパティシエの創作において〈サヴァラン〉と〈ババ〉は“同じ物”であり、名前もどちらを付けても構わない→〈名付けたもん勝ち〉な様です(笑)。
なので、私は今回の試作に当たり〈パータ・サヴァラン〉というサヴァラン生地を使い、〈ババ〉の様な円筒形に焼き上げた物をヴェリーヌ(透明な器の中で多層に重ねたデザート)に仕立て、商品名は〈サヴァラン〉として販売する事にしました(笑)。
あーややこし(笑)。
話は変わって、
進藤洋菓子店は営業開始から今年で丸10年。
ですが、当店では今まで〈サヴァラン〉や〈ババ〉を販売した事は1度もありません。
それはなぜか?
何故なら、実は、当店を始めた頃の私の菓子作りには、フランス パリでの修業経験から多少の〈洋酒〉を使うのが当たり前でした。香りを補う必要性を感じたケーキには〈少量の洋酒〉→ラム、ブランデー、キルシュ等を使っていて。ですが、ある日ふと〈売れ残ったケーキを集計した表〉を見たところ、売れずに廃棄したケーキは殆どが〈洋酒〉を使用した物である事に気付きました…。
アルコールが体の害になるお客様もおられるので、微量でも〈お酒〉を使っているケーキには〈お酒微量使用〉の札を必ず立てるのですが、販売員に訪ねると、どうも〈その表示〉のあるケーキが避けられている様なのです。
常々、私のモットーは〈臨機応変〉
なので、そういった顧客ニーズに合わせる為に、代替可能であれば洋酒を使うのをヤメ、〈お酒のフレーバー=香料〉に随時レシピ変更して今に至ります。お客様の中には添加物として〈香料〉を嫌う方もいらっしゃいますが、〈洋酒〉にも物によっては香料が既に入っていたりして(笑)。
とにかく、そういった経緯から当店ではお酒を全く使わなくなりました。
結果、モンブランで言えば、ラム酒を使い〈お酒微量使用〉と表示し販売していた頃と、香料に変更し、表示を外して1年後どうなったかを比較すると、現在は実に以前の3倍程売り上げる結果に。要するに、当店のお客様の大部分は〈ケーキに洋酒が入る事を望んでいない〉事がハッキリしました(場所が変わったり、当店の知名度が変われば、それもまた変化するのだろう…とは思いますが…)。
ですので、当店では通常お酒を必要とする〈サヴァラン〉や〈ババ〉は、当然の如く販売前からNG扱いとなってしまい、そして現在に至っていると言うわけです。
ですが諦めの悪い私は、オープンして8年目、一昨年のクリスマスに意を決して“アルコール使用”の新作ケーキ〈ヴォージュ〉を作り、〈クリスマス限定商品〉として販売しました。
なぜ再びトライしてみる気になったか?
→
①営業を開始して8年が経ち、当店の商品が〈子供向けのおやつ菓子〉ではなく〈違いの分かる大人向けなケーキ・焼き菓子〉であると、一定数の方に認知された事。
②洋酒は、例えば〈マロン×ラム酒〉〈レーズン×ラム酒〉〈チョコレート×ブランデー〉等の様に、そのお酒に合う素材選びをすれば〈素晴らしいマリアージュ〉になり得るので、利益追求は一旦横に置き、〈私の店なので、私が美味しいと思う物を売りたい〉と素直に思えた事。
③クリスマス限定で予約オンリーの商品であれば、あらかじめご理解頂いた上で〈お酒が入ってOKのお客様〉がご購入されるので、トラブルが無い+売れ残りのリスクも無い事etc…
お陰様で、そのクリスマス限定の〈ヴォージュ〉は、予約開始から1週間も経たずに予定数に達し〈完売〉となりました。ご予約・ご購入頂いたお客様。ありがとうございました。
そして、翌年も同様の形で販売しましたが、これまたあっという間に完売で…。
この一連の経緯から、以前に比べて〈洋酒入りのケーキ〉販売に一定の手応えを感じ、いいタイミングがあればまたやりたいなぁ…と思っていた矢先、今回【ダイナースクラブ フランスパティスリーウィーク2024】の今年のお題が、〈サヴァラン〉に決まったと言うではありませんかっ。
正直、
「オーッ !!!」
って思いました。
恐ろしい程すぐに、次の機会がやって来ました(笑)。これはどう考えても、作れって事ですよね…。
早速、そのイベントへの参加を登録し、すぐに〈当店らしいサヴァラン〉とはどの様な物か考え始める事に。
一旦考え始めると、〈洋酒〉を使用する為に“これまでやりたくても出来なかった事”や、“記憶の引き出しにしまっていたアイデア”が溢れ出す様にいくつも出てきて…。
結局、絞りに絞って数種類試作する事に。
そして完成した3つのスイーツが甲乙つけがたい美味しさで。結局、どれを商品にするか決めかね、「それなら一層のこと3つ全部商品にしちゃえっ!」って事になりました(笑)。
なので、当店は今回のパティスリーウィークに向けて、趣の異なる〈3種類のヴェリーヌ〉を販売致します!
3つも出すとなると、なんだかヤル気満々な感じがちょっとヤですが…仕方なし(笑)。
ヴェリーヌとは透明なグラスに入れた多層なデザートを指します。
いつも通り、十二分に期待して頂いて大丈夫です(笑)。
3種類全て¥650―(税込)となります。
3種類のヴェリーヌ
1つめは、
『サヴァラン ヴォージュ2』
お酒を使ったケーキで〈私の代表作〉と言えば、前述したクリスマスにしか販売しない〈ヴォージュ〉。大変ご好評頂いているそのケーキを、今回特別に〈サヴァラン×ヴェリーヌ〉仕立てにしました。
〈コニャック(フランスの高級ブランデー)×マロン×アプリコット〉の素晴らしい、自画自賛のマリアージュをご賞味下さい。
2つ目は
『サヴァラン フランコジャポネ』
あるケーキショップで食べて感動した、和洋折衷な素材の組合せ。それ以来温めていた構想を、ようやく〈サヴァラン×ヴェリーヌ〉を通してアウトプットしました!
騙されたと思って食べてみてください。〈粒あん×バニラ×ラム酒〉は至高のマリアージュです。
3つ目は、
『サヴァラン モカジャバ』
3種類のうち、これだけ〈ノンアルコール〉に。オペラやティラミスをイメージし、ビターコーヒー×チョコレート×バニラの間違いない組合せを〈サヴァラン×ヴェリーヌ〉で表現しました!
アルコールが苦手な方も、このヴェリーヌならサヴァランの〈良さ・美味しさ〉を御堪能頂ける商品だと思います。
上記3種類の詳しい商品説明は、商品ごとに分けて〈note〉に投稿しました。ご興味のある方、読むのがお好きな方は是非とも。
もう暫くお待ち下さい。
ご購入に際しての注意点
あ、ご購入に際し、幾つかご注意頂きたい事が。
上記の〈サヴァラン ヴォージュ2〉〈サヴァラン フランコジャポネ〉の2種類については前述の通り〈洋酒〉を使用します。
なので、どちらも〈洋酒使用〉と表示して販売する予定です。
ですが、海外のケーキの様にドボドボと洋酒を加え、そのアルコール臭が他の食材の香りを完全にマスキングしたり、アルコール特有の苦味が感じられたり、そんなケーキは私の好みではありません。そうならない様に調整して洋酒を配合します。
なので、洋酒は〈入れ過ぎず、入れなさ過ぎず〉で。
お酒がお好きな方は〈とにもかくにもたくさん入れて欲しい〉とおっしゃりがちですが(笑)、私は他の食材とのマリアージュを大切にしたいんです。なので、「もっとアルコールをきかせてくれ」と言われても「そうですね」とはなりませんし、逆に「アルコールがキツイのではないか?」と心配される方もおられるかも?と思いますが、その心配は杞憂に終わると思います。
余談ですが、お好みで洋酒を追加できる様に〈洋酒を含んだスポイト〉をケーキに刺して提供する店舗もあります。勿論そういった事も検討しましたが、必要の無い方は購入の度にそのスポイトを使わずに廃棄すると考えると、“もったいない・地球に優しくない”との声が出て否決となりました。
また、よくある質問として「アルコール度数はどのくらいですか?」と聞かれる事もあります。大変申し訳ありません。仕上げに直接洋酒を振りかけている様な場合は、しっかりとお答えできるのかも?ですが、上記のヴェリーヌの場合、ケーキを構成する幾つかのパーツにお酒を入れ、パーツによっては作る工程で熱を入れるので、含まれるアルコールは一部揮発します。そういった事が複合して1つのケーキが出来上がっているので、トータルでアルコール度数が何度であるかは「分かりません」とお答えせざるを得ないんです。調べる方法があるなら教えて欲しいくらいで。
それと、「食べた後、車の運転はできますか?」との質問にも正確にお答えする事が出来ません。どのくらいのアルコールが検出されれば酒気帯び運転になるのかも、私は“いちパティシエ”なのでよく知りません。なので、そういった質問があれば一様に「食べた後に車を運転する事が無い様、外出する用事を全て済ませた後で召し上がって下さい」とお答えさせて頂きますので。
あ、『サヴァラン モカジャバ』のみ“ノンアルコール”のサヴァランなので、それをお勧めするのが正解ですね。
では、宜しくお願い致します。
〈ダイナースクラブ フランスパティスリーウィーク〉は回を重ねる度にスケールアップしているイベントなので、こちらも負けないように良い商品を提供したいと思っています。更に、この良い機会に、もっと多くの方に〈進藤洋菓子店〉の菓子を知ってもらいたい!とも思います。
時間の許す限り、勿論当店だけではなく、推しのお店や気になっているお店などにも、是非この機会に訪れてみては如何ですか?
事前に参加店かどうかのご確認は忘れずに!
宜しくお願い致します。
では、いつも通り〈当店の商品は違いの分かる大人向き〉〈論より証拠〉。ご来店をお待ちしております。
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