【クリスマス2024】どこにでも有りそうで意外とない“紅茶×チョコレート”の新作ケーキ〈アプレミディ〉。こちらも、めちゃくちゃ美味しいケーキに仕上がりました!
今年のクリスマスに向けた新作ケーキは、2種類!
その名も【フレージュ】と【アプレミディ】。
〈フレージュ〉は、甘く香り高い〈苺のジュレ〉を2種類のチーズケーキ〈スフレチーズケーキとレアチーズケーキ〉でサンドした、チーズケーキ好きにはたまらない1品。
そして〈アプレミディ〉は、どこにでも有りそうで意外とない〈紅茶×チョコレート〉のケーキで、〈紅茶好きとチョコレート好き〉な方々をまとめて一気に満足させちゃう1品。どちらも強いアロマな食材なので、慎重に何度も試作してバランスを整えた結果、味わい深く、とっても美味しいケーキに仕上がりました。
いつものようにレシピは完全オリジナル。
この投稿は〈アプレミディ〉の詳しい説明になります
毎年、クリスマスには必ず新作ケーキを1つ、もしくは2つ作る事を自分に課していて。
いつもその年の9月頃には「今年は何にしようかな~」なんて考え始めるんです。
今年はすぐに1つ目〈ダブルチーズケーキ×苺の“フレージュ”〉を作る事は決めちゃったので、あともう1品を作る?やめる?どうする?…となり。
ぶっちゃけ、常連様方からは「クリスマスに〈新作が2種類〉あったら選ぶのに迷うので、2種類出すのはやめてほしい」なんてご意見を頂いたりもするのですが、時間的にもいけそうなので、今年は2種類目も考える事にしました(笑)。
バレンタインデーが誕生日である〈チョコ好きの私〉としては、いくらチョコの価格が高騰していても、2品目はやっぱりチョコ系で行きたいかなと(笑)。
ちなみに、私のチョコの使い方は〈しっかりとチョコを味わって欲しい〉ムースや焼き菓子には“こだわり”の〈フランスやスペイン、ベルギー産最高級チョコ〉を。メインになる味(例えばチェリーやオレンジやその他の食材)があって、それを引き立てる役のチョコには〈ミドルクラスのフランスやベルギー、オランダ産チョコ〉を使っていて。
チョコの話が出たところで、少し話が逸れてしまいますが、ちょっとお時間を頂いて最近のチョコレートの価格事情をお話しさせて下さい。普段ならこんな泣き言は言わないのですが、流石に今回ばかりは実情を知って頂かなければならない状況でして。
〈新型コロナウイルス〉が世界中で猛威を振るい、ウクライナとロシアが戦争を始める前。ほんのつい4年程前までは、当店で使うチョコレートは“メイン”に使う〈こだわりの最高級チョコ〉が1kgあたり2700円~3000円、〈ミドルクラスのチョコ〉が1kg1700円~2000円くらいでした。
ですが今現在の価格は、上記と全く同じ銘柄の〈最高級チョコ〉が1kg5000円~5500円。〈ミドルクラスのチョコ〉が3500円~4000円に高騰。というか、急騰。もっとシックリくる言い回しは…《暴騰》。
もちろん、短い期間ですが2700円→3500→5500円、1700円→2700→4000円という段階を経て、ではありますが。
それにしても異常でスピーディーな値上がりに、現在の価格を告げられた時はちょっと目まいがしたくらいで。
パティシエを25年ほどやっていますが、ここまでの価格の高騰は初めてです。
いつも、少しくらい(200円程度)の値上がりなら利益を少し削って、お客様からは一見何事もないような形で処理してきましたが、流石にこれは無理…。
新型コロナ、戦争、異常気象による不作、労働者問題、輸送問題、環境問題、インフレ等、様々な理由が挙げられていますが、今後2年は解消の見込みが無いとのこと。
となると、今後の手段は下記の3択
1.チョコ使用商品の大幅値上げ
2.チョコの〈品質・味〉へのこだわりを封印し、可能な限り安価なチョコレートに変更して、値上げ幅をできるだけ小さくする
3.チョコ使用商品の販売中止
いずれにせよ、1~3のどれか1つに絞るのではなく、〈これは1、これは2、これは3…〉と柔軟に対応していきたいと思ってはいます。
もう既にチョコレートメーカー各社の大幅値上げは行われた後ですが、値上げ前に“パニックバイ”にならない程度の〈駆け込み購入〉はできたので、それが底を突けば、そのタイミングで〈価格の見直し〉は必須になります。
加えて、残念ですがこれまでと同じ価格・ラインナップでの〈バレンタインデー〉の営業は、とても難しい状況ですね。
ずいぶん悲観的な話になってしまいましたが、これは今、私のお店だけでなく日本中で現実に起こっている事ですので、お知りおき頂き、受け止める準備をして頂ければと思います。
では話を戻して、とりあえず〈大幅値上がり前に確保したチョコ〉でクリスマスの新作を作る!と決め、〈じゃあ、どうする?〉と一週間程あれこれ考えていた時、1つ作りたい〈マリアージュ〉が頭の中に降ってきました。それは
〈紅茶×チョコレート〉
よくよく考えると、“降ってきた”は適切ではなく、私の記憶の片隅にずーっとあった物で。
もう25年以上も前の事ですが、私が初めて就職した心斎橋〈パットオブライエン〉というケーキ喫茶に、〈オペラ ドゥ テ〉という紅茶の〈オペラ〉がありました。
当時それが大好きで。
元々〈オペラ〉と名付けられたケーキは、言わずと知れたフランス パリのDALLOYAU(ダロワイヨ)を代表する〈コーヒー×チョコレート〉のケーキ。それを当時パットオブライエンのチーフパティシエが、〈紅茶×チョコ〉でアレンジした物がその〈オペラ ドゥ テ〉でした。
チョコレートガナッシュ、紅茶のバタークリーム、紅茶のシロップを染み込ませたアーモンドスポンジ。それぞれが互いに引き立て合っている〈素晴らしく美味しいケーキ〉で。今思うと、それが私と〈紅茶×チョコ〉との最初の出会いでした。
〈紅茶×チョコレート〉って美味しいんだ…
そしてその後、〈オペラ ドゥ テ〉の事などすっかり忘れる程の時を経て、2度目はフランスから帰国して間もない頃。ふと立ち寄ったスーパーで〈キリン 午後の紅茶チョコレート〉なる物を発見。製造元はカバヤ食品とのこと。赤のパッケージが可愛くて。元々〈チョコ全般いける口〉のチョコ好きなので、あまり深く考える事なく購入し、家でテレビを見ながら食べた時の事。タブレット状になったチョコ板を割り、一欠片口に入れてビックリ!
〈美味しいっ!〉
紅茶の強い香りが、チョコの強烈なアロマとケンカすること無く混ざり合い、素晴らしいハーモニーを奏でていました。
〈午後の紅茶〉さん、流石です。
瞬時に、あの〈オペラ ドゥ テ〉が脳裏に鮮明に甦えりました。
やっぱり〈紅茶×チョコ〉って美味しいよねっ!
って言葉が口をついて出た事は言うまでもなく(笑)。
これらの経験があるにもかかわらず、当店の営業を開始して10年もの間その〈マリアージュ(組み合わせ)〉を忘れるとは…。
繰り返しになりますが、新作ケーキのアイデア〈紅茶×チョコ〉は降ってきた物ではなく、記憶の引き出しの奥の方に仕舞い込まれていた物でした(笑)。
話を当店の新作ケーキ〈アプレミディ〉に戻します。
ケーキの構成は下から、薄焼きクレープを砕いた〈パユテ〉にチョコを絡めた〈ショコラ フォイユティン〉、バタークリーム(湿気り防止)、紅茶×アーモンドの極厚スポンジケーキ、濃厚チョコガナッシュ、アールグレイのババロワ、紅茶のナパージュ、金粉+金箔、サイドの薄板チョコレートとなります。
味の基本線は、〈オランダ産のミドルクラス〉のチョコをたっぷり使用した〈濃厚チョコガナッシュ〉と、高級アールグレイ茶葉で〈濃いティーオーレ〉を作り、その強めのアロマを生かしながら仕立てた〈ババロワ〉。
常々、味のバランスを考える際に自分に課している“ルール”は〈薄い味には薄い味を〉〈濃い味には濃い味を〉合わせるという事。今回もそれを忠実に守る事で、自画自賛のマリアージュに。
脇を固めるのは、進藤の代名詞となりつつある〈極厚ビスキュイ〉。今回は紅茶風味。以前は、ムースには薄いアーモンドスポンジケーキ2枚を使うのが常でしたが、以前に〈バニーユ〉を制作した時から厚く焼いたスポンジの存在感に魅了されてしまって…。お付き合い下さい(笑)。
食感のバランスを考え、今回は底に〈ショコラ フォイユティン〉を。通常はアーモンド等焼いたナッツを砂糖と絡めて挽いた〈プラリネ〉を加えるんですが、今回は〈紅茶とチョコ〉を強調するためにNGに。
そのおかげで、しっかりとチョコを感じる〈サクサク・カリカリ〉な仕上がりに。
このケーキも何度も試作を重ねた甲斐があり、とっても美味しいケーキになりました。ご予約頂いた皆様の〈素敵なクリスマス〉のお手伝いができれば幸甚です。
あ、ちなみにこのケーキの名前〈アプレミディ〉はフランス語で〈午後〉の意。
このケーキを作る“キッカケ”をくれた〈午後の紅茶〉から、リスペクトを込めて〈午後〉を頂きました(笑)。
ではいつも通り〈当店の菓子は違いの分かる大人向き〉〈論より証拠〉。
ご来店をお待ちしております。
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