見出し画像

1品目は『サヴァラン ヴォージュ2』【ダイナースクラブ フランスパティスリーウィーク2024】

この記事は、以前の投稿
【〈マロン×アプリコット×コニャック〉は至高のマリアージュ。もしかしたらこの〈ヴォージュ〉は、進藤史上最高傑作?】
と説明が重なる部分が多い為、必要な部分を〈抜粋〉し、足らない事を〈加筆〉しながら構成しています。

【ダイナースクラブ フランスパティスリーウィーク】とは、2021年から始まった〈フランス菓子〉をテーマとしたグルメイベントの事。
そのイベント内容は、各回毎に主催者から共通のテーマ〈お題のお菓子〉が発表され、参加する各店舗が〈そのお題のお菓子〉にオリジナリティーを加えたアレンジ作品(商品)を発表し、それを決められた期間(約1か月間)店頭販売するというもの。今年は7月1日~31日まで。

シェフの進藤です。

普段、シェフパティシエとしてオリジナルケーキをクリエイトする身としては、〈憧れ〉はフランス菓子の巨匠〈ピエール・エルメ氏〉のようなパティシエ。
どのような所に〈憧れる〉かというと、やはり彼のように【斬新で唯一無二なマリアージュ】を生み出してみたい。
具体的には、若い頃食べて衝撃を受けた〈プレジール シュクレ〉→〈ヘーゼルナッツ×ミルクチョコ×多重食感〉や、〈イスパハン〉→〈バラ×フランボワーズ×ライチ〉等に代表される様な【素晴らしいマリアージュの菓子】を、私も生み出してみたい!
1つでいいから後世に残る様な味を!
と常々思ってはいて…。

でもそれは簡単ではなく…

「いいのができた!」と思っても独りよがりな物であったり、逆に「これは自分だけが美味しいと思ってるのかな…」と疑心暗鬼になったり。

実際に私が得意なのは、既存の〈複雑で素晴らしい味の組み合わせ〉を、糖や量を調整し、各パーツのバランスを模索して〈至高の領域〉に近づける事。
当店の〈リュクス〉〈ラフォレ〉〈メルヴェイユ〉辺りを召し上がって頂ければ、ご理解頂けるのでは?と思います。
現在は〈ラフォレ〉のみ販売中。まだの方は是非とも。

ですがそんな私でも、少数ですが〈オリジナルマリアージュ〉の〈成功例〉なケーキがあるんです!
召し上がったお客様から多くの賛辞を頂く事から、それは間違いないかと(笑)。

その1つが〈マロン×アプリコット×コニャック〉のケーキ〈ヴォージュ〉。

〈コニャック〉とは、フランスのコニャック地方で、白ぶどうから作られる高級ブランデーの事。コニャック地方で作られた物のみ〈コニャック〉と名乗る事ができるんだとか。ちなみに、有名ブランデーの〈ヘネシー〉や〈レミーマルタン〉はコニャックの人気銘柄。実は、そのケーキに付けた名前〈ヴォージュ〉もその1つ。

ではここからは、その〈ヴォージュ〉の詳しい説明と、そのオリジナルストーリーを。

私は26才の時、生まれ育った大阪を離れ、東京品川の〈ラフォーレ東京〉というホテルに勤めました。そこで働き始めて1年程過ぎた頃、社を挙げた1大イベントとして、全国各地にあるそのホテルグループ社員による〈料理コンクール〉が開催される事になりました。勿論私も〈デザート部門〉に参加を表明。そういったコンクールに〈初挑戦〉する事が、とても嬉しかったのを覚えています。

テーマは〈秋〉

参加を決めてから書類提出まではあまり時間が無く、更に仕事終わりのクタクタ状態での〈コンクールに向けた試作〉は、思った以上に大変で。必死に、それまでに蓄えた製菓の引き出しを開けまくり、ちょっぴり背伸びもしつつ、やっとの事で期限内に〈秋イメージのデザート〉をまとめ上げて提出しました。
そしてそれは、多くの社員による応募の中から見事に書類審査を通過!
その数ヶ月後、〈ラフォーレ滋賀〉に赴いての決勝実技が行われました。

その時に作ったデザートが〈マロン×アプリコット×コニャック〉の1皿。

夏の名残のアプリコットと秋を代表するマロンのマリアージュ。そして、その仲を高級ブランデー〈コニャック〉が取り持つ1皿。
試作に行き詰まっていた時、どこからともなく湧いてきたイメージに導かれ、その場でささっと掛け合わせた材料が、思いもよらず素晴らしいハーモニーを奏でました。作った自分が一番ビックリして(笑)。

実技審査で作った皿盛りデザート。
古い写真の為、画像の汚れが…

今、50才になった私が客観的に見れば、色々と足りないデザートですが、初めて〈自分の菓子〉で人と競い、勝つ為に知恵を振り絞った〈私の取っておきの1皿〉。
〈取っておきのマリアージュ〉

→〈マロン×アプリコット×コニャック〉

その思い入れのある味わいを、進藤洋菓子店クリスマス限定の〈オリジナルケーキ〉に仕立てたのが〈ヴォージュ〉であり、それを〈サヴァラン×ヴェリーヌ〉で表現したのが、今日ご紹介する〈サヴァラン  ヴォージュ2〉になります。
〈ヴォージュ〉の2作目なので〈ヴォージュ2〉。読み方はフランス語の〈1(an)アン、2(deux)ドゥ、3(trois)トロワ〉の〈ドゥ〉なので、〈サヴァラン  ヴォージュ  ドゥ〉ということでお願い致します。

そのヴェリーヌの構成は下から、

コニャックシロップをたっぷりと含ませたサヴァラン、コニャックゼリー(水分移行をブロック)、アプリコットジュレ、軽くコンポートしたアプリコット果肉、マロンのババロワ、コニャックムース、コニャックシャンティーになります。

〈サヴァラン  ヴォージュ2〉

主役のサヴァラン生地は、〈滑らかな口溶け〉を目標に何度も何度も試作を繰り返し、遂に辿り着いた物。
昔、パリの名店〈ストレール〉で食べた〈ババ〉が私的No.1なので、その記憶と重なる物ができた!と自負しております。
別タイトルにて〈サヴァラン生地〉を、レシピも含めて作り方を公開予定ですので、気になる方は今しばらくお待ちを。
後は、

百聞は一食にしかず。

私がここでごちゃごちゃと述べても、この〈マロン×アプリコット×コニャック〉のマリアージュの美味しさは到底伝わりません。
やはり、食べてみない事には…。

自画自賛、そしてお客様からもご支持頂くオリジナルのマリアージュ。
多くの方に味わって頂きたい。
是非ともこの機会を逃す事なく、ご賞味下さい。
冒頭に書きましたが、販売は7月1日~7月31日まで(当店の営業スケジュールに準ずる。詳しくは当店インスタグラムをご参照下さい)。

あ、すみません。ご購入に際しご注意頂きたい事があります。
今回のイベントに向けた新商品〈サヴァラン ヴォージュ2〉〈サヴァラン フランコジャポネ〉の2種類については前述の通り〈洋酒〉を使用します。なので、どちらも〈洋酒使用〉と表示して販売します。
ですが、海外のケーキの様にドボドボと洋酒を加え、そのアルコール臭が他の食材の香りを完全にマスキングしたり、アルコール特有の苦味が感じられたり、そんなケーキは私の好みではありません。そうならない様に調整して洋酒を配合します。
なので、

洋酒は〈入れ過ぎず、入れなさ過ぎず〉で。

お酒がお好きな方は〈とにもかくにもたくさん入れて欲しい〉とおっしゃりがちですが(笑)、私は他の食材とのマリアージュを大切にしたいんです。なので、「もっとアルコールをきかせてくれ」と言われても「そうですね」とはなりませんし、逆に「アルコールがキツイのではないか?」と心配される方がおられるかも?と思いますが、その心配は杞憂に終わると思います。
余談ですが、お好みで洋酒を追加できる様に〈洋酒を含んだスポイト〉をケーキに刺して提供する店舗もあります。勿論そういった事も検討しましたが、必要の無い方は購入の度にそのスポイトを使わずに廃棄すると考えると、“もったいない・地球に優しくない”との声が出て否決となりました。
確かに、それを付ける事によって更に売値が上がるとすれば、少しでも安く購入したい方にとっては愚策と言わざるを得ません。

また、よくある質問として「アルコール度数はどのくらいですか?」と聞かれる事もあります。大変申し訳ありません。仕上げに直接洋酒を振りかけている様な場合は、しっかりとお答えできるのかも?ですが、上記のヴェリーヌの場合、ケーキを構成する複数のパーツにお酒を入れ、パーツによっては作る工程で熱を入れるので、含まれるアルコールは一部揮発します。そういった事が複合して1つのケーキが出来上がっているので、トータルでアルコール度数が何度であるかは「分かりません」とお答えせざるを得ないんです。調べる方法があるなら教えて欲しいくらいで。
それと、「食べた後、車の運転はできますか?」との質問にも正確にお答えする事が出来ません。どのくらいのアルコールが検出されれば〈酒気帯び運転〉になるのかも、私は“いちパティシエ”なのでよく分かりません。なので、そういった質問があれば一様に「食べた後に車を運転する事が無い様、外出する用事を全て済ませた後でお召し上がり下さい」とお答えさせて頂きますので。
あ、3種類のサヴァランの内『サヴァラン モカジャバ』のみ“ノンアルコール”のサヴァランなので、それをお勧めするのが正解ですね。

では、いつも通り〈当店の菓子は違いの分かる大人向き〉〈論より証拠〉。
ご来店をお待ちしております。


因みに、上記コンクールの結果は残念ながら3位でした。ですが、その審査中の〈味覚〉のみ、他を抑えて私の作品が〈1位〉だった事が、当時の私としては大きな大きな自信になりました。

PS.後の2品は別タイトルにて。


今年、2024年イベント概要の説明はこちら↓


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?