![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160007402/rectangle_large_type_2_4e3aa67dc509b80898d0fb881fcb090c.jpg?width=1200)
終わりは知らない方がいい?
いつもの店が閉店する。
「あと4回」
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160002359/picture_pc_d9bdb4f3f4f01ceafbe5b32ca4cf264f.jpg?width=1200)
来年からいつもの過ごし方ができなくなるわけだけど、すでに気持ち的に、いつもの過ごし方ができなくなってしまった。
「あと3回」
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160002286/picture_pc_b45b93f4b5d5c11c8cb6fde25f65b9bf.jpg?width=1200)
なんだか落ち着かない。
いつもの過ごし方ができない。
挨拶をし、空いていればバラの前の席に着き、間髪入れず朝宮茶を頼むのというのがほぼ毎週のルーティン。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160002260/picture_pc_a91576cd1b73704efc0e548168c8caf0.png?width=1200)
心残りにならないように、いつか一度くらいは食べてみようかと思っていた、おしるこを頼んだりしてしまって、貴重な「いつもの」を味わうことなくカウントダウンがひとつ進んでしまった。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160002251/picture_pc_ed5f6afeecdf54e9d73b100a37289228.jpg?width=1200)
ここを一枚だけ写真撮ってもいいですか?
なんて、普段はするはずのない行動もしてしまう。
もう「いつもの」はすでに終わってしまった。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160002315/picture_pc_46611511eda5f4be9a61004f74b96722.jpg?width=1200)
次回来た時は「あと2回」とそわそわして過ごすのだろう。
駆け込み客の流れも激しくなり、ささっと飲んで、ささっと帰ることだろう。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160002402/picture_pc_3d56107b15668f84d7dd48ccff7b7e9e.jpg?width=1200)
自分が店を畳む時のことを考えた。
インフルエンサー対策で、告知しないという考えだったけれど、こうして客としてこの流れを体験して、告知しないか、しても数日前がいいだろうなと、その理由がアップデートされた。
たとえば、何歳の何月何日に死にますと、知れたとしたら、よりよく生きられるだろうか。
次があると、お気楽に、雑な過ごし方をして、ほんの心の片隅で、実はこれで最後かもしれないと杞憂を抱いているくらいが、今をベストな状態で味わうことができるような気がする。
味わい尽くそうなんて気持ちが入ってしまったら、ベストはもう味わえることはないだろう。
「いつもの」「これだけ」になるほどの愛することになったそれの真髄は、いつもの状態だから味わえていたのだから。
いつかは…という覚悟は心の片隅にあったから、行ったら閉店していたとなっていたとしたら、おそらく清々しくもあったと思う。
前回が最後だったのだなあ…と回想されるのはいつも通りに過ごした温かい思い出。
それはなかなか、いいのではないだろうか。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160007146/picture_pc_ee829ddbd9b471ab5905a2b6bf2a7ff3.jpg?width=1200)
これ以来ここから写真は撮ったことがなかった
「終わるから」と真剣に向き合うと味わい尽くせなくなるのを知った。
味わい尽くすには「いつかは…」というほんのり漂う切なさが必要らしい。
来年も見れますようにと眺め続けたバラと、これで最後なんだなと見つめたバラは、まったく違うものに映った。
終わりは知らないでおきたいものだ。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160007154/picture_pc_2b6234d83a6c8f2181f35dc44bbd6d01.png?width=1200)
でも、知らせてくれてよかったという気持ちもある。
おしるこが幻にならなかったから。
切るはずのなかったシャッターを切ることができたから。
自分の番の時、揺れるなあ。
「いつもの」や「これだけ」の終わりの日
知りたいですか?
知らないでおきたいですか?
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160008976/picture_pc_0969cfa69d308784b065058b20bd8f6b.png?width=1200)
いいなと思ったら応援しよう!
![近藤 伸 / クラシック(函館)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/89020215/profile_3fcaf5fe91cd7d7aa574735aabbf2dfd.png?width=600&crop=1:1,smart)