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有蹄類の角は良いぜ。

 みなさん、おはこんばんにちは。今回は、有蹄類の角について語ってみました。お時間ございましたら、ぜひご覧ください。

1.あんな角、こんな角。

 姿形も多様な哺乳類の仲間たち。その中には角を生やし、同種内や外敵との闘争に使用したりする種が多数存在しています。これから、彼等の角を紹介していきます。

1-1.シカの角。

 角を持つ動物として、真っ先に思い浮かべる動物のひとつがシカではないでしょうか。シカの角は枝角、アントラーと称し、毎年生え変わるのが大きな特徴です。例えばニホンジカの場合、
1.春から夏にかけて角が伸びる(伸び切った時を、袋角という)
2.夏から秋の間に皮膚が破けて完成。
3.春先前後に角が落ちる。
というパターンです。

ニホンジカの亜種、ハナジカ。袋角の状態です。8月撮影。
ニホンジカの亜種、エゾシカ。皮膚は完全に落ち、骨が露出しています。2月撮影。

 大抵はオスにしか生えませんが、トナカイだけにはオスもメスも生えます。

世界一美しいシカと呼ばれる、アクシスジカ。左がオス、右がメスです。
トナカイ。オスは冬には角が落ちてしまいますが、メスは冬も角を生やしたままです。

1-2.ウシの仲間の角。

 角を持つ動物として、シカと双璧を成す(?)のがウシの仲間ではないでしょうか。彼等の角は洞角といい、頭骨の上にある骨の芯の外側をケラチンの鞘が覆っていて、一生伸び続けます。歳を重ねれば重ねるほど立派になる傾向があります。

アフリカ南東部に棲息するレイヨウ、ニアラの若いオス。角はまだまだ短いです。

 オスもメスも生やす者、オスにしかない者、オスとメスとで大きさや形に差がある者等種によって異なります。

インド原産のアンテロープ、ブラックバックのオス。黒い身体と捻れた長い角は、大人のオスの証です。
四国産ニホンカモシカ。シカと付いていますが、ウシ科。角は雌雄共通です。
アメリカバイソン。オスもメスも、短くとも頑丈な角を有します。

1-3.プロングホーンの角。

 北米大陸の平原に暮らす鯨偶蹄目のひとつ、プロングホーン。構造はウシ科の角に似ていますが、角質の鞘の部分は基本枝分かれしていて、毎年生え変わります。メスの角はないか、あっても痕跡的な感じです。

オスのプロングホーン。抜け替わるシーンは一度は見てみたい…。
メスのプロングホーン。角は生えるとしても、ほんの僅かに生える程度です。

1-4.キリン・オカピの角。

 アフリカのサバンナに生きるキリンと、その祖先筋に近く、コンゴ盆地の森に潜むオカピ。彼等の角はオシコーンと呼ばれ、頭骨の一部が隆起し、その上に皮膚が覆ったものであり一生伸び続けます。
 キリンはよく2本角と思われがちですが、実際には5本持っていて、特に歳を取った個体ほど目立ちます。

マサイキリン。耳の上に1対の短い角、目の上の1本角、その間の1対の角と合わせて5本あります。

 オカピの角は2本です。キリンはオスもメスも持つ一方、オカピはオスにしか生えません。

オカピのオス。シマウマとよく間違われがちですが、あちらには角はオスもメスもありません。

1-5.サイの角。

 アフリカと熱帯アジアに5種存在するサイの仲間。これまで紹介してきた動物たち(鯨偶蹄目)とは異なり、奇蹄目に属します。彼等の角はケラチン質でできていて、中に骨はありません。鼻の上に1本か2本生えていますが、1本しかないのは2種類です。

ミナミシロサイ。アフリカに棲む2種のサイは、どちらも2本角の持ち主です。

 基本的にオスもメスも持ちますが、ジャワ島西部にしかいないジャワサイのメスは、持たないこともあるといわれています。

ジャワサイと同属のインドサイ。1本角の姿は幻獣・ユニコーンのモデルのひとつです。

2.角を持った、それ故に。

 今や絶滅の危機に瀕する動物達は多数存在しますが、角を持つ者たちとて例外ではありません。そして、その要因のひとつが、まさに人間に角を狙われるというものなのです。

2-1.立派な角を持つ者は記念品。

 強そうに見える者を打ち負かしたい、我が物にしたいという欲望により、多種の動物たちがありったけ翻弄されています。それは角を持つ者たちとて同じです。

 この欲望の下、個人の記念品(剥製とか)を目的とする、娯楽としての狩猟をトロフィーハンティングといいますが、特に角が立派であればあるほど標的にされがちです。そうやって個体数を減らした種は決して少なくはないのです。

中央アジア南部に暮らす野生の羊、ウリアル。不謹慎ですが、このオスの大きな角は如何にもハンターが好みそうです。
サハラ砂漠に棲むウシ科、アダックス。捻れた角目当てに過剰に狩られ、野生個体は残り100頭未満です。

2-2.角に効果はないのに…。

 特にサイの仲間の角は、薬効があると信じ込まれたり、短剣の柄の原料等として狙われています。このため、5種類いるサイの仲間全てが大なり小なり存続の危機に晒されています。

アジアのサイの中で唯一の2本角、スマトラサイ。かつては東南アジアの広域にいましたが、今ではスマトラ島に数10頭が残るのみです。

 しかし、前述の通り、彼等の角はとても薬効などなさそうな成分でできています。迷信の力…、つくづく恐ろしいぜ。

クロサイはその角を狙われ、以前、20〜30年ほどの間に個体数が90%以上も減ったことがありました。

3.角に会う。

 各地の動物園では、角を持つ動物たちが何種類か飼育されていることがあります。どんな種が何処にいるか等を事前に調べてみて、彼等に会いに行ってみては如何でしょうか。もしかしたら、新しい発見があったりするかもしれません。
 特にサファリパークの場合、車やバスのすぐ外に群れる、色々な角を見比べてみることができることが多いので、おすすめです。

キリンは角を持つ動物たちの中では、全国各地の動物園でよく見かける存在です。
一触即発な、オスのダマジカたち。運が良ければ、こんな光景も車やバス、徒歩等で見られます。

 また、角を持つ動物たちの剥製標本を展示している博物館もあります。日本では見られない貴重な動物たちもいるので、見つけたり細部まで観察したりするのも面白いでしょう。

西アフリカのサバンナに暮らすウシ科、ニシハーテビースト。滋賀県にある滋賀サファリ博物館にて。
エチオピア固有種であるウシ科、マウンテンニアラ。東京上野の国立科学博物館地球館3階にて。

4.最後に。

 そもそも何故私が角を持つ動物が好きなのか?、ということについて。簡単にいえば、角を生やした姿の、何処か高貴且つ堂々とした様に惹かれているからです。

 小さい頃にとある本で見た、数々の角を持つ動物たちの勇姿に魅せられたのがきっかけで、それ以来角を持ってるのってカッコいいよな…、と動物に関する書籍やTVを見る度、ずっと思い続けている節があるのです。それに、種によって角の形も色々異なることに対しても、自然界の不思議さや素晴らしさを感じ続けています。

貫禄たっぷり、シタツンガ(ウシ科)のオス。

 そして今は、たまに国内外の動物園を訪れたり、その時のことをSNSで発信したりしていく中で、有蹄類の角のことも自らの手で伝えられることの喜びを感じているとともに、角を持つ動物たちの魅力や今が、より多くの人たちに知れ渡ると良いな…、と日々心から願っています。

日本では見られない野生牛、バンテン。彼等のカッコ良さとか危機的な現状とか、もっと伝わって欲しいっ!

 今回はここまでとさせていただきます。最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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