なぜ議事録を極めることが成長につながるのか?フリーターを一人前のPMOに育てた人材育成術
人材確保は今、どの企業も抱える問題です。採用と同じくらい、人材育成に頭を悩ます企業も多いでしょう。JQでは独自の教育法と評価制度をしき、全くの未経験者であるフリーターの男性を一人前のPMO(プロジェクトマネージャーの一歩手前)に育てました。今や彼は、お客様から頼りにされる頼もしい存在です。今回は、その育成方法について紹介します。
まず、JQの人材育成メソッドをまとめると、以下の図のようになります。
少し説明すると、必要な素質を持っている人を選び、スキルを高める流れを3つのステップで表しています。さらにすべてのステップを下支えするのが、丁寧でこまめなレビューと、ステップに応じた評価制度です。
今回は
①人材の選定
②基礎の強化
③人を動かす訓練
の3つのステップについてお話します。
弊社の場合、育てるのはプロジェクトマネージャーですが、この3つのステップはほかの多くの業種でも当てはまると思います。
以降では各ステップについてご紹介しますので、参考になれば幸いです。
①人材の選定:伸びる人材の選び方
まず、育てたい職種に必要な素質を持った人を選ぶのが重要です。
フリーターだった現メンバーを採用したのは、今から約4年ほど前。あるアプリ開発案件で人手が足りず、議事録や管理など細々したサポートをしてくれる人を探していたときでした。派遣会社の方に紹介を依頼し、数名の中から選んだのがそのメンバー。
その彼を採用したのには、明確な理由が3つありました。
まず1つ目は、自分で何かをやるという意気込みがあることです。
彼は当時25歳。地元の機械系の企業に就職したものの「つまらない」と会社を辞め、「何か面白いことはないか」と東京に出てきて、フリーターをしながら自分でスマホアプリの制作に取り組んでいたそうです。
この行動力の高さと、何かをやらなきゃ!と自分で物事に取り組む意欲の高さは、間違いなく仕事にも活かせると感じました。
2つ目は、明確なモチベーションがあることです。
面談の際、彼が私に明確に伝えてきたのは、「お金を稼ぎたい!」という意志。働く上でモチベーションはとても大事です。モチベーションは何であれ、目標がある人はやはり強く伸びると感じていますし、明確に働く理由がある人の方が一緒に働きやすいですよね。
そして3つ目は、素直で正直な性格で、人に好かれるタイプであることです。
彼の中で、一番高く評価したのはこのパーソナリティの部分です。たどたどしい部分もありながら一生懸命に話してくれる姿に、素直さや真面目さ、正直さなど、彼が持つ人柄の良さを感じました。
ここで多くの人は「たどたどしいということは、コミュニケーション能力に欠けるのでは?」「コミュニケーション能力の低い人は、プロジェクトマネージャーになれないのでは?」と思われるかもしれません。
でも、私が注目して見ていたのは、彼が持つ雰囲気や人に与える印象です。会話はスムーズにいかないけれど、それでも自分の考えや思いを伝えてくれたところに、きっと人に好かれるだろうと感じたのです。
多くの人と関わるプロジェクトマネージャーにとって、人に悪い印象を与えず、良い関係を構築できるかどうかはとても大事なポイントです。
このように、自社に合うか、そして育てたい職種に適正があるか、を採用時点で見極めるのが重要です。絶対に欠かせない要素はなんなのか、事前にきめておくといいと思います。
②基礎の強化:議事録で養う、正しくインプット・アウトプットする能力
次のステップは、一人前になるために必要な基礎力をつけるための仕事を徹底的にやりこんでもらうこと。
プロジェクトマネージャーの場合、議事録作成が「やりこむべき仕事」となります。
プロジェクトマネジメントをする上で、口頭での指示は有り得ませんから、全て何かしらのドキュメントに落とし込んで進めていきます。その資料作成能力を高めるために、会議への参加と議事録作成の作業を4〜5ヶ月ほど徹底的にやってもらいました。
「議事録に4〜5ヶ月も?」と思われるかもしれませんが、議事録作成をするためには「物事を正しく把握する力」も必要です。そして、正しくインプットができなければ、議事録として正しくアプトプットができません。※もちろん議事録以外の資料も作ってます
プロジェクトマネジメントにおいては、様々なステークホルダーの人が関わっているため、立場の違う人が何を言っているのかを読み取る必要があります。そして、立場が違えば言うことも違います。話し方も、たどたどしく話す人もいれば、ふわっと抽象的な話をする人もいますから、これら全ての違うコミュニケーションを読み取る能力が非常に大事になってきます。
逆に言えば、これを鍛えるために、聞いたものをアウトプットするということがすごく大事になります。
アウトプットも、聞いたことをそのまま書いたのでは、読み手には伝わりません。咀嚼したうえで適切な単語、文章や表現に直していく必要があります。文章を作成するということは、大きく2つの点で学びがあります。1つは、正しいビジネス文書表現・日本語表現を学ぶということ。人に伝えるためにどんな表現・単語が適切かを学んでいきます。もう1つは、文章の記載のレベル感の調整の中でロジカルシンキングを学べるということです。議事録を書いていると、具体的に書いたほうが良い場合と、あえてざっくり書いたほうが伝わりやすい場合があります。この具体と抽象を行ったり来たりする中で、自然とロジカルシンキングも身に付くのです。
例)
会話:「例のキャンペーンの実施の段取り決めないといけないよね」
議事録例①:周年記念キャンペーンの実施計画を作成する
議事録例②:周年記念キャンペーンの実施の手順(誰が何をするか)を具体化する
例① ・②に共通するのは、キャンペーン名を特定(具体化)しているというところ。会話ではザクッと話されますが、複数のキャンペーンが予定されてるなら、どのキャンペーンかを正しく記載する必要があります
例① と②で違うのは、“実施計画”(抽象)と“実施手順”(具体)の違いです。実施計画というと、スケジュールや体制、予算など大きな枠組みのことを指します。実施手順というと具体作業と担当を指します。会議時点で、どちらのレベル感を求められているのかを察して、表現の具体と抽象を使い分ける必要があります。
議事録作成は地味な仕事です。しかし、誰が見てもわかりやすく、次の行動が明確な議事録を書けるようになることは、プロジェクトマネージャーに必要な基礎力の最高の訓練になるのです。
あなたが育てるべき職種に必要な基礎力がつくのはどのような仕事でしょうか?経営管理ならExcelでの数値分析かもしれません。営業なら、説得力のある提案資料の作成かもしれません。
とにかく「基礎力」がつく仕事を見極め、完璧にこなせるようになるまでやってもらうのが育成の第2のステップとなります。
③人を動かす訓練:わかりやすい指示書を書き、人を巻き込む
すべて一人で進める職人のような仕事なら別ですが、ほとんどのビジネスマンは「人に動いてもらう」ことができなければ成果を出せないでしょう。目的を達成するためには人を巻き込み、動かせなければいけません。
プロジェクトマネジメントは、人を動かすことがメインの仕事です。そこで、小さな領域の全体を任せることで、「人に指示を出し、巻き込み、動かす」経験をしてもらいました。
プロジェクトマネジメントの基礎となる資料作成能力はできていますから、自分でどうプロジェクトを動かしていくのか実戦ベースでやっていくのです。この時に任せたのは、アプリの分析システムの検証でした。開発会社の制作物を検証していくのですが、単なる検証ではなく、スケジューリングが必要な仕事でもあり、指示書を作成して人を動かす仕事でもあります。
実際にプロジェクトに入ってみると、雑な指示書のままでは人を動かせないことがよくわかります。自分が依頼されたときに、何をすればいいかすぐわかるレベルで依頼書を書かなくてはいけません。
重要なのは「自分で考える」こと。どうしたらわかりやすい指示書になるか、どうしたら人に動いてもらえるか。それを自分なりに考えて紙に落とし込めるようになることが重要です。
その後、また違うパターンのプロジェクトマネジメントを任せるということを繰り返し、いつしか当たり前にできるようになっていきました。
彼のように「人を動かせる」ようになれば、たいていの職種では一人前と言えるのではないでしょうか?
ゴールを明確にし、指示をわかりやすく伝え、進捗まで管理して達成に導く。この経験を積むことで、彼は約1年で一人前のPMOになりました。
3つのステップを機能させるために必要な、レビューと評価制度
ここまでどのように育成してきたかを紹介しましたが、人材育成は簡単ではありません。冒頭でもお伝えしたとおり、ステップを用意するだけでなく根気強く丁寧にフィードバックをしていく必要があります。
また、厳しいフィードバックもあるなかで彼がモチベーションを保てたのは、評価制度に各ステップをきちんと落とし込めていたからという要因もあります。
次回は、このレビューの仕方と評価制度について詳しくご紹介します。
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