第7章 2020年5月末クリニックにて、そして手術へ
クリニックに到着したのは5月23日でした。入り口の電気は消えていて受付にも人はおらず、どこかに看護師さんはいないかと探していました。通りすがりの看護師に、今日からお世話になる深作ですとお互いに自己紹介をした後、施設を紹介してもらいました。非常に清潔なクリニックで静かで良い所でした。部屋に案内され荷物をおろし、テレビにNintendo Switchを繋げ、ベッドに横になり好きな音楽を聴いてゲームをしていました。しばらくすると、病院のスタッフが朝食は何がいいかと聞いてきたので、指定されたメニューの中から良さそうなものを頼みました。
正直、最初の二日間はホテルに滞在しているような感じでした。受けた医療的な行為は大体血圧を図ったりするようなことだけで採血やカウンセリングもなく、3食不自由なく提供され、僕は1日中ゲームをしてました。本格的に物事が動き始めたのは週が明けた月曜日からでした。
まずは主治医となるアンドレアス・シュミッツ医師との面談。彼のオフィスに入るとまず彼は「まぁ座ってくれ」と言いましたが、「座ると痛みが出るので座りたくない」と告げると「あぁ...それはもう手術すべきタイミングだね」」と言われたことを今でもよく覚えています。そして彼の時間を必要以上に取らせないために前もって準備してきた質問のリストを彼と一緒にレビューしました。医療のど素人である私に対してもシュミッツ医師は親切に、どんな質問にも真摯に、私の問い答えてくれました。
次に、麻酔科医のアル=カヤット先生との面談です。先生には、主に生活習慣について訊かれました。飲酒や喫煙の習慣の有無や手術歴などです。アル=カヤット先生もとてもいい人で、我々兄弟の父親くらいの年齢のシリア出身の医師で、私たちを良い意味で我が子のように接してくれました。
この2つの面談は月曜日に行われ、手術は翌日の火曜日でした。自分としてはなかなかのスピード感でこんなに早くことが進展するのかといった感じでした。
そしてやってきた2020年5月26日火曜日。いつも通りベッドに横になってNintendo Switchでゲームをしていると看護師が部屋にやってきて言いました。
「はい、手術の時間ですよー」
ノリ軽っ!!
手術着に着替えさせられ手術台に乗せられ、兄に明治神宮で買ったお守りをもらい、リカバリールームに入っていきました。アル=カヤット先生が私の左手の甲に麻酔を入れる注射針を入れ、そのすぐ後にシュミッツ先生がやってきて、「大丈夫。最善をつくすからね」「きれいな切開跡にしてくださいね!」などと言葉を交わしながら先生はニコニコと去っていきました。数分後、私はストレッチャーに乗せられ、ドラマで見るような天井にあるいくつもの明るいライトが照らす手術室に入っていき、名前を聞かれ、アル=カヤット先生に、「もうすぐ眠くなるよ〜」と言われ、意識を失いました。