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【これが闘牛の世界】映画『孤独の午後』感想

第37回東京国際映画祭1本目に観た作品『孤独の午後』

アンドレス・ロカ・レイ、パブロ・アグアドなど人気闘牛士たちの日常生活を追ったドキュメンタリーだ。

闘牛というとスペインを代表する国技だけど、近年では動物愛護の観点から反対の声も多く、しばしば議論となってるニュースを見かける。
そんな本作は「闘牛という競技の是非」を問うことを目的にはしていない。
ただ観た後、心に残ったのは闘牛に対しての矛盾した感情だった。

そもそも牛が可哀想なのは当たり前。人間の娯楽のために傷めつけられて殺されてるから。劇中でも牛が殺された後、事務的に処理される場面が映し出され、その無情さを残酷に感じる人もいるだろう。
ちなみに劇中では血まみれの牛の姿や牛が絶命する瞬間が何度も映されるので、なかなかしんどいものがある。苦手な人は厳しいだろう。

本作で映し出されるのは競技場での闘牛士と牛の命を懸けたやり取り。
後は闘牛士が競技場まで向かう(立ち去る)までの車内とホテルの部屋の様子が少し映し出されるだけ。その様子が場所、時間を変えて繰り返される闘牛士の私生活や心情の吐露が映し出されることはない。

それだけの2時間だが迫力と緊迫感が凄まじくスクリーンに引きつけられっぱなしだった。

ここまで間近で闘牛の様子を見たことがなかったがその迫力は凄まじい。
闘牛士も牛を挑発したり自分の勇敢さを見せたりと観客を魅せるためのパフォーマンスをする。
あんなに後ろ姿を見せて大丈夫だろうかとハラハラした。生傷はたえないだろうし字通り命を懸けている。

仲間があれだけ誉めてくれると自己肯定感上がりまくりだろうな。

闘牛という行為を改めて残酷だと思う一方、闘牛士には賞賛を送りたくなるという矛盾した気持ちが湧き上がってきた。
映像として貴重というか、なかなか凄いものを見せてもらった。

個人的に気になったのは観客に男性が多かったということ。「お前は勇敢な戦士だ!」という声掛けなど、闘牛という行為の根底には「男らしさ」を試しているということ。本作からは暗にそうした批判も汲み取れるのではないか。

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ヴィクトリー下村
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