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不思議な縁と『カプリコン・1』の話
【長い前置き】
自分には2つ上の姉がいる。
姉は会社に通うのに立体駐車場を利用しているのだが、そこの管理人のおじさんと仲良くなった(仲良くなったと言っても遊ぶとかではなく世間話をよくする程度)。
そのおじさんだが結構な年齢ということもあって、身の回りの整理を始めたらしい。
で、おじさんは映画観賞が趣味で大量のDVDを所持しているのだが、このDVDをどうするか悩んでいた。
![](https://assets.st-note.com/img/1678600856822-mrZ40iBamh.png)
そこでわたしの出番である。
姉はおじさんに映画好きの弟がいるという話をしてたらしく「それなら弟さんにもどうぞ」と有難いことに何枚かDVDを譲ってくれたのだ。
DVDを頂いた時に知ったが、おじさんは恐らくレビューサイトとか利用せず己の直感で観る映画を選んでいた。
そのためか頂いたDVDは知らない作品ばかりだった(ほぼ劇場公開していない)。
![](https://assets.st-note.com/img/1678602780453-oOoRwgdCSN.jpg?width=1200)
このご時世、作品の評判をネットでチェックするのが当たり前になった。
そんな中で、おじさんはレンタル店でジャケットを見ながら「これは面白そうだ」と自分の感性と直感のみで作品を選んでいる。
自分もネットが普及する前はそういう方法で選んでいた。
だから懐かしくもあるし憧れを感じる選び方だ。
そんなおじさんから「これは自分のオールタイムベストの1本だから是非見て欲しい」と言わしめた作品。
それが『カプリコン・1』だった。
作品の存在は知っていた。
以前『ムーン・ウォーカーズ』という映画が公開されたとき、似てる作品としてこの作品の名前が挙がっていたからだ。
「観たい映画リスト」には入れていたが、観ないまま数年が過ぎてたので、その名前を見たことも驚いた。
しかもネットの評判に左右されるのではなく己の直感で観てきた人のオールタイムベスト。それは絶対に面白いに決まっている!
ということで鑑賞してみた。
![](https://assets.st-note.com/img/1678603650918-AjC1bw8E4H.jpg?width=1200)
【感想】
『カプリコン・1』は今から40年以上も前の作品だ。
物語は、火星への有人探査ロケットが打ち上げの段階に入っている場面から始まる。打ち上げ寸前、搭乗してた3人のパイロットは何者かに連れ去られてしまう。
彼らが連れ出された先にはロケットの開発に携わっていた博士がいた。
無人のロケットが打ち上げられる中、彼はロケットには重大な欠陥が見つかっていたことを話す。
本来なら打ち上げ計画は中止されるはずだが、そうすると開発資金の打ち切りなど今後の計画がとん挫する恐れがある。
なので火星に無事到着した演技をして欲しい。国民を騙して欲しいというのだ。
彼らが連れてこられた場所には火星をイメージしたスタジオがあった。ここで火星へ到着する様子を撮影し、火星からの映像として流すのだという。
![](https://assets.st-note.com/img/1678681941560-saVm15n6gw.jpg?width=1200)
世間を裏切りたくないと断るパイロットたちだったが、家族の命が人質に取られていることを知り協力を余儀なくされる。
この計画は裏で大きな力が働いているのだ。そして世界を相手にした捏造計画が始まる…というのが序盤のあらすじ。
前置きで述べた『ムーンウォーカーズ』がカメラの前で騙しきれるかというブラックコメディだったので、この作品にもそんなイメージを抱いていたら全然違った。
物語は国民を騙し切れるかという話から拡がっていく。
ジャンルで言ったらサスペンス・アクションだろう。全編シリアスなトーンで笑いはない。
最も胸を打たれたのは脱出した3人が荒野の真ん中で別れる場面。
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これまで苦楽を共にしてきた3人。
捕まれば恐らく殺されてしまう…本来なら感傷的にもなる場面だ。
だが、彼らの別れはシンプル(追手がすぐ迫ってきてるというのがあるが)。今の状況の理不尽さや不運さを嘆かず最善の行動を尽くそうとする。そこがプロフェッショナルだし渋くて格好良い。
感情を煽り立てるような音楽や演出もない。だからこそ彼らの別れの場面が余計に染みる。
この作品アクションもすさまじい。
この計画に不信を抱き、真実を追い求める新聞記者コールフィールド。
彼が何者かによってブレーキを壊された車で街中を暴走する場面は前半のハイライトだ。疾走感が凄まじかった。
さらに映画後半、コールフィールドたちが乗る複葉機がヘリコプターに追跡される場面。
時代的にCG技術はない。
観ていて思わずヒヤッとする場面がいくつもあった。今だったら危険すぎて撮影できないだろう。
![](https://assets.st-note.com/img/1678682094711-ZRe2RgWoZI.jpg)
最近読んだ記事に、日本で洋画がヒットしなくなった理由の1つはCGが主流となりアクションに迫力がなくなったからだという記事を見かけた。
読んだ時はそんなことないだろうと思っていたが、こうして生のアクションが凄まじい作品を見てしまうと納得してしまう。
確かにこの時代の作品にしか出せない迫力と感動がある。
今の作品を何十年後観た時、果たして同じように感動できるか分からない。
『カプリコン・1』想像以上に懐の深い作品だった。奇抜なアイデアだけじゃなくアクションも凄かった。一部でカルトと評されているのも良く分かる。
駐車場のおじさんに感謝したい。
映画好きあるあるだと思うが、「気になる映画」のままで観なくなってしまう作品は多くある。その中でこうして観れたのはおじさんのお陰だ。
この不思議な縁といい、きっとこの映画のことはずっと覚えているだろう。
【参考】
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