【あの思い出があるから生きていける】映画『ロボット・ドリームズ』感想
物語の舞台は1980年代のニューヨーク。
孤独を抱えるドッグは自分の友人としてロボットを購入する。楽しい時間を過ごし友情を深めていく2人だったが、ある夏の日、海水浴に行った先でロボットが動けなくなり…というあらすじ。
とても良かった。こんなほんわかした絵柄なのに心にグサグサ刺さってくる、強烈な切なさを残す映画だった。
人生は時にままならない、だけどそれもまた人生。
辛いけど「あの時確かに楽しかったよね」という思い出があるから前を向いて生きていける。この映画を観てそんな風に感じた。
物語も良いけど、設定や美術、音楽なども映画全体を取り巻く要素も素晴らしい。まず主役が犬とロボットという異種間コンビになっているのが良い。
2人の関係は友情でもあり恋人のようでもあり、ペットのようでもある。(そもそも2人の関係性は自然発生したものではなくロボットを購入しているし)
だからこそ観る人によってさまざまな感情を重ねることができる。そこが面白いし上手い。
監督のパブロ・ベルヘル曰くニューヨークという街はこの映画の「第3の主役」とのとこ。
その言葉の通りニューヨークの街並みが魅力的。しかも時代が80年代なのががなお良い。夏のビーチの懐かしい感じやカセットデッキとかいちいちノスタルジーのツボを突いてくる。
自分が特に好きだったのは街の人々の描写。
一人一人目で追いかけてしまうほど個性豊か。その場面のためだけに存在しているんじゃなくて、画面の外の生活も想像できるくらい細やかに作られているのが素晴らしい。
そして何といっても『September』。
もうこの映画のメインテーマで間違いないでしょ。これからこの曲を聴くたびにこの映画のことが頭によぎるようになってしまったよ。
無声映画&102分という短さもあって誰にでもお薦めしたい素晴らしい映画だった。上映劇場が少ないらしいけど、できるだけ多くに人に観て欲しいな。
この記事が参加している募集
読んでいただきありがとうございます。 参考になりましたら、「良いね」して頂けると励みになります。