好きな言葉(『孟子』編3) 迎合は畑仕事より疲れる
この言葉の意味するところは、「ちぢこまってへつらいの笑いをすることは、猛暑の下で田畑を耕すよりもずっと疲れる」というものです。
この言葉、古典の言葉の中でもかなり納得できるというか、身をもって理解できるものではないでしょうか。この「猛暑の畑仕事より疲れる」という表現が何とも痛快じゃありませんか。
さて、誰しも本心から笑わなかった、相手の機嫌をとるために表情をつくった、という経験はあるでしょう。
そうした行為は決して悪ではないのですが、重大な決断をおこなう際に本心を隠したり、いつもぎこちない態度をとればあなたの品格は見くびられてしまいますよ、という教えが前後の文脈からみて含まれています。
実際に孟子はこの場面で、君子を目指すのなら、へつらいの笑いなどをすべきではない、恥ずべきことだ。君子(立派な人格を備えた人)であるなら、安易な迎合はさけ、「浩然の気」(天地に恥じない豊かで広々とした気)を養うべきだ、と教えます。
「浩然の気」の内容は僕も正確には把握しきれていませんが、ここでは「自分の行いの正しさを確信している状態」としておきます。
なぜ人に迎合しなければいけないか。それは、端的には自分の考えを貫く自信がないからです。そして、そうならないように、日頃から自分の行いを正していきなさい、そうすれば心を疲弊させることをしなくていい、そういう教えだと思います。
だからこそ、自分の行いの正しさを確信し、たとえ人と違っても恥じないようになるために、時間をかけて他の人の考え、時には先人にも学びながら自分なりの行動の軸をつくる必要があります。これは大変ですが、結局は自分の心を守ることになるのです。