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市役所はどうやって職員のモチベーションを引き出すか~「動機付け要因」から考えてみた~


先日、SNSで「#noteの種」としてこんな投稿をしました。

地方公務員という職業は衛生要因が充実しているものの、動機付け要因に対する感覚が全体として極めて弱い職業ではないでしょうか?
という仮説を私は持ってます。
だから動機付け要因について気を配り、施策を講じる組織や管理職は、他と比べて部下のモチベーションにおいて差が開きそう、なんてことを考えています。
(衛生要因と動機付け要因という言葉は #ハーズバーグ の二要因理論から)

今回も様々な視点からコメントをいただき、記事を書くにあたって多くの示唆をいただきました。ありがとうございました。


◆衛生要因と動機付け要因

衛生要因と動機付け要因は、こちら。

【衛生要因】
会社方針や職場環境、給与、対人関係などを指します。これらの要因が不十分なときに、人は不満足と感じます(ただし、十分であっても満足感をもたらすものとは言えません)。
【動機付け要因】
仕事内容、達成感、承認、責任、昇進、成長の可能性などを指します。これらの要因が十分であるときに、人は意欲が高まります。(ただし、不十分であっても不満の原因にはなりません)。

こちらのサイトから引用させていただいています。


◆市役所は「動機付け要因」に対して無策!?

冒頭でご紹介した私の仮説を噛み砕くと。

役所って給与はちゃんともらえるし、福利厚生も整ってる(衛生要因は充足している)から、仕事に対して大きな不満は抱きにくい。「こんな仕事やってられねーよ! 辞めてやる!」とはなりません。

でもさ、仕事を頑張ったからって面白い仕事がもらえるわけでもなければ、組織や上司が認めてくれるわけでもないし、成果をあげれば昇進するわけでもない。仕事を頑張っただけ報われる実感がないんですよね。

こういう感覚を私は強くもっています。


でも、私は仕事を頑張っただけ報われたい!(笑)


それに、


(頑張っただけ報われるんだから)みんなで頑張ろうぜ!

みたいな感じで働きたい。これは結構本音。


私が個人的に報われたいというより、報われるからそのためにみんなでちょっと背伸びしながら頑張るのが普通っていう環境で働きたい。


そのためにできることを探しています。


その過程でふと思ったのが、市役所って動機付け要因に対してほとんど無策なんじゃなかろうか、ということ。


◆市役所の現場では

例えば……

◆頑張った職員に「報酬」的な仕事を任せているか?(デキる人に山のようにツマラナイ処理が集まっている)
◆成果を出した職員に早く責任と権限を与えているか?(成果を出しても年功序列には抗えない)
◆仕事で達成感を感じられる機会はどれだけあるか?(住民の幸せより説明責任と首長の意向が優先される)

公務員として働いていると、こういうことの具体例に心当たりがある人は少なくないのでは?

少なくとも私はこれらすべてについて心当たりがあります。


こういう職場の実態を目の当たりにしているから、市役所って動機付け要因に対してほとんど無策なんじゃなかろうか、と感じるんです。

(ちなみに、市役所だけが無策で民間はちゃんと策を講じているでしょ、という意味ではありません。民間のことは知らないけど、とりあえず市役所は無策っぽいなという意味です)



◆市役所で実施できそうな施策

では、具体的にどんなことが施策として講じ得るのでしょうか。

それは「無策なんじゃなかろうか」と私が感じたことの裏返しですよね。

◆頑張った職員に「報酬」的な仕事を任せているか?(デキる人に山のようにツマラナイ処理が集まっている)
◆成果を出した職員に早く責任と権限を与えているか?(成果を出しても年功序列には抗えない)
◆仕事で達成感を感じられる機会はどれだけあるか?(住民の幸せより説明責任と首長の意向が優先される)

これを裏返して。

◆頑張った職員に「報酬」的な面白い仕事を任せる(デキる人をツマラナイ処理をこなす便利屋にしない)
◆成果を出した職員に早く責任と権限を与える(年功序列を弱めて成果を出したらポジションで報いる)
◆仕事で達成感を感じられる機会を積極的につくる(説明責任や首長の意向は住民の幸せとセットで考える)

こんな風に職場を変えられたら、役所でも動機付け要因を強めることができて仕事を頑張っただけ報われるし、「(頑張っただけ報われるんだから)みんなで頑張ろうぜ!」みたいに働けるような気がします。


とはいえ、これを組織全体として、例えば総務当局などがマネジメントして施策として整備するのは時間もかかりますし、実現可能性も高くはありません。

だって、今、役所の中で職員の「内発的動機付け」について心を向けている人なんて、ほとんど皆無でしょう。(そもそもみんな、内発的動機付けとか知らないのでは……)


◆それぞれの立場でできること

組織として施策が講じられる見込みが薄いなら。

管理職やリーダーレベルでできること、一般課員のレベルでできることへと、それぞれ細分化・具体化して「施策」から「行為」のレベルで考えたらどうかと思うのです。

これも例示は再掲して比較しますね。

【組織としての施策】
◆頑張った職員に「報酬」的な面白い仕事を任せる(デキる人をツマラナイ処理をこなす便利屋にしない)
◆成果を出した職員に早く責任と権限を与える(年功序列を弱めて成果を出したらポジションで報いる)
◆仕事で達成感を感じられる機会を積極的につくる(説明責任や首長の意向は住民の幸せとセットで考える)
【管理職・リーダーとしての行為】
◆頑張った職員に「報酬」的な面白い仕事を任せる(デキる人をツマラナイ処理をこなす便利屋にしない)
◆成果を出した職員にチーム内で小さく責任と権限を与える(年次・職位に囚われず担当業務における裁量を大きくする)
◆仕事で達成感を感じられる機会を積極的につくる(業務と住民の幸せとの繋がりを納得できるよう対話する)

管理職・リーダーとしての行為は、組織レベルの施策とそれほど大きく変わらない、つまりは課内の権限でできることはたくさんあるということです。

但し、「報酬」的な面白い仕事を任せるためには、その職員にとって何が「面白い仕事」なのかを知る必要がありますし、裁量をどこまで大きくできるか、住民の幸せとの関係をどう納得してもらうかという点を考えると、部下の様子をよく見て、その言葉を聴いて、部下のことをよく知ることが非常に大切になります。

当然、管理職・リーダーにとっては負荷が高くなります。

とはいえ、既に人事評価制度などは導入されているわけで、人事評価制度が形骸化していないのだとしたら、上記のような行為は現時点で既に求められていると考えていいでしょう。


【課員としての行為】
◆頑張る。そしてどんな仕事に興味があるのか口に出す(ついでにデキる人からツマラナイ仕事を引き剥がして引き受ける)
◆成果を出す。日頃から小さな業務マネジメントに挑戦する(タスクやスケジュール管理、指示を先回りした対応)
◆意味づけする。仕事の意義を自分で積極的に見出そうとする(意味づけの材料として組織内外で積極的に関係者と話す)

課員としての行為は、いずれも管理職・リーダーの行為と対(つい)になっています。

管理職・リーダーが部下のことを見て、聴いて、知ることが大切なように、課員は見せて、伝えて、知らせることが大切
「積極的に知らせなくても管理職なんだから知っておいてよ!」というのは、自分の動機付けを管理職に委ねる危険な姿勢です。


また、これはFacebookの投稿にいただいたコメントを拝見してそのとおりだと思ったのが、「ほめる」ということの大切さ。(コメントしてくださった方は「ほめる達人」で、私も講座をお聴きしたことがあります)

上司は部下をほめて、部下は上司をほめる。
上司同士でも部下同士でもほめる。

互いにほめ合うチームなら、みんながやる気をもって働くことができて、生産性も上がり、しかも事業費予算は不要

自治体も省庁も内部でメッチャほめ合ってたら、日本は大きく変わると思います。(結構、本気で言ってます)



◆最後に

市役所って、衛生要因は充実していると思うんです。給与、福利厚生、職場環境とか。そこはあまり異論がないと思います。

でも、衛生要因って仕事に対して「不満を抱くか否か」に影響する要因なので、どんなに充実させても「不満はないけどさ……」どまりなんですよね。


しかも、衛生要因が充実しているために、「衛生要因を求める人」が集まりやすい業界になっている点も事態を難しくしています。
衛生要因を求める人は、「職場環境や労働待遇がどうであるかに敏感で、それによって意欲を左右されやすい」「仕事や人生一般の積極的価値について冷笑的な態度」『働き方の哲学』(村山昇))とも言われます。

民間企業などでは「衛生要因」を整えるのに必死で、「動機付け要因」にまで踏み込めない組織も多いのではないでしょうか。

一方で、市役所は大変恵まれた環境にあるにも関わらず、「動機付け要因」に対する施策があまりに無策なのはもったいない。少し厳しい言い方をすれば、「衛生要因」が充実しているからできるはずなのに、やっていない印象がある。


とはいえ「組織がやらないから始まらない」と言ってしまったら、それは「組織がやらなければ始まらなくても仕方がない」と言っているのと同義。

自分が必要だと思うことは、誰よりも自分が当事者のはず。

ブログでこうしてお伝えしつつ、自分が自分の場所でできることをこれからも捜し続けたいと思います。



※補足
ハーズバーグの二要因理論は、その発表から時間が経っていること、「衛生要因」と「動機付け要因」のどちらに区分すべきか不明、もしくはどちらにも当てはまる要因があるなど、この理論を現代のホワイトカラーの現場に持ち込むことには賛否両論あるようです。
ただ、要因が2軸あるよ、給与や福利厚生だけで職員のやる気は引き出せないよ、という意味において私はとても有効な考え方だと思ってご紹介させていただきました。

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