初めての正午の茶事
茶道を小学生の頃から習っている。
茶道のお稽古には、大体月1回のペースで通っている。日々のお稽古では、濃茶、薄茶、炭点前などなど、様々なお点前を習っている。
先日、お茶室を借りて一門で正午の茶事を行った。茶事は待合、席入りから始まって、初炭、懐石、濃茶、後炭、薄茶という一連の流れを行う。日々のお稽古はこの茶事から部分的に切り取って行っているイメージだ。
私の通っている教室は、先生のご自宅がお稽古場だ。私はこれまでお稽古場外のお茶会にはほとんど参加したことが無かった。今回の茶事で初めて、外のお茶室で正式な正午の茶事を経験することになった。
お茶室を借りて正午の茶事をやる、と決まったのはおよそ一年前で、そこに向けて一門で練習をしていこう、と決めて、コツコツお稽古を重ねた。一門の中にはベテランで茶事に何度も参加してきた方もいれば、私と同じように外のお茶会に参加したことがない方もいた。年齢もさまざまだ。みんなで一緒に目標に向かってお稽古していくのはかなり勉強になったし、みんなの結束力も強まった。
当日は着物を着た。集合時間は朝8時45分だ。
早朝に着物を着なければならない!自分で!
着物は職場で年に一度着る機会があって、毎年その時期になると練習して、なんとか自分で着ている。でもそのイベントが終わると、せっかく習得した着方は毎度忘却の彼方へ…。今回の茶事の前に、着物の着方を思い出すために一回だけだけど練習した。一回だけ…。
↑着物を着るときは毎回この動画を見ながら帯を結んでいる。この動画がないと私は着物は着られません😭神動画🙏
早起きして、このありがたい動画を再生しつつ、必死に着物を着た。奇跡的に一発で帯が結べて、予定の時間より余裕を持って家を出ることができた。神動画に感謝!
駅に集合して、ぞろぞろ歩いてお茶室へ。お茶室はビルの一室にあった。9時からお茶室に入って準備が出来るとのことだったが、入り口がなかなか見つからない。みんなでエレベーターに乗ったり降りたりしてうろうろして、途中別の階の真っ暗な営業前のお店の入り口に行ったりしつつ、やっと入り口を発見し、お茶室に入れた。
道具や懐石料理は全てお茶室が用意してくださる。先生が掛け軸やお花を持ってきていたので床の間に飾ったり、お点前の準備をしたりした。掛け軸の木箱が外箱にピッタリはまってしまっていて取り出せないアクシデントもあったけれど(大の大人が何人もありとあらゆる方法を試して取り出そうとしているのに全く出てこなくて笑ってしまった)、準備は整った。
茶事では客と、客を招く亭主、亭主の補佐をする半東といった役割がある。本来は茶事を通して役割は固定だけど、今回はせっかくの機会なので、いろんな人がいろんな役割を出来た方がいいだろう、ということでお点前ごとに役割を交代しながら行った。私は懐石の時に半東、濃茶の時に亭主、それ以外のときは客になった。
客は正客(1番目の客、他の客の取りまとめをする)や末客(最後の客、道具を返したり、亭主側との連絡役をしたりする)でない限り並んで座って周りと同じことをしていたら良い、といった感じで、少し気楽だけど、亭主や半東はやることがいっぱいあり、大変だ。でも大変な方が面白いし勉強になる。
懐石の半東は、お茶室のスタッフの方が用意してくださった料理を受け取り、運ぶ役だった。お茶室のスタッフの方はお茶室に一切入らずとも、頃合いを見て適切なタイミングで料理を用意してくださって、プロの技を感じた。わからないことも質問したら丁寧に答えてくださった。すごすぎる。かっこよかった。私はせっせと受け取った料理を運び、裏で一緒に運んだ亭主役の人とせっせと懐石料理を食べた。どの料理もとても美味しかった。
懐石が終わり、みんなが主菓子を食べて一旦席を改めたら(客に茶室の外に出てもらい、床の間の掛け軸を花に変えたりする)私がお濃茶を点てる番だ。
亭主は準備が出来たら銅鑼を鳴らして客に合図をして、お茶室に再度入ってもらい、濃茶が始まる。この合図の銅鑼は私が鳴らした。初めてこんな立派な銅鑼を鳴らしたのでかなりテンションが上がった!叩くとボワ〜〜〜ン……と重厚な音が響いた。
濃茶は何度も練習したけど、やっぱり本番は順番を間違えたり、どうするんだっけ?と思うことがしばしばあった。普段のお稽古場は江戸間の畳なんだけど、お茶室は京間で大きな畳なので、歩幅をいつもより大きくしないといけなかった。あと慣れない道具でお点前するのは勝手がわからなかったりした。でも普段と違うお茶室でお点前をやってみるのは新鮮で、いい経験になった。雰囲気も和やかで、まわりの人とこうじゃない、ああじゃないと話しながら進められたのも良かった(本来の濃茶は静粛にやらなきゃいけないんだけれども)。2杯お茶を点てたんだけど、分量を見誤り、うちの1杯目が多すぎて、2杯目が少なすぎた、など反省点もあるので、またいずれ挑戦したい。
濃茶、後炭の後は花月をした。花月は何人かで集まって折据というおみくじみたいなものを引いて、お茶を点てる人や飲む人、客の順番を決めるゲームみたいなお点前だ。
私は濃茶を飲んでいなかったので(私が点てたから)、早くお茶が飲みたいな〜と思っていたが、なかなかお茶を飲む番が回ってこなかった。2回目の花月でやっと飲めた。飲めたと思ったらその花月は2回もお茶を飲むことになった。花月は運ゲー!
花月はみんなでルール通りになるべく早くお茶を点てて飲んで、を4回しないといけない。大体1回の花月は15分くらいで出来るのがよしとされている。でも、花月の前にやっていたお炭点前がすごく上手くいっていて、お釜の中のお湯がボコボコ沸騰するくらいアチアチで、お茶碗もお茶もアチアチになってしまっていた。そんなアチアチのお茶を急いで飲むのが大変だった。でもお炭点前が上手くいっているのは素晴らしいことなので、アチアチなお茶でも嬉しい。お茶もお茶室のスタッフの方が用意してくださったもので、普段お稽古で飲んでいるお茶と違った味で、これもまた美味しかった。
花月を2回やった後、茶事は終了し、みんなで後片付けをしたり、記念写真を撮ったり、あいさつをしたりして、お開きとなった。
初めての茶事をして、これまでお稽古でやってきたお点前が点で、その点がやっとこの茶事をしたことで線として繋がったように感じた。通してやってみることで新しい発見や学びがあった。さまざまな年齢の同じ志を持った一門で、目標に向かってお稽古を重ね、本番を迎えられたのもなんだか感慨深かった。先生がご高齢になり、いつまでこの一門が続くのかは正直わからないけど、通える限りはお稽古を続けて、また茶事をしてみたい!