ある日突然、たった1人の親友がヤリマンになってしまった


突然ですが、あなたは友達が多いですか?

詩茉は本当に友達が少ないです。

あまり他者に興味を持たず生きてきた私にとって、
友達とは基本的にどうでもいい存在だったから…。



しかし、そんな私にもたった1人親友がいます。

その親友の名はあいり(仮名)

小学生の頃からの友人でよくケンカもしたけれど、
本気で本音でぶつかりあったことがあるからこそ
親友になれたのかもしれません。

あいりは真面目でのんびり屋で、
少し世間知らずな育ちの良いお嬢さん。

年相応の女の子らしいミーハーなところがあって、
そうかと思えば現実に対して冷めていたり、
大人しいのかと思いきや
突然大胆な行動に出る。

そんな不思議な子。





「最近さ〜、マッチングアプリで知り合った男の子と、会ったその日にエッチしちゃったんだよね。」


突然のあいりの言葉を聞いて耳を疑った。

そう…なぜならあいりは…

昔から2次元のイケメンキャラクターや
若手イケメン俳優のような
手の届かない存在が大好きな女だったのです!!!!


ミーハーな一面を持ちながら
どこか冷めているあいりは
いつもこう言っていた。

「三次元の男の人に興味が持てないんだよね…」

…と。(太字セリフの差を感じてください…)

推しは出来ても
彼氏どころか
好きな人すら出来ないと常に悩んでいた…!!!!!

決して異性との関わりが得意でない私ですら!
つい熱心にアドバイスをしてしまうほどの!
超奥手女子!!!!

そんな彼女が…!!!!!!!!!!!!!!

Oh…青天の霹靂…


詩茉の思考はぐるぐると駆け巡っていました。


実は彼女
本っっっ当に優しくて
良い子なのです。

小学生時代、破天荒で嫌われ者だった詩茉の唯一の友達でいてくれました。

転校しても引越し先から何年も手紙を書いて送ってくれました。


彼女について世間知らずと説明しましたが

昔からこの世のありとあらゆる穢れを知らない純真無垢の権化…

よって人を疑うということを知りません。


だからこそ… 

一切穢れのない世界で、
彼女がいつか心から愛する男性に大切にされるべきだ。

この世の絵に書いたような幸せというのは、
彼女のような優しい人こそが手にするのだろう。

…と

破天荒キッズだったあの日からずっと
詩茉は思っていました。

たった1人の大切な友人の幸せを
心から願っていました。


だからこそ…

どこぞの馬の骨ともしれぬ男に
その場限りの関係で
粗末に扱われるようなことがあってはならない。

穢されてはならない。

そんな彼女らしくないことをさせるわけにはいかない。

そう思って咄嗟にあいりの話を遮るように出た詩茉の言葉は

「よく知りもしない人とそういうの…良くないんじゃないの?」

…でした。


「………別にいいじゃん。せっかく男の子と話せるようになったんだからほっといてよ。」


刺激と魅惑の世界に足を踏み入れ、
今まさに人生の春を謳歌しているあいりにとって
私の言葉はきっと
お節介で煩わしいものだったに違いありません。


私は何の言葉も返すことが出来ず
気まずい空気が流れました。

友人を否定してしまった罪悪感がのしかかります。

…それからというもの
あいりは私と会う度に
毎回違う男と身体を重ねた話をしました。

ワンナイト試合程度だった話の内容は
日に日に良くない方へエスカレートしていき、

穏やかだったそれまでのあいりからは
誰も想像ができないような
刹那的で危険な行動も増えていきました。


ちょうど家族と離れ
一人暮らしを始めたばかりの頃だった彼女は

刺激を得ることで寂しさを埋めたかった

と言いました。

私は親友としてどうしたらいいか分かりませんでした。



彼女の行動の裏にある寂しさと

根本的な問題を

取り除いてあげることができない

と分かっていたからです。

…かといって 

肉体に凸(おちんちん)がついていない私では、

その男達のように
彼女の身体と心の凹を一時的にさえ
埋めてあげることもできません。




向かおうとしている危険から遠ざけるように
彼女にとって耳の痛い言葉をかけるべきなのか…

それとも

彼女の全ての選択を肯定し
たどり着く結果を見守るべきなのか…


詩茉はただただ悩みながら

黙って話を聴くことしかできませんでした。





『どんなに仲が良かったとしても、女友達というものはライフステージの違いで簡単に疎遠になる。』

昔から愚痴のように母から聞かされていた言葉の意味を
この時まで理解していませんでした。

危険な春というライフステージを迎えたあいりを目の当たりにするこの時までは…


昔からよく知っているはずのあいりが 
私の全く知らない人になっていくような感じがして
一抹の寂しさを覚えました。




私は軽蔑していたのです。

ある日突然ヤリマンと化してしまったあいりを…。

そして

そんな風に変わり果てた親友の姿を
受け入れられない自分の器の小ささを…。


それから数ヶ月後

あいりと再び会うことになった。


また絵に描いたような良くない展開へ進んでしまっているのではないか…

喫茶店へ入り恐る恐る彼女の向かいに座りました。


すると彼女は、

アプリで最近は誰にも会っていないということ

今は好みの異性の写真を見るために使っているということ

気に入った人がいたらいいねしているということ

彼女にとってどんな魅力的な異性がいるのかということ

…などについて語りだした後

なぜか私に使い方の解説を始めたのでした。

一時、さぞご両親が号泣するであろうという危険レベルまで到達していたあいりの行動が落ち着いたことに安堵しつつ

その時交際していた人がいた私は
そんな世界の話を他人事として聞いていました。

「カッコイイ人たくさんいるから、
   詩茉ももしフリーになったらやってみなよ!」

そうあいりに言われ、

恋人がおらずマッチングアプリをする
IF世界線の詩茉を想像してみましたが

相手がどんな人かもわからず、
嘘だらけかもしれないプロフィールしか知らない状態から始まり、
スペックを値踏みするように物色するorされる…

そんなプロセスがまるでモノの売買みたいで受け入れ難く
ましてやネット上ですら人見知りする詩茉が異性にいいね♡をつけるだなんて

いや、ハードルが高すぎる…

すべてのプロセスが面接みたいになりそうで怖いし

最初から下心が見えてしまうことが恥ずかしい…。

(※あくまで偏見と精神的引きこもり傾向強め人間の個人的意見)

と思った詩茉は一瞬で

「無いな。」

という結論に至り、

その後は
菩薩のような表情であいりの話を聞いていたのでした。



はい!
めでたしめでたし!



そう…このときの詩茉は思ってもみませんでした。

まさか偏見に塗れていた自分がこの数ヶ月後に
出会い系サイトで1人の男性と繋がり、
セックスしてしまう
だなんて…。



「ヲタク系OLが経験人数75人のヤリチンと出会い系サイトで知り合い、恋に落ちてセフレから彼女になった話」

第4話へ続く

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