宇宙を模(かたど)る天文時計、機械仕掛けのモナドとデカルトのオートマタ(自動人形)の照応
今は通信の時代
離れたところにいる友人、知人と連絡をとるときに以前は電話しかなく、電話が普及するまでは手紙でした。
今はスマートフォンでSMSや様々なメッセンジャーアプリが使えますので、ますます通信=コミュニケーションに費やす時間が増えている気がします。
対話と理解
コミュニケーションは友人や同僚との対話やチャットだけではなく、たとえば読書は著者との対話である、という話もあります。ですが、このコミュニケーションはリアルタイムで返事を聞いて応答するといったことはできませんので、著者はなるべく詳しく、わかりやすく自身の言いたいことを書いています。
言いたいことをきちんと伝えることができれば、自分のものの見方や考え方を理解してくれるひとが増えていきます。
表現と手法
自分の考えや主張を表現する手段は学術論文や雑誌の出版、寄稿ばかりでなく小説やマンガ、詩や絵画、音楽など様々な形式、ジャンルがあります。
最近ではAIでマンガや動画を作ることができますので、技術や技法の意味合いはどんどん変わっていきそうです。
主張や見解、あるいはアイデアは、それにあった表現手段を選びます。
不安や疑念を表現する絵画、音楽もありますが、言葉でなければうまく伝わらないこともあるでしょう。
なにか考えがあるとき、物語や寓話を使って説明すると説得力があるのは理由があると思います。
また、IT技術者たちは、プレゼンの際に実際にプログラミングして、動くものを作って見せることでアイデアをアピールするという話も聞きます。
創作と模倣
すべての物語は聖書にある(書かれている)、あらゆる創作(物)は模倣である、といった言葉もあったと思いますが、作品を創り出すときに、そのもとになるもの、原型は既にあるものから生み出されるのかもしれません。
現在が(未だ)コミュニケーションとその制御の時代とすれば、過去に時計、天文時計の時代と言われた世紀があります。
天文時計は、天体の運行を示す、いわば宇宙を模倣し、表現するものでした。
宇宙(天文)時計
シュトラスブールの天文大時計は当時の技術の結晶といえるものかもしれません。その巨大さだけでなく、精巧な仕組みによって「時」が刻まれ、天体の運行が表現されるさまはあたかも人が宇宙と『時間』を完全に支配したかのような印象を与えたのではないでしょうか。
Strasbourg astronomical clock シュトラスブールの天文大時計(英語)
ニュートンは幾何学を「測量術」と考え、ものの動きを計測するためのものであると述べています。
それは物体の動き、天体の運行を測定できるものとしており、計測すれば、将来にわたって天体の動きを把握できます。すなわち、未来は予測できるものということになります。
天体の動きが再現される天文時計とは、現在の「時」だけではなく、未来を正確に表現する機械なのです。
機械仕掛けの霊魂
ニュートンと同時代のライプニッツは霊魂から精神と物質を構成する要素を考え、それを彼自身のモナドとして発展させます。
『時間』、宇宙、モナドは機械仕掛けの比喩で語られるようになり、時計のように動くものとして説明されます。
そして同じように動物や人体についてもバネと歯車で動くものになっていきます。
※訳書では、「ル・メートル」となっていますが、「ラ・メトリー」が正しいと思われます。
Digesting Duck 消化鴨(英語)
模倣(コピー)と創造
天文時計は宇宙のコピー(模倣)でした。
宇宙を模倣して創り出すことができたら、人間(生命)も同じように模倣して作りだすことができるはずです。
『時間』、宇宙、モナド、人間は、すべて目に見える部品で構成されており、分解してバラバラにしたあと再び組み立てることができるので、必要なものはその設計図(Plan)と工具(Tool)、そして技術者(エンジニア)です。このとき既に生命の設計図というゲノム(Plan)と工具としての遺伝子編集技術(Tool)は工作者の視野に入っていたといえます。
ではなぜ、宇宙と人間(生命)を作ろうとするのでしょう。
もう一度、「フランケンシュタイン」を読んでみてもいいかもしれません。
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