【読書感想文】GOTH／乙一　※ネタバレ注意

ようやっと感想文をアップしていきます。
といっても以前に読んだものや、もう一度読み直したものが多いので、紹介に近いかもしれません。
それでもよろしければ、目を通してやってください。

本日の作品はこちら。
最初はどの作品にしようか悩みましたが、自分が学生時代に一番影響を受けたと言っても過言ではないものにしました。

GOTH 夜の章 (角川文庫)

GOTH 僕の章 (角川文庫)

乙一さんの名作短編集【GOTH】
購入した当時はハードカバー版となっていて、１冊にまとめられたものでした。
学生の身としては決して安くない買い物だったんですが、それでも読んでみたいと思わせてくれた作品です。

『残酷』を追い求める二人を巡るヒューマンホラーとミステリー

乙一さんと言えばホラー色が強かったり、またファンタジーチックな作品も多く書かれてますが、この作品に関しては所謂【結局人間が一番怖い】というジャンルに近いかもしれません。
どす黒いとも言える感情を隠しながら日々過ごす主人公と、彼と同じく残酷なものを好む美少女の森野。
そんな二人を中心に物語が動くので、当然ながら残忍でグロテスクな描写が多くなっています。
そんな理由でそんなことを？と思える場面も多数です。

【暗黒系】は主人公と森野の人となりを紹介するような内容。巷で話題になっている殺人事件に関する『あるもの』を手に入れ、そこから二人が事件に巻き込まれていくといったお話です。ミステリーに近いかな？

【リストカット事件】はハードカバー版のサブタイトルにもなっていました。所謂倒叙もので、犯人視点と主人公視点で物語が進んでいきます。

【犬】は文字通り犬が深く関わっているお話。犯人の境遇には少し同情してしまいますが、最後の方でひっくり返されます。「それってあり？」と思ってしまうかも。

【土】は一番乙一さんっぽい話かもしれません(個人的感想)これも倒錯ものになりますが、何故かわかりませんが泣きたくなりました。ただ、登場人物の心理が一番わからない作品でもあると感じています。

【記憶】は森野の過去を掘り下げたお話で、ミステリーではよくある手法のトリックが出てきます。過去の真相を知った時、森野の見方が変わりました。彼女も辛いんだろうなあ、と。

【声】は姉を殺された妹が主人公。これも最後の方まで見事に騙されました。ミステリーでもありますが、ハラハラするサスペンス要素が強いかもしれないです。

これぞサイコパスの典型とも言える主人公

この作品で一貫して言えるのは、「主人公こそ真のサイコパスである」ということだと思います。
残酷なものが好きという点はもちろん、犯人の家に不法侵入したり、凶悪な殺人犯に盗んだナイフで挑んだり…しかも罪悪感を持つということも一切ありません。
まあ趣味が『葬式に出ること』という時点で尋常ではないですね。
でも、(動機は不純でも)犯人を捕まえようと探偵みたいなことをしたり、恋人が死んでしまった彼氏の願いを叶えたり、褒められた方法ではないにしろ救いを与えたりもしています。

残忍で残酷、でも読まずにはいられない

こういう主人公って今までいなかったので、読んだ当時はホントに新鮮でした。同時に「ここまで残酷な話ばかりの短編集でもいいんだ」と衝撃を受けた作品です。主人公やほとんどの登場人物の考えは一ミリも共感できないですが、強烈な印象を擦り付けられた感覚でした。感動もない、学びもない。でも何度も読みたくなります。乙一さんの作品でも特に好きな作品の一つです。

次はもう少し上手く書けるように精進します。ではでは、また次の投稿で。