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【読書感想文】監禁依存症/櫛木理宇 ※ネタバレ注意
本日の読書感想文はこちら。
作品の内容が内容なので、読まれる際には注意してください。
タイトルからして不穏な空気しかないこの作品。
『依存症シリーズ』もしくは『浜真千代シリーズ』と言われている連続小説の第三弾です。
悪徳弁護士に降りかかる、冷酷な仕打ち
物語の元凶とも言える人物は、小諸という弁護士です。
この弁護士、悪徳という言葉が非常に的確、どころかもっとひどい人物。というのも、弁護を引き受けるのが性犯罪を犯した人、つまり加害者限定なんです。
その時点で既に嫌悪感を抱いてしまう人も多いと思いますが、被害者へかける言葉がひどすぎて最終的には憎悪すら感じてしまうレベル。それで結局加害者は無罪となってしまうのですから、言っては悪いが恨まれても仕方ないともいえる人物です。
そしてそんな小諸に起きるのが、一人息子が誘拐されてしまうという事件です。しかも自分は海外出張中で、家には妻しかいない。身代金まで要求され、いくら酷い小諸と言えど予断を許さない状況です。
この場合、誘拐犯は誰かと想像した時、当然過去の性犯罪被害者あるいは関係者を思い浮かべると思います。警察もそう判断し、該当するような人物を洗いながら息子を探し出そうとします。
けれどこの事件、ただの誘拐事件ではありません。
後ろで手を引いているのが、あの浜真千代なので。
極悪非道の悪魔か、それとも勧善懲悪の救世主か
このシリーズの黒幕が、浜真千代という女性です。
まあやることなすことすべてが残忍で容赦なし。心も身体も平気で抉ってくるという、とにかく恐ろしい人物です。
『殺人依存症』までは、特にその側面が強かったように思いますが、『残酷依存症』と今回の『監禁依存症』に関しては、相手にしている人物が人物なので勧善懲悪にも見えてきてしまいます。
ネタバレになりますが、その相手とは『性犯罪者もしくはそれに関与した人』なのです。言えば恨みを抱かれていてもおかしくない人物たち。
けれど恨みを抱いても、普通は復讐なんて怖くてできません。その被害者たちの無念を晴らすように、浜真千代は加害者たちを追い詰めていきます。
決して褒められた行動ではないし、やったところで被害者たちに感謝される訳でもない。でも浜真千代は躊躇うことなくやってのけます。
しかも相手の心理を読んだり掴んだりするのがものすごく上手く、いつのまにか仲良くなったり距離を縮めていたりするのです。過去にトラウマを植え付けられた少女でさえも、彼女に魅入られてしまうのです。
因果応報を超えたその結末
息子が誘拐されたとのことで、その結末を想像する人もいると思います。
実際、私も最悪の結果を想像してました。
ですが、この物語はそんなことでは済まなかったのです。
結論から言うと、息子は無事に保護されました。
特に怪我もなく、家族も一安心…という訳にはいきません。
ターゲットは、あくまでも弁護士の小諸なんです。
その小諸が弁護してきた人たちのことを考えると自ずと結末が浮かぶかもしれませんが、更にその上を行く仕打ちが彼を待っていました。
描写があまりにもグロテスクで、吐き気すら覚えそうでした。
ただ、この事件が収束に向かっていくときの小諸の捨て台詞を読んだ時、「お前が言うなよ」ってまず思いましたよね。
なんというか、ここまでされないとわからんのかって言ってやりたくなります。
そして最終章には、ちょっとしたどんでん返しも待ってます。
こう来ると、因果応報というか最早呪いなのでは。
気分が悪くなりそうなのに読んでしまうこのシリーズ
残忍でグロテスクな描写が非常に多いので、好きでない方は耐えられないかもしれません。
でも性犯罪者が暴かれ裁かれるシーンを、心待ちにしてしまう気持ちにもなってしまう。それほど被害者が抱える心の傷がひどく、加害者の反省のなさが浮き彫りになっているのです。
この作品だけでも十分おもしろいんですが、シリーズものということもあって前作品2つを読んだ方が楽しめるかもしれません。登場人物が被っていたりするので、より嵌ってしまうこと間違いなしです。
ではでは、また次の投稿まで。