【読書感想文】残酷依存症/櫛木理宇 ※ネタバレ注意
本日の読書感想文はこちら。
人気の【依存症シリーズ】第二弾。
突然監禁された男たちはどうしてそんな運命を辿ったのか。
中学時代からの友人3人を襲う恐ろしき声
お調子者の渉太、リーダー格の航平、イケメンの匠は友人同士。エスカレーター式の中学で初対面を果たし、大学生になった今でも遊ぶなど親しい関係を続けていた。同じイベントサークルにも所属し、その日もサークル名義で借りた海辺の家で飲み会を開いていた。渉太はコンビニに出かけ、買い物を済ませて戻ってきたのだが、直後強い衝撃と共に意識を失ってしまう。
次に目を覚ました時、渉太は自分が置かれた状況に絶叫する。下着一枚にされ、水がない風呂の浴槽に手足を拘束されて押し込められ、挙句足の小指を切断されていたのだ。激痛に悶える渉太だったが、明らかに場違いなノートパソコンがあることに気付く。そこに映るのは、同じく借家の別の場所で拘束された二人の姿だった。そしてそのパソコンから、誰かの声が聞こえ得てくる、「鎮痛剤と抗生剤が欲しければ、選べ」。選ばれた人物は、耐えがたい罰に襲われる―――
最初からこっちが痛くなるような描写がてんこ盛りです。もう痛い、痛い…特に足の指なんて状況を想像しただけで身震いしてしまいます。でもこれは、ただのデスゲームではありません。
女子大生の殺害遺棄事件が発生。そこから掘り起こされる許されざる過去
その頃、警察では事件の捜査が開始されていた。女子大生が殺され、人気のない場所で見つかったのだ。木戸紗綾という名前で、激しい殴打の末に心不全で亡くなったという。後輩とひと悶着あったり、バイト先でちょっとトラブルがあったり、警察はそちらの線から洗っていくことに。そこで繋がってきたのは、彼女が中学時代の話だった。家も裕福で華やかな生活を謳歌していた彼女だったが、実はいじめの首謀者として知られていたのだ。そこに加わったのが、元カレである航平とその友人である匠と渉太、また航平が引き入れた里見という男子だった。彼らが行っていたのは、まさに鬼畜とも言える所業の数々だった。大学になっても変わらず、悪化の糸を辿る一方であった。
そこでようやく、自分たちが拘束されている理由に気付く。敵討ち、そして復讐…声が告げる、「ミキのかたきだ」。でもそれが誰なのか、渉太は思い出せなくて―――
痛々しい描写はもちろん、渉太たちのやってることが酷すぎて憤りを覚えます。条件が揃えば、やらない選択肢はない…こういう加害者って、どうしてこういうことが平気で言えるんですかね。
鍵となるのは、貝島道哉という生徒。そして、世界の復讐者
中学時代に挙がった名前で、貝島道哉という男子生徒がいた。彼は渉太たちと同じグループにいたのだが、ある日いきなり学校に来なくなった上自殺してしまったという。綺麗な顔立ちでモテる雰囲気だった彼が、一体何故?
捜査を進めていくと、彼が集団リンチにあったという噂を耳にする。もしかして、渉太たちが行っていた所業の被害者が関係しているのでは。
次第に真相へと近づく警察の元に、一本の電話がかかってくる。浦杉という元警察の人間で、紗綾の殺人事件を知って連絡をしてきたのだ。浦杉は浜真千代という女性の仕業ではないのかと疑っていたが、以前の彼女の対象等からその線は薄いのではと警察は考える。しかし、本当にそうなのか。
浜真千代はこのシリーズに一貫して登場する女性で、一作目では何の罪もない人たちを監禁して殺害するというおよそ人間とは思えないことを平気でやっていました。ですが、今回ターゲットにされたのは真逆の人たち…つまりれっきとした加害者グループという点が大きく異なります。ただの猟奇殺人犯だと思っていた彼女のイメージが、少し変わることでしょう。
ミキの正体を知った時、見えていたものが違う色を帯び始める
道哉の家族が、彼に起こった哀しき過去を語る。両親にも祖母にも可愛がられた道哉だったが、とある秘密を抱えていた。しかしその秘密が知られた時、すべての悲劇の元凶となる事件が起きてしまう。そして明かされるミキの正体は、今まで映っていたものをすべて塗り替えていく。
一方、渉太たちはもう満身創痍の状態だった。目を潰され、耳を食いちぎられ、体力はなくなり…しかし、声は容赦なく語り掛ける。貝島道哉のことを、最初からすべて話せと。
ここで伏線が回収されていくのですが、まあ本当に読んでいて怒りが沸いてきます。浜真千代がやっていることはもちろん許されませんが、それ以上に渉太たちが酷い。渉太はものすごい他責思考、匠は親の財力しか取り柄無し、航平は短絡的…結局悪いことをしているという自覚がなく、反省もしていません。
あと、猫好きの方はちょっと注意して読んでください。私もそうですが、しんどいシーンがあるので(あいつら本当に許さん)
悪魔であり、救いの手。彼女をどう見るかは読み手次第
何度も言いますが、浜真千代がやっていることは完全にアウトです。でも無差別的な前作と違い、今作はそのターゲットも鬼畜なので、明らかに見え方が異なります。現に彼女は、被害者家族の協力も得ているシーンもあるのです。彼らにしてみれば、自分が出来ないことをやってくれる救世主とも言える人物なのでしょう。
条件が揃えば、やらない選択肢がない。こんな見事にブーメランが返ってくることもないと思います、でも最後まで本気の謝罪がなかったのがちょっとモヤモヤしますが…
痛いシーンや気分悪いシーンが盛り沢山のシリーズですが、内容は間違いなくおもしろいので、気になる方は覚悟して読んでみてください。
ではでは、また次の投稿まで。