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夏の夕暮れ、エロティカ・セブン

フロントガラスの遥か先にあるのは、連なる大小の積雲と濃淡交えた青色の派手な共演。
西へと落ちゆく太陽が、強烈な陽射しで雲を割る。
映し出される彩雲のふもとに、『天使のはしご』と呼ばれる光芒が真直ぐ降り注ぐ。

そんな光景にちらちら目をやるわたしは、『エロティカ・セブン』を鬼リピしながら、国道沿いのラーメン屋を探していた。

今日の用事をコンプリートしたご褒美は、ラーメンだ。
そのはずなのに、『エロティカ・セブン』に聴き入ってたら、ラーメン屋をいくつも飛ばしてしまう始末。

こういう、よくわからないシチュエーションにいる自分、つい愛してしまう。



サザンの曲は、訳あってほとんど聴かない。
唯一の例外、それがこの『エロティカ・セブン』。

お若い方はご存知ないであろう、そして、若くないわたしも実は存じ上げない「悪魔のkiss」というエロティックなドラマの主題歌。


言葉のひとつひとつはそこまで露骨ではないのに、エロスを見事に織り成す組み合わせが芸術的。
そんな歌詞が軽快なアップテンポに乗ってて、もう大好きなのだ。

「我はエロティカ・セブン」
「君もエロティカ・セブン」

それにしても、このエロティカ・セブンはいったい何者?
ググってみたら、媚薬と判明。
なるほどなるほど、なるほどすぎる。

ちなみに、エロティカセブンと打っているのに、『エロティカセブンイレブン』と変換するこのスマホはいったい何奴?


この楽曲のストーリー、わたしにはよくわからない。
ただ、世界観は凄まじい。
繋がりはよく見えないけど、恋と愛と欲と狂乱の場面がカードに描かれ、次々と捲られてゆく。そんなイメージ。


「魅せられて
地獄の果ては恋路の都
堕ちたアダムとイブか
やいばを剥いた夏の淫獣けだもの
真面と狂気のヘブン」


ここ、一番痺れて止まない。
情欲まかせのおふざけや、
浮わついた衝動じゃない。
真面マジな愛。
愛して愛して愛しすぎて、だからこそ、人の底から湧き出る狂気。
それを、重すぎず、後ろめたさもなく、罪深くもなく変態でもなく表現するこの一説。
惚れ惚れしてしまう………
こういう言葉の魔術師になりたい。




脳内でそんな解釈に興じているまに、ラーメンを逃したままスカイツリーが見えてきた。
愛着はさほどないけど、あの姿が見えてくると、僕らの街まで無事にたどり着いたと安堵する。



夏の盛りの解放感にまかせて、今夜もきっと誰かと誰かがどこかでエロティカ・セブン。
脳内でその光景をドライブ中の空と同じくらいにチラ見しながら、わたしはひとり家路の途中でラーメンを求め続けた。




ラーメンのために入った
ショッピングモールの屋上にて















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