短文「下卑た人間の浅慮」

 何もしなくても、上がる。
 そう生きれたらどれだけ楽だろうか。

 歩みを止めて怠惰に身を委ねる。それだけで景色は変わり、自らを様々な世界へと誘う。
 思考を止めようが、口を開こうが、手を動かそうが、足場は変わらない。

 自分の足で踏み締める喜びを失った。一定に流れる映像に慣れると、変速が齎す豊かな発見を見落としてしまう。
 運転の楽しさは、自らが柄や操縦桿を握ることで初めて感じることが出来る。

 文明の発達は人が進化したことに起因するが、文明の利器は人を衰退させる一因となる。

 私は凝り固まった股関節を動かした。

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