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【小説】あと23日で新型コロナウイルスは終わります。
~果たして来るのか⁉~
とうとう約束の日が来た。⬛日の火曜日午前10時だ。朝の申し送りでも、もちろんこの話題は話された。
9時45分、50分、……、
みんな平静を装っていたが、⚫⚫さんは来るのか、来るならパートナーは一緒なのか、上の二人の子はどうなっているのか。
今までの⚫⚫さんの行動から、5分前や10分前行動をとるとは思えなかったが、みんな身構えた。
10時。
とうとうその時間がきた。
ウィーン。
自動ドアが開いて入ってきたのは!入ってきたのは別の患者さんだった。
10時5分、10時10分、……。
看護師の一人が待合室を一瞥した後、受付スタッフに小さな声で話しかけた。
「⚫⚫さんは来ていますか。」
「まだです。」
受付スタッフも小声で返した。
「わたし、電話をかけますね。」
その看護師はそう言うと、⚫⚫さんのカルテと子機を持って、奥の部屋に消えた。
その看護師は戻ってくると、別の看護師と受付スタッフと事務に声をかけた。
「⚫⚫さんに電話をかけましたが、出ません。何度もかけると嫌がられるので、また時間をおいて電話します。折り返し電話があれば、保留にして、すぐに看護師に声をかけてください。」
その後、その看護師は、10時30分、11時、11時30分と1回ずつ電話をかけた。
これは、⚫⚫クリニックとしては想定内であった。医師と看護師たちが相談して、“10時来院”と決めたのもそのためだ。こういう人は必ず時間を守らないから、午前や午後の診療終了間際には、来院を約束しない。
午前の診療受付が終わる12時を目前にして、受付の電話が鳴った。
「はい、少々お待ちください。」
受付スタッフがそう言って振り向くと、待ち切れなかったのか、看護師がすぐそばにいた。
「⚫⚫さんです。」
「わかったわ。」
再び、看護師が奥の部屋へ消えて行った。
「うん、どうした? 寝てたか? 疲れちゃった? 妊娠中だと疲れちゃうよね? 来れそう? 来てほしいんだよね? ⚫⚫さんと赤ちゃんが心配だから。うん、うん。ちょっと待ってね。先生に確認してくるから。」
そう言うと看護師は、子機とカルテを持って、診察室に行った。院長が他の患者さんをちょうど診終わった後であることに安堵した。
「先生、少しいいですか。⚫⚫さんの件なんですけれど、……。」
その看護師は簡潔に、⚫⚫さんの今の状態を院長に告げた。院長は、
「わたしが電話に出る。」
と言った。⚫⚫さんと院長が話し合って、ゴゴイチである今日の15時に来院することを約束した。
新型コロナウイルスが終わるまで、
あと23日。
これは、フィクションです。
◆自殺を防止するために厚生労働省のホームページで紹介している主な悩み相談窓口
▼いのちの電話 0570・783・556(午前10時~午後10時)、0120・783・556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)
▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570・064・556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)
▼よりそいホットライン 0120・279・338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120・279・226(24時間対応)
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