15年ごしのプロポーズ。
これは、「旅する日本語」の応募作品です。
「已己巳己し、已己巳己、
意外や意外、已己巳己し、已己巳己。」
「なーに、それ?」
「四字熟語だよ。今度、調べてみるといいよ。」
幼なじみの男の子は、鞄をクルクル回しながら去って行った。
*
「今度の日曜日、大切な話があるんだ。」
幼なじみの男性とは、付き合って8年、東京と大阪の遠距離恋愛になって3年だ。
正直、最近は会話も少ない。
だから、別れ話かもしれない。
*
「已己巳己し、已己巳己、
意外や意外、已己巳己し、已己巳己。」
「互いに似ているもののたとえなんでしょ?私達二人のことを言ってたのよね?」
「あれから調べてくれて、覚えていてくれたんだ。」
「ええ。」
「じゃあ、回文になってることは?」
「カイブン?」
「下から読むと?」
「シキミコイ、シキミコ、イガイヤイガイ、シキミコイ、シキミコ。……あっ!『君恋し』?」
「一生、ずっとそのつもりです。」
そう言うと彼は、私に指輪と新婚旅行と書かれたパンフレットの束を差し出した。
以上、規定400字以内の応募作品でした。
※「已己巳己」(いこみき) ・・・(字形が似てることから)互いに似ているもののたとえ。
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