京極夏彦「死ねばいいのに」読書感想文
タイトルに惹かれて、どんな内容なのだろうとずっと気になっていた作品。
いざ読み始めると止まらなくて、最後まで熱が冷めることなく読了しました。
1人ずつ話を聞いていくにつれてだんだん真相に近付いていくのと、ケンヤが放つ一言で自分の本心に気付く人たちの反応が何とも人間臭くて爽快でした。
自分は周りの人たちのせいで不幸で何もかもどうしようもないと嘆くけど、本当は死にたくない人たち。
様々な災難に見舞われて客観的に見ればかなり不幸な境遇であるにも関わらず自分は幸せで、ずっと幸せでいたいから死にたいと言ったアサミ。
読み終わった後、私はどちらに近いだろうと考えました。
バツ2のアラフォーである私は、世間一般からすると不幸なんだろうと思いますし、実際にかわいそうだと言われたこともあります。
だけど当の私は今までの人生で今が1番幸せだと感じていて、日々心穏やかに過ごしています。
それでも希死念慮があって、生きるのが辛くて死にたいというのではなく、ふとした時にもう十分満たされていて幸せだから死んでもいいかなと思ってしまいます。
―それなら、死ねばいいのに。
もし実際にそう言われたら、本当に死に直面したら、アサミのように笑って死ねるのでしょうか。
それは恐らく無理だと思います。
死ぬのはこわいし、きっとそうなれば必死で逃げようとする。
ということは、私は本当はまだ生きたいんだな。
タイトルを見た時のイメージとは裏腹に、そんなことに気付かせてくれた作品でした。
京極夏彦さんの作品は今回初めて読みました。
百鬼夜行シリーズも気になっているので、また近いうちに読んでみたいと思います。