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「ヴィオラ母さん」 ヤマザキマリ

 産後、入院中に読んだこの本が面白かった。

 ヤマザキマリさんは、漫画「テルマエロマエ」で名前を知っている程度だったけど、数年前に聴いたラジオでのおしゃべりで一気に好きになった人。

 彼女のおしゃべりに頻出するヴィオラ奏者の母、リョウコさんの破天荒なエピソードが満載のこの本は、第二子を産んだばかりの私にとっては、育児本として心に響いた。

 お嬢様育ちだったリョウコは、音楽で食べていくという夢を捨てられず、単身で東京から北海道に渡り、設立されたばかりの札幌交響楽団の一員となる。親に勘当され、夫に先立たれ、身寄りのない北海道でシングルマザーとして娘2人を育てながら、音楽に情熱を捧げ続ける。

 子供たちを近所の家に預けて演奏旅行へ出かけてなかなか帰ってこなかったり、今の時代だとえ~っと思うようなエピソードもたくさんある。でも、少なくとも娘であるマリさんは「こんな母親でよかった」と思っていて、母親を心底愛している様子が文章から伝わってきた。

リョウコは、子育てを通じて周囲の人からどう評価されるかなんて全く意識していなかったし、自分の子供たちの育て方や進路について、周りの親子と比較しているような気配も、周りと足並みが揃わないのを不安がっているような様子も一切なかったが、それがどれだけ我々子供にとって気楽なことだったか計り知れない。

「ヴィオラ母さん」 ヤマザキマリ

 SNSを通して他人の子育てがすぐに垣間見えてしまう今、他人からの評価を気にしないことや、他人との比較をしないことのほうがずっと難しい。でも、育児をしていて思うのは、子育ての悩みもやり方も、結局は目の前にいる子供と自分との問題。スマホをいくらスクロールしても正解は見つからない。私もこのリョウコマインドを大事にしたい。

 リョウコのように、子供がいても自己中に好きなことを追いかけていいんだ、と勇気をもらえると同時に、親になっても変わらず突っ走れる”好きなこと”があることをうらやましいとも思った。

 いわゆる育児本じゃないけど、いろんな姿の親がいていいんだと励まされる一冊でした。

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