花粉症薬の主要な3つの成分を比較する:クラリチンの解説
花粉症はいつから始まったのか
これは私が昭和生まれで、私が知らないだけかもしれませんが、私の周りや世間で「花粉症」と騒ぎ出したのは、私が社会人になってしばらくしてからだったと思います。
そもそも私の子どものころは現在の熱中症を日射病と呼び、学校の教室や体育館にエアコンなどありません。夏は窓を開けて暑さをしのぎ、冬は石油ストーブで暖を取りました。
それが30年以上経った現在で気候は大きく変わりました。エアコンは一家に一台が一部屋に一台となり、エアコンは今では昔のテレビのような扱いになりました。私の周りにはいなかった花粉症も、最近では子どもの花粉症も増えているようです。
スギ花粉を始めとした花粉の飛散量が年々増えていることが花粉症増加の原因だといわれています
成人してから花粉症になる人もいますが、免疫機能が成熟していない子どものときから花粉を吸い込むことで、免疫機能が過剰に働いて「感作」が成立すると花粉症が発症します。
花粉症が発症する「感作の成立」とは
感作の成立は以前に「花粉症が発症するメカニズム」でも解説しましたが、今回は別の資料からまとめたものを改めて解説します。
1.侵入
花粉が鼻や目の粘膜に侵入します。
2.貪食
マクロファージや樹状細胞など免疫細胞が花粉を「異物」と判断すると、花粉の中にある「抗原タンパク質」を細胞内に取り込みます(貪食)。
3.分化誘導
免疫細胞は取り込んだ細胞を他の免疫細胞に情報伝達する「抗原掲示」を行うことで、ナイーブT細胞はエフェクターT細胞に「分化誘導」して活性化します。
4.IgE抗体
エフェクターT細胞はB細胞に指示を出し、B細胞は「形質細胞」に分化して花粉に対するIgE抗体を産生します。
5.感作
産生されたIgE抗体は肥満細胞と結合して「感作の状態」を作ります。花粉が体内に侵入するたびにIgE抗体と結合した肥満細胞は増えていき、やがて許容量に達します。
6.感作の成立
感作の状態が許容量を超えると「感作の成立」となり、次に花粉が体内に侵入したときに備えて鼻や目の粘膜のすぐ下に感作の状態で待機します。
7.ヒスタミン
感作の成立後に花粉が体内に侵入すると、花粉の中の「抗原タンパク質」と肥満細胞上のIgE抗体が結合して、肥満細胞から「ヒスタミン」などの化学物質が放出されます。
ヒスタミンは受容体と結合すると鼻や目の知覚神経を刺激してくしゃみや鼻水、目のかゆみなどの「アレルギー症状」が発症します。
花粉が体内に侵入すると免疫細胞がIgE抗体を産生し、IgE抗体は肥満細胞と結合して「感作の状態」を作ります。花粉が毎日、毎週、毎年と体内に侵入するたびに感作の状態は繰り返され、やがて「許容量」に達すると花粉を体外へ排出するためにアレルギー症状が発症します。
当然、子どものころから花粉を吸い込んでいれば、許容量に達する「感作の成立」は早くなり、花粉症に罹患する人は増えていきます。
感作の成立は花粉を体外へ排出する防御機能なので、感作の成立ができてしまうと医療機関での治療が必要になります。現在の花粉症を緩和する市販薬は「第二世代」と呼ばれる抗ヒスタミン剤が主流で、抗ヒスタミン作用と抗アレルギー作用が主な働きです(詳細は後述します)。
クラリチンの成分その他詳細情報
クラリチンEX 3292円(参考価格)
成分
1日量1錠中、ロラタジン10mg
用法用量
15歳以上1回1錠、1日1回を食後に、毎回同じ時間帯に服用してください。
※用法用量の注意点
花粉など季節性アレルギー性鼻炎による症状に使用する場合は、花粉飛散期に入って症状が出始めたときなど、早めの時期から服用すると効果的です。
効能効果
花粉、ハウスダストなどによる次の症状の緩和:
鼻水、鼻づまり、くしゃみ
してはいけないこと
・本剤を服用している間は次の医薬品を使用しないでください:他のアレルギー用薬、抗ヒスタミン剤を含有する内服薬、エリスロマイシン、シメチジン。
・授乳中の人は本剤を服用しないでください。
相談すること
・次の診断を受けた人:肝臓病、腎臓病、てんかん。
・気管支喘息やアトピー性皮膚炎など他のアレルギー疾患の診断を受けたことがある人。
・妊婦や高齢者。
・服用後、次の症状が持続または増強がみられたとき:
口の渇き、便秘、下痢、眠気。
その他ご不明な点は医師や薬剤師にご相談ください。
花粉症薬の主要な3つの成分の比較
花粉症薬の第二世代抗ヒスタミン剤として次の3つの成分を解説しました。
・クラリチン:ロラタジン
・アレグラ:フェキソフェナジン
・アレジオン:エピナスチン
第二世代の抗ヒスタミン剤はアレルギー性鼻炎に特化して花粉症に使用されることが多く、脳内に移行しにくいために眠気や集中力の低下が起きにくい成分ですが、添付文書を読むと違いが多々ありましたので、それぞれの成分の違いを比較してみます。
してはいけないこと
・クラリチン:
エリスロマイシン、シメチジンとの併用禁止。
・アレグラ:
水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム含有の制酸剤、
エリスロマイシン、アパルタミドとの併用禁止。
・アレジオン:
エリスロマイシンとの併用は禁止されていないが、肝臓病の診断を受けた人は服用禁止。また、アレジオンのみ服用後の乗り物や機械類の運転禁止。
相談すること
・クラリチンのみ肝臓病、腎臓病、てんかんの診断を受けた人は相談。
用法用量
・クラリチン:
1日1回、1回1錠を食後に毎回同じ時間帯に服用。
・アレグラ:
1日2回、1回1錠を朝夕に服用。食後の記載はなし。
・アレジオン:
1日1回、1回1錠を就寝前に服用。食後の記載はなし。
各成分の働き
抗ヒスタミン剤は主に3つの働きがあります。
・抗アレルギー作用:
花粉とIgE抗体が結合することで肥満細胞から放出されるヒスタミンを抑制します。
・抗ヒスタミン作用:
肥満細胞から放出されたヒスタミンが受容体と結合するのを阻害して、アレルギー症状を緩和します。
・抗炎症作用:
ヘルパーT細胞が放出する物質に刺激された好酸球から放出される炎症物質を押さえ、鼻づまりなど鼻炎症状の悪化を抑制します。
各成分の主な作用です。
・クラリチン:
抗アレルギー作用、抗ヒスタミン作用。
・アレグラ:
抗アレルギー作用、抗ヒスタミン作用、抗炎症作用。
・アレジオン:
抗ヒスタミン作用、抗PAF作用(抗炎症作用と同作用)。
効きそうにみえるアレグラも添付文書をよく読むと一長一短で、アレグラでよく聞くのが朝夕の1日2回の服用なので飲み忘れが多いことです。
花粉症対策は市販されている多くの薬の中から自分の身体に合った薬を見つけるのと同時に、免疫力を上げることで花粉症の症状が軽くなることが研究で報告されています。
花粉症薬の服用開始は飛散開始前後から、免疫力は今から生活習慣を見直して、整腸剤で腸内環境を整えて万全の状態で花粉シーズンに臨みましょう。