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医師のための読書不案内

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なにしろ不案内なもので
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2022年2月の記事一覧

【ないようである、かもしれない 発酵ラブな精神科医の妄言】星野概念

ゆっくりと心がほぐされるような、著者は精神科医で、執筆や音楽活動も行い、お酒や発酵が大好き。対話も、作詞も、酒造りも、醸成されるまでじっと「待つ」「耐える」ことができたら、静かで豊かな充実感が待っているのだそう。精神医療における患者さんとの関わり方、訪問診療で考えていることなども参考になりました。 著者のオリジナル曲である『平熱大陸』はとんでもなく癒やされるのでぜひ聴いてほしい。 あと、BRUTUSで連載している「本の診察室」を書籍化してほしいと願っているのは私だけでしょ

【医療者が語る答えなき世界】磯野真穂

エピローグだけでも読んでほしい著者は医療現場を研究フィールドとしている文化人類学者。医療現場の「不確かさ」に光を当て、医療者の肩越しの視点から見た世界をリアルに描いている。立ち止まることが許されない医療者たちがスルーしている問題に切り込めるのは、文化人類学者だからこそできる仕事である。

【仮病の見抜きかた】國松淳和

医学書ですが、なんと小説。医師や患者の「気持ち」が生々しく書いてあり、診療の場で起きるすれ違いが見事に描かれています。優れた臨床医でありながら、こんな小説が書けるとは・・・ヤンデル先生は驚きすぎて首が離脱したようですが、私も同じくやられました。 患者さんとの向き合い方というのは、なかなか指導してもらえるものではありません。しかし、この本を通して、國松先生が患者さんのどこに注目しているのか、どんな言葉をかけているのか、あるいは、どんなことにもやもやしているのか垣間見ることがで

#11 mRNAワクチンの衝撃|ジョー・ミラー

最強の夫婦世界初の新型コロナウイルスワクチン開発に成功した、ビオンテック社の共同創業者である夫婦の物語です。臨床医から研究者になり、起業して、腫瘍免疫学の分野でmRNAを基盤とする治療薬開発を進めていました。新型コロナウイルスが世界で認知されてから、わずか一年弱という驚異的なスピードでワクチンが開発された裏には、これまでの成果の積み重ね、駆け引き、そしてなにより夫婦の確固たる科学者としての信念があったことがわかります。シビレました。

#10 独学大全|読書猿

たのもう、たのもう。 勉強法の本はあまたありますが、これ〈一台〉あれば事足りるでしょう。 「無知くん」と「親父さん」のかけあいによって、独学の玄人になるまでの道筋が示されます。 学ぶことを諦めるときは、すなわち現役引退のときだと思います。 本を読むとは様々な読み方で繰り返し再読すること。 すぐ参照できるところに置いておきたい価値ある書です。