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医師のための読書不案内

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なにしろ不案内なもので
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記事一覧

#146 総合診療・家庭医療のエッセンス 第2版|加藤 光樹

初版から12年ぶりの全面改訂。 「卓ジェネ」と発売時期が重なり、スルーされているかもしれないが、専門研修のおともに「卓ジェネ」とともに推したい。 「7章 “癒し”と患者-医師関係」と「8章 医師の多彩な立ち位置を拓く ― 客観的な第三者から注意深い当事者へ ―」は研修時代には勉強していなかった内容で自分のOSがアップデートされた感じ。 医師の立ち振る舞いが患者の物語に与える影響は大きく、その共同編集者であるという視座が新たに得られた。 最近B氏がプライマリ・ケアの醍醐味

#145 「卓越したジェネラリスト診療」入門|藤沼 康樹

完全に出遅れたけど通読。 これは完全にスルメ本だ。 付箋でベタベタにならなかったのは、「55歳からの家庭医療」を愛読してきたのと、割と最近の講演を何度か拝聴していたからだろうか。 自分の診療を省察するお供として何度も読み返したい。 さてこのベストアルバムから特に気に入った曲をはっておこう。 今日も待ち時間に脅されながらの外来になってしまった。 EGPへの道のりは長い。

#144 病気であって病気じゃない|尾久 守侑

久しぶりに尾久先生の著作を拝読。 やはり尾久先生の文章は自分の好みだ。 何度も一人で笑ってしまった。 「偽物論」と似たような読後感といったらいいだろうか。 いやもうずいぶん前だったし内容もほとんど覚えていないのでただの読んだアピールかもしれないというかただの読んだアピールだ。 DiseaseとIllnessの両面からアプローチせよというのが本書のメッセージだと受け取った。 このあたりにはハッとさせられた。 次は『器質か心因か』(積読)だな。

#141 緩和ケア・コミュニケーションのエビデンス|森田 達也

ゆる言語学ラジオの読書論の会がよかった。 読書メモをとる、他人に説明することで知識の定着を図る、全部読もうとしない。 自分も実践していることが多くてちょっとニヤける。 水野さんの影響でやたら版元に意識が向くようになってしまった。 さて今回は安定の医学書院より森田先生の著作。 緩和ケアにまつわるコミュニケーションを扱っている。 リフレーミングの話なんだが緩和ケアに限らず参考になることは多い。 先日まさにこの種の悩みを相談してきた後輩に本書を紹介。 自分の読書メモを見返そうと

#137 POCTハンター|増井 伸高

非専門医ハンターシリーズはどれも非常に実践的でよい。 引用文献も多く通読すると賢くなったように錯覚してしまう。 POCTに特化した本は初めてで付箋だらけになってしまった。 救急外来をする人みんなにおすすめ。

#133 総合内科流 一歩上を行くための内科病棟診療の極意|森川 暢

通読したら付箋だらけで恥ずかしくなった。 専攻医時代にほしかった。 周りにすすめよう。

#124 聞く技術 聞いてもらう技術|東畑 開人

最近は読書が捗らず昔の読書メモを見ながら復習がてら書いている。 売れている書き手で著作も多いがちゃんと読んだのはまだこれだけ。 コミュニケーションの本だと思ったら、ケアの本だった。 専門知と世間知の話が興味深い。 専門知が世間知の限界を補い、世間知が専門知の暴走を制御する 両者のせめぎあいで複雑な事情を複雑なまま理解しようとするのが心のケア ケアの主役は民間セクターである(アーサー・クラインマンのヘルス・ケア・システム) 家庭医療の実践で民間セクターに歩み寄っていくこ

#120 死亡直前と看取りのエビデンス 第2版|森田 達也・白土 明美

施設職員向けに勉強会をすることになり再読中。 わかっていることとわかっていないことを噛み砕いて伝えたい。 多職種連携はお互いの立場を知るところからと自戒を込めて。

#117 心理的安全性のつくりかた|石井 遼介

来年度は心理的安全性の高い職場づくりを目指したいと考えている。 ということで何年か前に読んだ本書の読書メモを読み返してみた。 心理的安全性とは、対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だと思える度合いのこと。 べき論や「正しさ」が強調されすぎると、脱線が許容されない雰囲気となり、心理的安全性の低下を招くのではないかと感じている。 「絶対的な正しさは存在せず、自分のフィルターを通してしか現実は見られないからこその協働なのではないか?」とメモってあった。 チームで診療する強

#116 正解を目指さない!? 意思決定⇔支援|阿部 泰之

ACPの勉強会を担当することになってある先生から借りた本。 著者は哲学とかも勉強されているようで内容が深い。 現場でのもやもやが丁寧に言語化されている感じ。 表題の「正解」というのがなかなか難しい。 そもそも「正解」があるのかという問いには、確固とした正解があるのではなく自分の頭で正解だと確信する行為が正解を選び取るということと答える。 正解ははじめからその人の中にあるのではなく話あいの過程で創られる。 これがACPの本質だと。 意思決定においては、「納得感」を指標にしよ

#113 実践SDH診療|近藤 尚己・西村 真紀

以前西岡先生の講演を聞いて感銘を受けて講演料をとおもって購入した。 執筆者が多いので印税なんてたかが知れているというかないかもしれないが。 積読になっていたが、院内学習会の司会を頼まれて慌てて読んだ。 スティグマとは、ある属性を持つ人にネガティブなレッテルが貼られている状態。 スティグマを負った人は自己評価を攻撃し自尊心低下や受診中断につながる。 医療者は「中断するような患者」というレッテルで差別を強化していく。 (無意識的な)偏見や言動が同じような困難を抱えた人をさらに

#108 MBA問題解決100の基本|グロービス 嶋田 毅

コミュニケーションの難しさに直面しているときに、 本書の「コミュニケーションの齟齬」というコラムが目に止まった。 言ったは聞こえたでない 聞こえたは聴かれたでない 聴かれたは理解されたでない 理解されたは同意されたでない 同意されたは納得されたではない 納得されたは行動がとられたでない 激しくうなずく。 重要なのは相手の納得がえられるか否かだけど、 そこまでの道のりは案外長い。 これを呪文のように毎朝みんなで唱えれば、 もう少し穏やかな職場になるんじゃないかし

#106 「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?|上村 紀夫

著者は産業医でコンサルティングファーム代表の方。 離職のメカニズムとその対策について書かれている。 マイナス感情の類型は、心身コンディション、働きやすさ、働きがい。 この順番に下からピラミッド構造をつくっている。 働きがい低下などで不満はあるけど転職しない人・できない人のことを「ぶら下がる人」と呼ぶらしい。 ぶら下がる人が増えることは離職者が増えることよりも組織の活力低下を招くため問題となりやすい。 働きやすさを改善する施策はむしろぶら下がる人の増加を招く。 いろいろ心

#105 これからの「お看取り」を考える本|名郷 直樹

昨日は第2回の読書会があった。 課題本はこちら。 読了が一年半前で手元に原本もないので読書メモを元に話した。 外来で「カツアゲ」してたことにハッとしましたとか。 関連本とかの紹介もあっていい感じだった。 一人では得られない体験になる。 で本書は課題本に推薦したけど落とされた方。 N氏が辿り着いた境地を、 一般向けに語ったのが課題本で、 ヘルスケアプロバイダー向けに語ったのが本書だ。 ヘルスケアプロバイダーは2冊セットで読もう。 次回は弱さとか正しさとかマイノリティと、