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理屈や分別を超えて、どうしようもない恋のお話 2013年4月19日
自称「中二の女」神垣です。
久々に恋愛小説を読みました・・・
69歳の女と58歳の男の
いわゆる“老いらくの恋”のお話。
男性作家なら、58歳の男と46歳の女といった設定でしょうが
還暦前の男と、およそ一回り上の年上の女性との恋。
この分野、いつか誰かが書くだろうと思っていましたが
この人が斬り込んでくるとは思いもしませんでした。
岸惠子。
齢80歳の女優であり、作家。
でも、今なら分かります
この人でないと書けないよなぁ、と。
今日、ご紹介するのは
人生の終盤を迎えた男と女の恋の行方を描いた
小説「わりなき恋」です。
結論から申しますと
恋に落ちれば、誰しも中二。
年齢なんて関係なくて
恋愛が始まった途端、どんな大人も
中二レベルに逆戻りして
喜んだり、悲しんだり、妬いたり、戸惑ったりする様は
変わらないんです。
ただ、中二だったら
帰りの校門の前とか、下校途中の公園で待ち合わせて、
毎日のように一緒に過ごすことができたのに
大人になれば
仕事とか、家庭とか
他に気にしなければならぬものが増える分
一緒に過ごす時間は極めて限られてくるわけです。
その合間を縫って、重ねる逢瀬が
必要以上に気持ちを盛り上げるものだから
それでなくとも、カウントダウンが聞こえ始めている
自分の人生の残り時間の少なさに焦り、
濃く深く、ハマっていってしまうのでしょう。
しかも、気持ちだけでなく
体の関わりも生じるわけですから
抜き差しならなくなるのは火を見るより明らか。
この老いらくの恋のお話を
架空の夢物語ととるか
リアルな大人の恋の参考書とみるか
は人それぞれかもしれません。
でも、かつて
「赤ちゃんがいても、バリバリにきれいで素敵なママ」が
一気に増殖していったように(内面的に素敵かどうかは別として)
「孫がいても、バリバリに恋愛するきれいなバ~バ」が
今後は増えていくと思うんですよね。
(女は一生、ちやほやされたい生き物ですから)
この小説のように
69歳の女と58歳の男の恋愛というケースは
そう多くはないでしょうけれど
恋愛に関して
やる気満々な熟年男女は増えこそすれ
減ることはないと予感します。
だから、岸惠子さんが突破口を開いた以上
今後も60代、70代の女性を主人公にした
「鮮烈な愛と性」の小説は増えていくのじゃあないでしょうか。
でもねぇ、
一読者としては
男をきれいに描き過ぎ
と思いました。
還暦前で下半身に問題ないなんて
ちょっと現実的でない気がします。
だって、50の坂を迎える前後で
いわゆる「男の更年期」に苦しむ男性の知り合いを
何人、間近で見てきたことか。
海外を飛び回り、責任ある立場で
アグレッシブに仕事をする還暦前の男性が
不眠とか、更年期とかと無縁とは
リアルに想像できないんですよねぇ。
だから、そんなにカッコよく描かずに
もっとダメダメなところも小説に書けば、
より男性読者のハートもつかめただろうに
と思ってしまいました。
でもまぁ
パリ行きのファーストクラスで出会い
男が女にアプローチを重ねていくプロセスは
これぞ恋愛小説! という感じで
やっぱり、よかったです。
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蛇足ですが
タイトルの「わりなき恋」は、理屈や分別を超えて、
どうしようもない恋を意味します。
(VOL.1936 2013年4月19日配信 メールマガジンあとがきより)