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オスグッド病のコンディショニング

参考文献
1)中瀬順介:Osgood-Schlatter病の病態と治療.臨床スポーツ医学.2024: 41, 28-32.
2)永野雄伸:Osgood-Schlatter病予防のためのコンディショニング.臨床スポーツ医学.2024: 41, 34-38.

オスグッド病について

オスグッド病は、Osgood-Schlatter病と呼ばれる。

1903年に、アメリカ人放射線医のRobert B Osgoodとスイス人外科医のCarl B Schlatterがそれぞれ発表した脛骨粗面の骨端症である。

ジュニアアスリートにとって頻発する成長期の障害といえる。

発生率は10〜20%と報告されており、競技レベルが上がるほど発生率も上昇する。男児では12歳前後、女児では10歳前後に発症することが多い。

オスグッド病の危険因子には、大腿四頭筋のタイトネス上昇足関節背屈制限(下腿三頭筋のタイトネス上昇)などが報告されている。

下肢の長軸方向の成長の約70%膝関節周囲で生じるため、大腿四頭筋とハムストリングスのタイトネスが急激に増加する。

オスグッド病のレビューにおいて、最も強く推奨されている治療法は、患者教育(活動の制限)であり、疼痛が強い時期には活動を制限することも重要である。一方で、安静期間や許容される活動レベルについて明記された報告はない


疼痛の原因

アライメント

膝蓋骨の上方編位や脛骨の前方編位がないかを左右比較にて確認する。
また座位や立位での骨盤後傾や円背は後方重心の誘因である。

膝蓋骨の上方編位
脛骨の前方編位


骨盤後傾による大腿四頭筋の緊張メカニズム


関節可動域

膝関節伸展・屈曲制限、骨盤前傾+股関節屈曲制限、下肢伸展挙上制限は、大腿四頭筋の過剰な収縮に関与する。

大腿直筋のタイトネステスト

また足関節背屈制限は重心の後方化を促し、大腿四頭筋の遠心性収縮やトルク増大による脛骨粗面への牽引ストレスを誘発する。


筋力

徒手的にでも、大腿四頭筋やハムストリングスの筋力を測定する。大腿四頭筋とハムストリングスの筋力の比率を示すH/Q比が低下すると発症しやすい傾向にある。


動作

大腿四頭筋の過活動を確認するには、スクワット動作の観察が有効である。

側方から確認する際に、体幹前傾、骨盤前傾、股関節屈曲、下腿前傾が十分に行えるかを確認する。

この動作を正確に行うためには、体幹・下肢の関節可動域だけでなく、筋力や筋の協調性が必要になる。

良好なスクワット


不良なスクワット


具体的なアプローチ

安静時や夜間時の疼痛が消失したタイミングでスポーツ復帰可能であると考えられる。活動制限中も患部に負荷がかからない範囲で、関節可動域や筋機能などを改善するように努めることが重要である。


不良アライメントへの対応

膝蓋骨の上方編位は、大腿四頭筋のタイトネスによって生じている可能性が大きい。継続的な静的ストレッチが有効である。


関節可動域

大腿四頭筋の柔軟性改善は必須である。またハムストリングスや下腿三頭筋のタイトネスは骨盤前傾不全や下腿前傾不全を招くため十分なストレッチが必要である。


不良動作への対応

椅子からの立ち上がり動作を反復させることで、良好なスクワット動作を獲得できることが多い。


スポーツ現場におけるチェックポイント

オスグッド病の発症予防には、リスク因子となりうる身体状態をいかに改善するかが重要となる。以下にスポーツ現場において容易に確認できる5つのポイントを示す。

① 膝関節周囲の熱感
② 脛骨粗面の圧痛
③ 大腿四頭筋のタイトネス
④ 足関節背屈制限
⑤ 身長の伸び度合い

練習ごとに確認するのは現実的でないが、ジュニアアスリートそれぞれに目を向け対応していく必要があると考える。


まとめ

オスグッド病は成長期に生じやすいスポーツ障害である。

疼痛で悩むジュニアアスリートは多い一方で、コンディショニングや治療法については十分に認知されていないケースが多い。

「活動制限」も漫然と時間が過ぎるだけでは、本人や保護者は納得がいかず、医療との信頼関係を失いかねない。

本人のみならず保護者・指導者も、「ストレッチ」や「全身の協調運動」の重要性を認識し、治療に協力してもらう体制づくりが重要である。

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