【中断された展覧会の記憶】 作:原田マハ モダンより
この間読んだ原田マハさんのモダンの最初の短編。
それが、【中断された展覧会の記憶】。
『展覧会の中止』は、ほとんどないらしいがそれが現実に起きた。
そう、丁度10年前に起きた東日本大震災がきっかけで。
それがこの物語の大枠である。
舞台は、アメリカ人画家のアンドリュー・ワイエスの展覧会が催された"ふくしま近代美術館"。
そして、1948年にワイエスが描いた『クリスティーナの世界』がメインの作品となっている。
この作品を読んで、まず最初に頭を掠めたのが「このコロナ禍でも、このお話の中の美術館と同じ境遇の美術館があるのではないか」ということである。
もし、本当にそうだとしたら、、、。
それほど、このコロナというものは大きな影響を私たちに与えているのだと改めて実感した。
だからこそ、今この物語の力を強く感じた。
"どんな暗闇の中でも、前へ進む力が人間にはある"
そう訴えかけているかのように思えた。
画面の中の『クリスティーナ』と『現実の人々』
作品の中で、「クリスティーナは自分で福島に来て、自分でおうちに帰る。」という言葉がある。
作品は、意思を持っている。
強い意思を。
それは、人間も同じ。
自分の意思で前を向いて歩いていける力があるんだ。
絵画に負けないくらい強い力を人間も持っているのだ。
そう、負けない。
絶対に負けない。
この短編を読んだ後に、『クリスティーナの世界』を調べてみた。
画面の中のクリスティーナは、背中しか描かれていない。
だけど、強い意思をそこに感じ取った。
そして、これをマハさんは伝えたかったのかと涙が出そうになった。
丁度、自分も苦しい立場にいたからこそ、この絵画が強烈だった。
負けない。
私は負けないのだ。
絶対に。
原田マハ『モダン』より「中断された展覧会の記憶」
p.9〜52