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滋賀県産ウイスキー

デザイナーつぼたです。私は滋賀県出身で東京を中心にデザイナーとして活動しています。滋賀県の実家に帰ると毎回父と一緒にウイスキーを楽しんでいます。父はバーボン系(米国ケンタッキー州)が好きで、私はスコッチ系(英国スコットランド)が好きです。そんな滋賀県&ウイスキー大好きの私が、今回は滋賀の蒸留所&ウイスキーを紹介します。


滋賀県の環境

県面積の1/6を占めている琵琶湖は約400万年の歴史を持つ世界有数の古代湖であることをご存知でしょうか。滋賀県は森林面積は約20万ヘクタールで県面積の約50%を占めており、周囲360度の囲んでいる山々から約450本の流入河川(そのうち117本が一級河川)があります。約450本の流入河川がありながら流出河川は瀬田川の1本。その自然に恵まれた環境も相まって琵琶湖は大昔から今まで消えずに残っています。

そんな緑と水が豊富な滋賀県には、1532年創業の山路酒造『七本槍』で有名な冨田酒造など、昔から続く酒造が今でも多く残っています。それに対して2025年現在、ウイスキー蒸留所は2ヶ所しかありません。ですが、その2つの蒸留所が面白い。今回はその2ヶ所の蒸留所を紹介いたします。

滋賀のウイスキー蒸溜所2ヶ所

1、長濱蒸溜所

所在:滋賀県長浜市 朝日町14-1
稼働:2016年〜
会社:長浜浪漫ビール株式会社
長濱蒸溜所は蒸溜器3基という日本最小クラスの蒸溜所です。親会社である長浜浪漫ビール株式会社はその名の通り、ビールから始まった会社で、1996年に近畿では3番目となるクラフトビールの製造を開始しました。蒸留所としては、その丁度20年後である2016年に稼働を始めました。

長濱蒸溜所で使用している蒸留機は形状も非常に珍しいらしく、夏は暑く冬は寒いという寒暖差のある滋賀県長浜市の気候下で熟成していることも相まって、なかなか他では味わうことのできないウイスキーです。旧七尾小学校の校舎を利用した『AZAI FACTORY』という建物でウイスキーの熟成をしていたり、面白い取り組みもしています。

現在、代表銘柄である『AMAHAGAN(アマハガン)』は全国の酒店で購入することができ、近年知名度は高まっています。また『AMAHAGAN』や『シングルモルト長濱』は、世界最高峰のWorld Whisky Awards(WWA)、International Wine & Spirit Competition(IWSC)、東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)などの賞で何度も金賞を受賞しています。

・AMAHAGAN シリーズ

・種類:ブレンデッドモルトウイスキー
・材料:モルト
永濱蒸留所の中で最も人気で有名な銘柄です。海外モルトをベースに自社モルトをブレンドしたワールドブレンデッドモルトウイスキーです。現在主に5種類のラインナップ(エディションNo.1 / エディションNo.2 / エディションNo.3 / エディション 山桜 / ワールドモルト エディション ピーテッド)があります。『カウボーイビバップ』や『神の雫』などのコラボや「復興応援チャリティーボトル」といったウイスキーファン以外も幸せになれる商品づくりを行なっています。

『AMAHAGAN(アマハガン)』はNAGAHAMA(長濱)を逆から読んで付けられた名称で、長濱のシングルモルトであると誤解させないようなネーミングになっているそうです。響きが格好いいですよね。ボトルデザインも王道のデザインという感じでとても好きです。私のお気に入りの銘柄のひとつで、常備しています。

・シングルモルト長濱 シリーズ

・種類:シングルモルトウイスキー
・材料:モルト
蒸留所名を冠した代表銘柄です。本場スコットランドが認める3年の熟成期間を経たシングルモルトです(日本では法律で定められていません)。長濱蒸溜所のコンセプトである「一醸一樽」をもとに樽を厳選していて、バーボンカスク、シェリーカスクなど原酒を各1樽、シングルカスク&カスクストレングスでボトリングされていているため、長濱モルトの風味を直に味わうことができます。2022年には『シングルモルト長濱ボルドーワインカスク#1564』IWSCでアジア最高賞を、受賞しました。

山崎や竹鶴のような筆文字のロゴで日本らしさを感じるラベルでありながら、ちょっと攻めたグラフィックのものもあって、飾りたくなるデザインです。背が低くカクカクしたボトル形状は『フロム・ザ・バレル』を彷彿とさせます。

・INAZUMAシリーズ

イナズマは長濱の原酒に他の蒸留所の原酒をブレンドしたブレンデッドモルトウイスキーのシリーズです。三郎丸蒸留所や江井ヶ島蒸留所、ハイコースト蒸溜所、ヴァレンギエム蒸溜所のアルモリックの原酒を使ったボトルなどがリリースされています。

ラベルには水辺にいる二羽の鳥のイラストが描かれており、ラベルの中心に琵琶湖のシルエットが配置されているのも特徴です。イナヅマはイナズマロックフェスと同じく、滋賀県の車のナンバープレートの通称「稲妻ナンバー」から取られているものと思われます。

・長濱ニューメイク

・種類:シングルモルトウイスキー
・材料:モルト
シングルモルトウイスキーの原液「ニューメイク」を商品化したウイスキーです。樽で熟成させる前のニューメイクをそのまま瓶詰めして販売されています。4種類のラインナップがありましたが、現在は無印の『長濱ニューメイク』のみの販売になっています。評論家のステファン・ヴァン・エイケンは長濱のニューメイクを「非常に飲みやすい。リッチで極めてフルーティ、やや花のようで、穀物由来の甘さがよいバックボーンになっている。」と評しています。

ボトルは「シングルモルト」と共通ですが、熟成も着色もしていないのでウォッカのように透明です。ラベルも絵が描いてありますが、シンプルで熟成させていないことを全面に出しているな、という印象です。

2、琵琶湖蒸溜所

所在:滋賀県高島市 新旭町旭83
稼働:2023年〜
会社:川島酒造株式会社
1865年(慶応元年)に初代当主である弥之助によって創業された酒造で、2023年に酒蔵の敷地にウイスキー蒸溜棟が竣工、ウイスキー蒸溜を開始しました。日本酒は『松の花』をはじめとし、様々な種類を製造しています。

高島市新旭町の針江地区は、比良山系から琵琶湖へ流れる伏流水が豊富に湧き出る地域で、湧き出す水が水路となって集落をめぐり、地域の人びとは各家庭から湧き出すこの水を生水(しょうず)と呼んできたそうです。水質・水量ともに優れた環境は、上質なウイスキーをつくるための源泉になっています。この地域は、冷たく清澄な水が用いられ、香り華やかでバランスの良い銘酒の数々が生み出されてきたウイスキーの聖地ともいわれるスコットランドのスペイサイドエリアの硬度と同じく約20度の軟水です。

・BIWAKO DISTILLERY’S

残念ながら、まだ製品の発売は行なっていません。琵琶湖蒸溜所のウイスキーは2023年の自家蒸溜以前に樽熟成を試みたウイスキーの限定的な販売でした。その時の情報を見てみると以下のように書いています。

私たち琵琶湖蒸溜所が本流と定めたピュアモルトウイスキーの追熟から始まったウイスキーづくり。輸入原酒を「ミズナラ」「サクラ」「クリ」の樽でフィニッシュし、2023年に瓶詰めを行ったラインナップは限られた千本余の出荷となります。

BIWAKO-DISTILLERYウェブサイトより

以上から考えると、メインは「ミズナラ樽、サクラ樽、クリ樽の3種類のシングルモルトウイスキー」を発売するのではないか、と推測できます。また、ウェブでスペイサイドの名称が出ていることから、本場スコットランドが認める3年の熟成期間を満たすことが考えられますので、来年2026年に発売するのでは?と予想しています。発売が楽しみですね。

2023年時のボトルのデザインを見てみると非常に特徴的です。「BIWAKO DISTILLERY’S」の文字は直接ボトルに印刷されており、熟成樽の説明はラベルに印刷されています。ラベルに使用されているフォントはフォーマルなスクリプト体で、日本のデザインとは思えない美しさがあります。購入したら見える位置に置いておきたいです。

さいごに

滋賀県では日本酒や焼酎ブランドは多いものの、ウイスキーブランドは長濱蒸留所と琵琶湖蒸留所の2ヶ所、クラフトジンに関しては滋賀県産の日本酒がエシカルジン『REVIVE from NINJA』の原材料になっているだけです。

・エシカルジン REVIVE from NINJA

滋賀県の酒蔵「瀬古酒造」の日本酒『忍者』を使用し、一般的には廃棄される茶の木の幹を使用した古木茶と、上質な煎茶のふたつの「茶」をメインボタニカルに位置付けたエシカルジン。東京都台東区の「エシカル・スピリッツ株式会社 / The Ethical Spirits」が製造しています。

現在、和食や日本酒、ジャパニーズウイスキーが世界から注目されてきている中で、滋賀県産のウイスキーやジンももう少し増えてくれると嬉しいなと思っています。

そして、デザイナーのつぼた(私)と、アーティストの神保民香さんの2人がタッグを組んでワインやウイスキーなどのお酒のラベルのデザインをしようと計画をしています。もし私に、もしくは2人にデザインを依頼したいなど興味のある方はご相談ください。ではッ。

SPOT DESIGN 坪田将知

●note:滋賀県(非公認)観光大使つぼた
●note:SPOT DESIGN つぼた

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