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【イベントレポート】偏愛フォントを語る会 〜SHIFTBRAIN × PARK〜
こんにちは、シフトブレイン広報の坂です。
先日、シフトブレインnoteで好評いただいている偏愛フォント記事の番外編オンライントークイベント「偏愛フォントを語る会〜SHIFTBRAIN × PARK〜」を行いました。
これまではシフトブレインのデザイナーの偏愛フォントをコメントと共に記事でご紹介してきましたが、オンラインイベントは初めての実施です。
イベントでは特別ゲストにPARK Inc. 代表の佐々木 智也さんをお招きして、シフトブレインのアートディレクター、デザイナーと共に好きなフォントについて思う存分語っていただきました。
今回のnoteでは、イベントトークテーマの1つ「佐々木さんの偏愛フォント」のパートをレポートでお届けします!
登壇者のご紹介

PARK Inc. アートディレクター/代表取締役
広告制作会社、Saatchi&Saatch Fallon、面白法人カヤックを経て、2015年にPARK Inc.を設立。スタートアップ・ベンチャーのコーポレート及びサービスブランディングを中心に、Web、パッケージ、プロダクト、グラフィックなど領域横断的に手掛ける。2020年夏、メンズスキンケアのD2Cブランド『LOGIC』を立ち上げ、事業家としても挑戦中。
一番好きな全角ハート文字は、源ノ角ゴシックのハート。

SHIFTBRAIN Inc. アートディレクター/デザイナー
初めて買った欧文フォントは、Gotham(Hoefler & Co.)、和文フォントは、ドットのじ1.0(ヨコカク)。

SHIFTBRAIN Inc. 外部デザイナー
SHIFTBRAIN 偏愛フォント記事ライター。
欲しいなと思いつつ買えていないフォントはSaol Displayの Italic。
PARK 佐々木さんの偏愛フォント
実は、ゲストの佐々木さんとシフトブレインの藤吉は以前同じ職場で働いていた同期。イベント中も普段呼び合っている「トモ(佐々木さん)」、「とーきっちゃん(藤吉)」の呼び名でお話が弾みました。
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早速ですが、イベントの様子をトーク形式にてご紹介していきます!
01: TT Norms Pro
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佐々木さん:1つめは、TT Norms ProというType Type社が出しているサンセリフのフォントです。
このフォントを選んだ理由はデザイナーあるあるで、自分のベースとして常用したいサンセリフをどれにしようかっていう問題があって。昔は何でもHelveticaを使っちゃう時代があったじゃないですか、別に悪いことじゃないんだけれど。
藤吉:根強いですよね。
佐々木さん:僕が美大生だったとき、 Helveticaは時代を謳歌している書体で、もう何でもかんでもHelveticaでした。1990年から2000年ぐらいにかけて、お洒落なCDジャケットはみんなHelveticaだった。もちろんトレンドもあるので、移ろいはあるんですけど。WEBデザインを手掛けるようになってからはスクリーンでも使えて、ややジオメトリックなフォントを色々と探していました。最初はWebフォントでも使えるもの......Gothamっていうフォントも流行ったと思うんですけど、オバマ元米大統領(Barack Obama)のPRでも使用された書体で。
藤吉:僕が初任給の次のお給料で買ったのがGothamでした。Gothamは2000年頃にでた書体で、ネオグロテスクからジオメトリック・サンセリフの流れを作った結構重要なフォントだと思う。
佐々木さん:若手時代は費用的にGothamやAXISはなかなか手が出ないフォントだった。そんな時にMontserratっていうGoogleフォントでも提供されているウェイトが豊富なフォントが出ました。Montserratを使いながら、Montserratの不完全な部分をGothamを参考に「G」に棒を足すとか……そうやって使っていました。
Webフォントも無料で使えるので、Montserratはよく使ってたんだけど。Montserratってすごい癖があって......少し可愛かったり、特定のいくつかのアルファベットがなんでそんな形?っていう。大文字の「G」とか「Q」とか、もうちょっとオーソドックスな形にすればいいのにと思っていて。そこからもっと使えるフォントを探して、見つけたのがTT Normsでした。
そのきっかけとなったのが3年前くらいに作った『8 THE THALASSO(エイトザタラソ)』というヘアケアブランドのパッケージです。スキンケア発想のヘアケアブランドという商品だったので、ニュートラルで水々しく、ずっとスタンダードであり続けるようなものを作りたくて。ジオメトリック・サンセリフを探していた時に出会ったのがTT Norms。それ以来、ヘビーユーザーです。
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佐々木さん:『YOUR MEAL』もロゴはTT Normsです。多少いじっているので完全にそのままじゃないんですけど、サービスのレギュレーションも欧文はTT Normsにしています。
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一人ひとりの目的や好みに合わせた食事をお届けするカスタムミールブランド。
佐々木さん:他にも僕が運営している『LOGIC』というスキンケアブランドでも、『LOGIC』のロゴ自体はセリフ体ですが、ロゴ以外にはTT Normsを使ってます。
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佐々木さん:まず最初に何か新しいものを作る時に欧文はTT Normsにしてるし、Webサイトで英語のタイトルを入れる時にも使っています。日本で10位以内くらいにTT Normsに課金しているんじゃないかっていう......(笑)。
高野:TT Normsはシフトブレインもよく使っていますよね!
藤吉:そうですね、シフトブレインも大好きな書体のひとつです。それまではBrandon Textという書体をメインの欧文フォントとして使用していましたが、TT Normsに変えました。
高野:現在のコーポレートサイトもTT Normsですよね。
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佐々木さん:そうだったんだ!個人的にTT Normsには1点だけ嫌いなところがあって、「Q」だけがすごく不細工に感じています。TT Normsを使用する時に「Q」が入る場合は作字する方針でいます。使う時に「Q」だけは入らないでほしいと思っていますね......。
藤吉:もし「Q」以外にも「ここはこうしたい!」っていう点が多くでてきたら、セミカスタムフォントとしてTT Normsをベースに気になるところを全部直してもらえますよ!
佐々木さん:そんな対応してくれるんだ!?
藤吉:そうそう。これまではそういう対応には結構費用がかかってたんだけど、もっと気軽にやりたいってことでType Type社が去年の冬にパッケージ化して打ち出したんだよね。だから、トモのオリジナルの「Q」がフィットするフォントも割と安く作れる。
佐々木さん:それはけっこう耳寄りな話......。
藤吉:でも「Q」だけのためにカスタムフォントを作るのはきっと社員のみんなが納得しないから(笑)。偏愛じゃなくて偏屈おじさんになっちゃうからね!もっと気になるポイントが溜まってきたらやってみるといいと思う。
佐々木さん:そうだね。でも「Q」以外は非常に使いやすい。サンセリフってBoldはいいけどRegularやLightをあんまり使わないこともあれば、その逆もあるし。僕は太いものを使いがちで。
高野:太いサンセリフを使い始めたのには、何か系譜があるんですか?
佐々木さん:可読性やアテンションを考えたときに結果的に太いのを選んでいるというか。僕は今、パッケージ系のデザインが多くて、細いものが使いにくい。細いと売り場でどうしても華奢に見えてしまうから。デパートなどでちゃんとその商品の売り場がある場合はいいんですけど、色々なものが陳列されている売り場の商品を作ることが多いので、結果的に太いものを選択することが多くなる感じですね。
高野:可視性とどう目立つかを考えると、TT NormsのBoldもばっちりということですね。
佐々木さん:Boldが特に綺麗ですね。DINとかでもあんまり太すぎるとちょっと不細工になったりするんで、そういう意味でもTT Normsは近年愛してやまないフォントです。
高野:藤吉さんはTT Normsで好きなウェイトはありますか?
藤吉:RegularとBoldを使用するのが多いかもしれません。
高野:最も使いやすいウェイトが最も好きという、いいパターンですね。
藤吉:そうですね。シフトブレインのドキュメントは基本的にTT NormsのRegularばかりを使っていますね。
高野:シフトブレインはプレゼン資料もTT Normsですもんね。偏愛フォントが被っていますね。
藤吉:ここまで被るとは思ってなかった!
高野:TT Normsはそこまでメジャーなフォントではないので、3人ともTT Normsが好きなのは珍しいです。
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藤吉:『8 THE THALASSO』の「8」は、TT Normsをそのまま使っているんですか?
佐々木さん:「8」って雪だるまみたいになるので、上の丸と下の丸のバランスはオリジナルからは少しバランスを変えています。
高野:数字だと藤吉さんは、TT Commonsがお好きでしたよね。TT Commonsは同じType Type社のフォントで、TT Normsと並ぶ売れ筋2TOPのフォントです。
藤吉:そうなんです!TT Commonsは、世界中のジオメトリック・サンセリフを収集、検証して作ったフォントです。Type Typeさんが自分達のために作ったフォントです。僕個人としては数字の形はこちらのほうが好きなんです。もし自分のためだけにフォントをカスタムする場合は、TT Commonsをベースにすると思います。
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高野:今回の「偏愛フォントを語る会」のサムネもイベント日時など数字の使用が多かったので、TT Commonsで組みました。
Type Type社のフォントはお手頃な価格なので、例えばRegularだけ買ってみるなど、色々なフォントを試していただくのもおすすめですね。
02: こぶりなゴシック
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佐々木さん:2つめは和文から、こぶりなゴシックです。日本語の少し柔らかみのあるゴシックについてもどれにしようかという問題があって。色々な変節があり、現在はこぶりなゴシックをかなり愛用しています。
『LOGIC』で出しているオンライン広告のバナーも、こぶりなゴシックに欧文のTT Normsを組み合わせています。TT Normsはこぶりなゴシックのウエイト6にぴったり合う太さがないので、TT NormsのMediumの線を太らせて使っています。
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佐々木さん:これは、モリサワフォント全盛期の20年くらい前の話なんですが、広告業界でゴシックといえばMB31(見出ゴシック体)か、MB101。細いゴシックは中ゴシ(中ゴシックBBB)で、あとは新ゴ。みんなが呼吸をするようにこれらを使っていたから、少し違いが欲しくてロダンとかが流行ったりしましたね。そういうのを通過して、こぶりなゴシックに落ち着きました。
こぶりなゴシックは少し角がやわらかいんですよね。組み合わせているTT Normsは角が丸いわけではないんですが、最近の太めのサンセリフは比較的角が柔らかいものが多く相性が非常によいです。
ただ、こぶりなゴシックにも2つ難点があって。1つ目は、Type Squareに対応していないこと。モリサワパスポートで使えますが、Webフォントには対応していなくて、そこが残念。2つ目は、欧文にけっこう癖があって。Noto Sans JPにも近いことが言えるんですけど、日本語に比べて英数字が......アイデンティティが変わっちゃうというか。
今日はフォントがテーマなのですごく細かい話になりますが、『LOGIC』は「60秒で完了するスキンケア」と謳っているので、「60秒」という言葉がよく入るんです。その時に色々試して発見したんですが、調整は少し必要なものの、こぶりなゴシックの全角数字は意外に良いということ。
藤吉:バナーの「60秒」はこぶりなゴシックの全角数字をあててるんだね。
高野:その他の数字はTT Normsですもんね。でも「60秒」のところは馴染んでいますね!
佐々木さん:もともとが少し小さいので大きくはしていて、そういった扱いにくさはありますが。あとは角を溶かして使うとまたいい味わいになりますね。
手癖かもしれないですけど角が丸めなものが好きな傾向にあるので、こぶりなゴシックをちょっと太らせたり角を潰すか、Webフォントにも対応しているA1ゴシックを使うという選択肢がよくあります。A1ゴシックは角が丸みを帯びていて、写植を焼いたものをパス化したみたいなコンセプトがあるのかな?少し甘焼きみたいになってる感じ。そのまま使えるからいいんですけど、ウェイトのバランスが非常に悪く感じていて......。
高野:わかります。Boldが太すぎたりとか......潰れてますよね。
佐々木さん:そう!太くしたい時に、だいたいA1ゴシックの場合は2番目に太いやつを使うんですけど、それよりはこぶりなゴシックのW6のほうが太さが程良くて使用頻度は高いです。
あとはどうしてもこぶりなゴシックが使えない時、特にコーポレートアイデンティティとかを決める際には、指定の日本語書体にこぶりなゴシックの代用書体として游ゴシックをあてます。この2つは近いというか.......。
藤吉:めちゃくちゃ似てますよね。
高野:日本語フォントとして、モダンな感じですよね。字面が小さく余白が大きい。
藤吉:うん、懐がせまい。
佐々木さん:游ゴシックはMacに標準で入っているし、最近ではWindowsにも入っていたりするので汎用性が高いんですが、民主化されすぎてちょっと癪だなあという気持ちもあって。天邪鬼な部分でこぶりなゴシックを使っています。
高野:游ゴシック、Regularが細すぎるなといつも思っています。可視性が下がるというか。こぶりなゴシックのほうが確かに使いやすいですよね。あと、游ゴシックはPCにはデフォルトで入っているけどスマホには入っていないので、Webフォントとして使うとかなり大変なことになるという。
佐々木さん:iPhoneだとヒラギノになっちゃうしね。
藤吉:こぶりなゴシックや游ゴシックはわりと衝撃的でした。ゴシック体だけど明朝体みたいなニュアンスがちょっと欲しいなっていうときや人間味が欲しいときに、これまではそういった書体がほんとになくて。これが存在していることにすごく感謝している。今は他にも色々な選択肢がありますけど、それでも割とメジャーなところにこういった書体があることが嬉しいです。
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続きが気になる方に
偏愛フォントを熱く語る様子は伝わりましたか?
このテーマの他にも「AD 藤吉の偏愛フォント〜作字〜」「PARK 佐々木さんに聞きたい!フォントの選び方」など盛りだくさんでトークは続きます。
続きが気になる方に、このレポート記事の公開とあわせてイベントのアーカイブも公開しました!
レポートではまとめきれないほど沢山のフォントが挙がり、アートディレクター、デザイナー視点で語り合っています。佐々木さんからはフォントを選ぶ際の参考書籍の紹介もあるので必見です。
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Editor: Mihoko Saka