【ハーブ天然ものがたり】シナノキ/リンデン
日本の古布
シナノキ属、学名Tiliaは北半球の温帯地域を中心にひろがる高木で、世界におよそ30種ほどあると分類されています。
【ハーブ天然ものがたり】インド菩提樹にも綴りましたが、シナノキ属には菩提樹とよばれる種がいくつかあり、日本ではおもに寺院に植栽されてきたコバノシナノキや、本州以北から北海道に自生するオオバボダイジュなどがあります。
日本固有のシナノキは、学名 Tilia japonica、公園や街路樹にもつかわれる、日常生活に浸透しているなじみのある木といえます。
樹皮は繊維に、幹は彫刻や日用品に、花はハーブティとして、さらに蜜源植物としても重用され「シナノ木はちみつ」の品名で市場に流通しています。
シナノキの漢字表記には「科の木」「榀の木」「級の木」などありますが、ふるくは長野県が信濃の国「科野」と記され、シナノキから得られる科布をたくさん産出してきたことが由来となっているそうです。
シナノキを加工して得られる繊維、科布は、日本に木綿文化がひろがるまえまで重用されてきました。
繊維植物はたくさんありますが、科布とならんで葛や芭蕉(バナナの仲間バショウ科の多年草)も、古布好きの方々をうならせている趣ある布を生みだします。
木綿のものがたりはこちらの記事に紹介しています。
葛のものがたりはこちらの記事で紹介しました。
葛のツタからつくられる葛布、芭蕉の葉っぱから得られる芭蕉布、シナノキの樹皮(正確には靱皮という甘皮のようなもの)からとれる科布は、日本三大古布として和装業界をにぎやかしています。
古布のハギレや手作り雑貨はときおりひらかれる市に並んでいることもあり、関西在住のころは京都の下鴨神社で開催される「手づくり市」にいくのが楽しみでした。
北海道在住のころは、りっぱな熊の木彫りをみかけるたびに写真におさめて家人に送るというヘンな習慣がありました。
家人の地球を中心とした出生図(ジオセントリック図)では太陽のサビアンシンボルが水瓶座の23度「座って4つ足をふっている熊」だったというのが理由ですが、とうじの家人にとっては???マーク連発だったろうと思いますw
(余談ですが)現在は熊写真熱はおさまり、180°対抗にある獅子座23度「裸馬乗り」から、馬写真を送りつけるという奇行に変化していますw
(もとい)シナノキの木部は白く緻密でやわらかく加工しやすいことから、北海道では木彫りの熊につかわれることが多いです。
ほかにも割箸やマッチの軸、鉛筆、アイスクリームのへらなどにも利用されているので、さりげなくヒトのくらしに浸透し、人間界と自然界をつなぐ生命種として暗躍しつづけている植物なのではないかな、と感じています。
初夏に咲くクリーム色の淡い花はリンデンフラワーの名でハーブティになり、ほのかに甘さのあるやさしい風味で単体でも飲みやすいハーブです。
ヨーロッパではふるくから活用されてきた定番ハーブで、市場に出まわっているリンデンフラワー(別名ライムブロッサム)の原材料は西洋菩提樹(セイヨウシナノキ)がおおいです。
西洋の菩提樹
現代市場ではハーブティ原料は西洋菩提樹(セイヨウシナノキ)、学名 Tilia × europaeaが比較的おおく出まわっており、ヨーロッパでは樹齢1000年、2000年にもなる冬菩提樹や夏菩提樹の交配種になります。(学名の属と種のあいだに × があるものは交配種という意味です)
冬菩提樹、夏菩提樹、その交配種の西洋菩提樹は北欧からヨーロッパまでひろく分布し、ふるい時代から楽器や彫刻の木材として使用されてきました。
シナノキ属は地球の古樹のひとつで、葉っぱの化石がおよそ5600万年前~3390万年前までとされる地質層で発見されています。
ヨーロッパではライムツリー、またはリンデンとよばれますが、ふるい時代の英語表記、lind(やわらかい、温和、寛大の意)、またはline(線)を語源としてリンデン、ライムと呼ばれるようになりました。
分類学の父とも呼ばれる生物学者、カール・フォン・リンネは学名によって階層的に生物の種を分類する手法をあみだしました。
属名(たとえば Tilia=シナノキ属)と種小名( japonica=日本の)というように、ふたつのラテン語をくみあわせる体系を確立した人物です。
シナノキ属の学名 Tilia (ラテン語)は、日本語で菩提樹と翻訳されるので、学名ではシナノキ属、日本語訳では菩提樹というトリッキーなたてつけになっています。
賢者ケイローンのお母さん
西洋の菩提樹ともいえるシナノキはギリシャ神話の変化物語に登場します。
ギリシャ神話の登場人物が植物に化身するおはなしは、古代ローマの詩人オウィデウスの変身物語が有名ですが、人と神のあいだにあるニンフが化身する話がおおく、牧神パンとニンフの「葦(リードグラス)」や、女神アフロディテにつかえる巫女の「銀梅花(マートル)」などがあり、過去記事にもご紹介しています。
葦のものがたりはこちらの記事に綴っています。
銀梅花のものがたりはこちらの記事に。
いろんな変化譚があるなかで、女神が植物に化身した物語はすくないように思います。
半身半馬のケイローンを生んだのち、シナノキ(菩提樹)に化身したというピリュラ―は、クロノス時代のティタン神族のひとりで、黒海にすむ女神だったと伝えられています。
天空神ウラノスからはじまって、2世代目の土星象徴とされるクロノス、3世代目の木星象徴となるゼウスへとつづき、人神精霊いり乱れての愛憎ドタバタ劇を神話と考える社会のまっただなかにわたしたちは生きています。
クロノス神は黄金期とよばれる時代に農耕の神として称えられ、時を神格化したものという背景をもち、ピリュラーが身ごもったとき、クロノス神が馬に化身したことから半身半馬のケイローンが生まれたと伝承されてきました。
女神ピリュラーは半身半馬のこどもを産んだことを「恥じて」とか「おののいて」シナノキに変化したと伝承されていますが、そのあたり、いかにも現代脳的な解釈だなぁと感じています。
古代インド文明や古代シュメール文明を経て、古代エジプト時代は人と動物合体神のオンパレード、人とか動物とかはっきり区分けできるようなカタチのほうが、逆に神ががっていないことをあらわしていたかもしれません。
シュタイナーの「霊的宇宙論(春秋社)」には、かつてこの太陽系が誕生し、人や動物の萌芽が形成されてゆくようすを霊視したお話が収載されています(要約して引用します)。
『土星紀の出現。
土星の軌道いっぱいに火または熱だけがひろがっている。
巨大な火の玉、もしくは巨大な火の卵が存在し回転する時代。
現在の地球上では、地、水、風、火または熱の四大要素を区分けすることができますが、土星紀においては地、水、風の要素はなく火(熱)だけが存在していました。
「アシュラ」とも呼ばれる人格霊(原初)たちは、土星の軌道をめぐりながら獅子座の方向を起点に火の体に受肉しました』
『土星紀から太陽紀への移行。
太陽紀は木星の軌道いっぱいにガスと光がひろがっている時代。
土星軌道の内部で熱は一方では光になり、もう一方では煙とガスと空気が生じて木星軌道まで濃縮します。
太陽紀の人間である大天使は、木星軌道を周回しながらわし座(蠍座)の方向を起点にして、光を流出させることのできる内面と、ガスや空気から成り立つ体に受肉します。
大天使がすべてのガスを吸い込むと、まったく風のない状態が生じ、大天使が息を吐きだすと太陽(木星の軌道内)は流動する煙に満たされ、外へ向けて輝きを増します。
大天使は昼と夜の交代を可能にする存在として太陽紀を生きつづけました』
『太陽紀を経て火星の軌道に収縮された月紀とよばれる時代があり、当時の人間である天使は火と空気と水の成分から合成され「水の人」と呼ばれていました。
火星の軌道を周回しながら水瓶座の方向を起点にして、天使は火と空気と水のからだを受肉します』
『火星期を経て地球紀へ、進化の第四状態にあるわたしたち人類は、牡牛座の方向を起点にして土と水と空気と火の成分でつくられたからだに受肉しました』
シュタイナーの「霊的宇宙論」では、
土星軌道サイズの土星紀には獅子座の方角によって人格霊(原初)が火のからだに受肉し、
木星軌道サイズの太陽紀にわし座(現代占星術での蠍座)方角によって大天使が火と空気のからだに受肉し、
火星軌道サイズの月紀には水瓶座の方角によって天使が火と空気と水のからだに受肉して、
地球紀には牡牛座の方角によって人間が火と空気と水と土のからだに受肉した、と綴られています。
土星紀の巨大な熱のカタマリが回転したときにあらわれた帯は、この太陽系のまえの太陽系記憶によって生みだされたもので、黄道獣帯よりもさらにその外にあらわれた、と綴られています。
ひとつまえの太陽系における存在たちの行為が刻印されているその環を、太古の叡智は「水晶天」と呼んでいたそうです。
物質は収斂してゆき、中心点において消失し、そして周囲からふたたび普遍的な象徴としてあらわれるという壮大な循環を、ヒトの視点からすこしはなれて想像してみます。
それはこの太陽系の惑星も、原初神のからだとされている炎も、時代や民族を統べる大天使も、自然界の精妙な存在たちも、そして人や動植物、虫はもちろん、無機物有機物とわずすべてが参加して織りなす、荘厳な宇宙絵巻のようだと感じます。
みなでたすきをつなぐように、あたらしい神話を紡いでいるまっただなかに、わたしたちは存在しているのだとしみぢみして、あたまのなかが無音になります。
海神オケアノスは外洋の神とされ、地球からの視点では大陸をとりまく外界との境界線です。
フラクタルに考えると土星の軌道をとりかこむリヴァイアサン・海蛇(ウロボロス)のようでもあります。
オケアノスの娘であるピリュラーは土星を象徴とするクロノス神との共同作業でケイローンを創造したと伝承されてきました。
外側からやってくるものを溶かして抱きかかえてしまうオケアノスのエッセンスと、軌道内の箱を堅牢にまもり境界侵犯をゆるさない土星エッセンスとのあいだに横たわる矛盾を、女神ピリュラーがとりもって太陽系にもちこんだとするならば、その落とし子が半身半馬のケイローンだったというのは至極とうぜん、自明の理とも思えます。
ピリュラーは土星軌道の外側にある記憶帯からエーテル体をのばして、この太陽系に萌芽をもちこんだ女神のひとりかもしれず、そんな女神のエッセンスを身のうちに宿すシナノキだからこそ「やわらかい線」という名で親しまれ、日本では菩提樹と呼ばれるようになったのかもしれないな、と。
海神オケアノスの娘である女神と、巨神ティタン族の長とのあいだに生まれたケイローンは、半身半獣というイメージを向上させてきた一人者というか、人と動物がまざった印象をおとしめることのない、いのちのカタチをしているなぁと感じています。
馬以外では人魚とか?(さいきんでは猫耳とかも?)神聖な合体イメージとして、境界やぶりのイメージアップ・キャラクターになっていると思いますが、そのほかの動物や爬虫類との半獣はなかなか市民権を得るところまでいかないもので、生物学者のリンネさんが科学者として(さらには西洋社会で貴族の称号を得た人物として)、人間を動物のなかに位置づけ、自然を支配するものではないと主張したのは、そうとう勇気のいることだったろうと思います。
矛盾を抱きかかえて体現しつつも、見たものを納得させてしまう存在感があるケイローンは、古樹シナノキとともにやわらかく、あたたかく、それでいて力強い流線を描いて、古の記憶と現代の時間をつなぎつづけているのかもしれません。
☆☆☆
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