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【短歌】7月の夜の底に降る星たち

サイダーの瓶越しに覗く7月は泡沫の光に溢れて

散らばった金平糖を天の川銀河に見立ててかたどる星座

砂浜に一等星が瞬いて夜へと延びるパラソルの影

ほとぼりは夜の底へと落ちるから火消しバケツに夏が満ちていく

花束の代わりとしての彗星を拾い集めに漕ぎ出す自転車


 抱えた感情に関係なくこの季節は世界に心を開いてくれるから、夏の光に照らされて外に出る機会が増えている。最近は読書会に参加したり山に登ったりして過ごしていて、ずっと挑戦してみたかったキックボクシングも習い始めた。人と過ごす時間が増えた気がする。他人から受け取った優しさや誰かと笑い合った総量を比べることに意味なんてなくて、だからその数が多いほど幸せだなんてそんな単純な話があるわけはないけれど、そういったものを積み重ねることは素直に嬉しいから、誰かと接するときにはその人に親切でありたいし笑顔にさせたいと思っている。
 夜になれば散歩に出かける。歩いた先のドラッグストアの閉店間際に駆け込んでアイスを買う。それを食べながら空に顔を向ければ夏の星座がまばらに光って見えて、深呼吸をするとまとわりつく湿度から解放された体が軽くなった気がしてくる。海外を旅していたときも自転車で日本各地を巡っていたときも寂しくなったら空を見上げていて、ありふれた言葉だけど、どこにいても空はどこかの空と繋がっているんだということを思っていた。そういうことを思うといままで出会ってきた大切な人たちのことが懐かしくなって、今なにしてるんだろうなんてことを想像したりして、たくさん笑えてるといいなと願う。願うけれど、本当は笑えていても泣いていても、元気でも元気でなくても、感情に優劣はないから別になんだって大丈夫だとも思う。ただ、いつかは笑うぞー!って希望とか期待みたいなものを持っていてくれたり、そう慰めてくれる人がそばにいてくれたらいい。同時に、人生の一時だけだとしても繋がってくれてありがとうって真っ直ぐな気持ちも伝えたくなって、そんな思いが彗星に形を変えて空を超えていってくれればいい。


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