190430_時代おくれの男になりたい_28日目
あと半日で平成が終わる。
平成最大の大晦日があと12時間を切っている。
あらためて、「元号」っておそろしい発明。
西暦が時間の流れを支配する社会において、「元号」という社会制度だけが、別の歴史を作ることができる。
日本では、知らず知らずのうちに、「西暦」以外の歴史の文脈のもとに暮らすことになる。
平成。
そんな歴史の一時代が、今日、終わる。
いきなり!河島英五
突然ですが、みなさんは河島英五という方をご存知ですか?
河島英五さんはシンガーソングライターで、代表曲は『酒と泪と男と女』です。おじさんがカラオケでよく歌っている曲、というイメージが強いかもしれません。
2000年前後に生まれた子たちは知らないだろうなあ。
いきなり!阿久悠
突然ですが、みなさんは阿久悠という方をご存知ですか?
阿久悠さんは昭和の大作詞家で、ピンク・レディーや沢田研二さんの楽曲の作詞を手がけられていた方です。
数年前の24時間テレビで、亀梨和也さんが阿久悠さんを演じるミニドラマがありました。
わかりやすい偉業でいうと、あの秋元康さんに抜かれるまで、シングル売上(時代感じる)歴代1位でした。(6831.9万枚!!)
阿久悠さんの偉業について今度あらためてまとめたいと思います。
河島英五✕阿久悠=『時代おくれ』
河島さんの手がけた楽曲の中で、唯一、阿久さんが手がけたものが『時代おくれ』という曲です。
細かいことですが、この曲の作曲は森田公一さんです。阿久悠✕森田公一で有名な曲といえば、和田アキ子『あの鐘を鳴らすのはあなた』。
この曲は1986年に発売。バブル景気突入前夜につくられた曲です。
阿久さんはおそらくもっとも「時代」に敏感な人間でした。
毎日、新聞やニュースを見ては、象徴的な出来事などを、自身の好きな野球の試合結果とともに記録していたようです。
常に時代の飢餓感をキャッチしろ
これが阿久さんの信念。
そんな阿久さんのキャリアは80年代にはピークを過ぎていました。
そんな阿久さんの最後のヒット曲ともいわれる『時代おくれ』。
『時代おくれ』との出会い
すこしだけ、ぼくとこの曲の出会いについてお話します。
ぼくがこの曲と出会ったのは確か中学1~2年生のころでした。
テレビで河島さんを取り上げた番組があり、そこで聴いた『酒と泪と男と女』の素晴らしさに胸を打たれました。
数日のうちに親にお願いし、ベスト盤のCDを買ってもらいました。
おなじころ、並行して聴いていたのが、クイーン、マイケル・ジャクソン、バックストリート・ボーイズ、レニー・クラヴィッツ、ジャミロクワイなどでした。ギャップがすごい。(ヒップホップにドハマリする前でした)
ベスト盤の確か2曲めにこの『時代おくれ』が入っていたんです。3曲めは『野風僧』というこれまた名曲。
はじめて聴いたとき、(´;ω;`)ブワッと涙があふれてきました。
多感な時期だったから、ということもあると思いますが、今思えば、自分の「なりたい姿」そのものに出会えた喜びからだったんだなあと思います。
愛してやまない
著作権などがあるので、歌詞全文は載せられませんが、『時代おくれ』は本当に歌詞全文が素晴らしいので、ぜひ読んでみてください。
ぼくが特に愛してやまないフレーズをいくつか紹介させてください。
言語化言語化うるさい世の中でもなお、その繊細さや品性においてこれらに敵うフレーズに出会ったことはありません。
不器用だけれど しらけずに
純粋だけど 野暮じゃなく
あえてぼくが言うことでもないのかもしれませんが、この微妙な感覚を言語化できるってすごくないですか。
理想とするイメージの微妙で繊細なニュアンスを表現できている。
というか、言葉ってたぶん、こういう微妙なニュアンスを伝えるためにあるんですよね。特に日本語。
「I love you.」というようなフレーズと同じ「言葉」ではあるけれども、違う用法だと思ったほうがいい。
「愛していると云ってくれ」はなぜ云ってほしいかというと「愛している」はつまり愛情表現、心情の伝達であるからだと思います。
それはこの場合の、「微妙なイメージを具現化する手段」としての言葉の使い方とはまた違う。
もう一つのお気に入り。
ねたまぬように あせらぬように
飾った世界に流されず
好きな誰かを思いつづける
時代おくれの男になりたい
最高じゃないですか。ひたむきさ。一途さ。
河島さんの歌唱が最高だったから
今回あらためて振り返りながら思ったんですけど、この曲の大事な要素って歌詞や楽曲だけじゃないですね。
河島さんの歌唱が本当にすばらしい。「発声」や「音程」じゃない、「歌唱」。
河島さんがこの歌詞の魂を理解し、心から歌っていたでしょう。
そんな歌詞を書ける阿久悠先生の凄さ。阿久悠先生。。。。涙
(ぼくの誕生日の日付が阿久悠先生の一日後ということもあり、すこし縁を感じています。ちなみに、松本隆先生に偶然お会いした日付は、その十日後でした)
時代おくれの男になりたい
平成から令和に変わる。
これからどんな時代になろうとも、ぼくは怖くない。
それはこの曲があるから。
どんな時代になろうとも、ぼくはこの曲と生きて、死ぬ。
そして、誰かにとっての、この曲をつくりたい。それがぼくの夢だ。
(と、今これを書いていて気が付きました)
目立たぬように はしゃがぬように
似合わぬことは 無理をせず
人の心を見つめつづける
時代おくれの男になりたい