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ゴラム似の魔女から皆を守れ!ひと夏の冒険と恋と家族の絆の物語「ウィッチサマー」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(723日目)

「ウィッチサマー」(2019)
ブレット•T•ピアース監督
ドルー•T•ピアース監督

◆あらすじ
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17歳のベンは、父リアムの住む町に来た。両親の離婚後、父と夏を過ごすためだ。リアムの家の隣には、4人家族が暮らしている。ある日、ベンが帰宅すると、隣の家からおびえた少年ディロンが逃げてきていた。ディロンは、ママの様子が最近おかしく、自分のママではないと言う。その日からディロンは、夜遅くまで部屋の窓から隣の家を監視することにした。しかし、それから数日後、ディロンは姿を消してしまう。心配したベンは、隣の家の父親にディロンのことを尋ねると、「私に息子はいない」と答える。不振に思ったベンは隣の家に侵入するが、それは想像を絶する悪夢の始まりだった...。(Filmarksより引用)
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『1000年もの間生きながらえ、人間を襲い続けた魔女の存在を知ってしまった少年が家族や友人を守るために魔女に立ち向かう』というジュブナイル要素強めの青春ホラーです。

※ネタバレをしてしまうと面白さが半減すると思われますので今回はそのあたりを回避しつつご紹介させていただきます。

不安を煽る演出が光ります。(映画.comより引用)

これはもう完全にやられましたね。伏線の張り方が実に見事で察しが悪い私はまったく気づきませんでした。伏線張る系の作品って「ラストはこうなるんだろうな」とある程度予想がつく分かりやすい作品と、「マジで?本当に!?」と心底驚かされる作品があると思うんですけど今回はもちろん後者のパターンです。

個人的には“そうなのかな”と予想できる前者のパターンの方が好きだったんですけど、ここまで見事だと何の文句も言えないですね。脱帽です。

ちなみに前者パターンで私が一番好きな作品はこちらです↓

そういった大どんでん返しはもちろん素晴らしいんですけど、個人的には『主人公の少年が恐ろしい事態に直面するも、家族や好きな子を助けるために勇気を振り絞って脅威に立ち向かう』という王道のジュブナイルなシチュエーションが大好きなので、そういった意味でも相当好きな作品でした。

主人公のベン(映画.comより引用)

余談ですが、今作はアメリカにおいて新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって公開予定だった有名作品が次々と公開延期となっていた時期(2019年)の作品です。

そんな状況下でも今作は延期という策を取らずにあえてドライブインシアター等で公開。競合となる作品がほとんどなかったという状況も味方し、最終的には制作費6万6千ドルに対して、興行収入は430万ドル超えと大ヒットを記録しました。

ドライブインシアターとか野外スクリーンとかで映画を見るのも乙ですね。(映画.comより引用)

そんな今作の監督•脚本を務めたブレット&ドリュー•T•ピアース氏は実の兄弟で、まさかのゾンビ視点で展開するコメディホラー映画「ゾンビ•ヘッズ 死にぞこないの青い春」(’11)で長編映画監督•脚本デビューを果たしました。

こちらの作品に関しては日本では劇場未公開でサブスク等にもあがっていないのが非常に残念です。ゾンビが立ちションしてたら珍棒がもげるシーンがあるそうです。是非とも拝ませていただきたいものですね。

ちなみに彼らの父親であるバート氏はサム・ライミ監督の不朽の名作「死霊のはらわた」(’81)にて特殊撮影(VFX)を担当しており、その縁もあってか今作のジャケ写等にもサム・ライミ氏のコメントが寄せられております。

現在アマゾンプライム、U-NEXT、ABEMA、huluにて配信中です。

サム・ライミ氏はどの映画も絶賛しがちです。
(映画.comより引用)

◇17歳のベンは夏休みを利用し、別居中の父親が暮らす田舎町にやって来た。父親と会うことをあまり快く思っていない母親との間で板挟みとなるベンはスイミングやダイバーのインストラクターとしてアルバイトをしながら、そこで知り合ったマルリーと徐々に惹かれ合う。そんな折、隣に住む一家の長男であるディロンという少年と出会うのだが、彼は自分の母親にひどく怯えていた。彼曰く、母親の様子が日に日におかしくなっており、あれは母親ではないと言う。その日からベンもディロンの母親に違和感を抱いており、こっそり監視を続けていたのだが、ある日とうとうディロンが行方不明となってしまう。心配するベンだったが彼の父親は「私に息子はいない」と答え、ベンを追い返す。必死にディロンの家のことを調べていたベンは彼の母親が1000年も生きている魔女に体を乗っ取られているという恐ろしい事実にたどり着く…

というのが今作の大まかな流れになっております。

ディロンを狙う母親(魔女)(映画.comより引用)

『魔女の存在に気づいてしまった主人公のベンが必死にその存在を訴えるも、当然誰も信じることはなく、魔女の策略により孤立していく』という、味方や理解者が周囲におらず、異常者扱いされていく状況作りが素晴らしいです。

また、キャラ同士の関係性なんかもすごく繊細に描かれていてとても良かったです。特に主人公のベンの父と母の間で板挟みになっている状況や父親のベンに接する感じなんかがとてもリアルで、この辺りも非常に好感が持てました。

さらには魔女による意識や記憶の操作はどこから始まっていたんだろうという所を考え始めると、「もしかしたらあれもこれも我々視聴者は全てまやかしを見せられていたのでは?」と想像が掻き立てられるため、見終わった後の良い意味でのモヤッと感がこれまた心地よかったです。

陽キャたちとの罰ゲームでベンの海パンを脱がして恥をかかせる嫌な女子(映画.comより引用)

これは全然書くほどのことではないかもですが、前半が何も起きないシーンが多く、少々ダレているように感じました。いけ好かない陽キャたちをあれだけ何度も出すならもうちょっと本編に絡めても良かったのかなとも思いました。いわゆる被害者要員かと思いきや何もなかったので「じゃあ何であんなに何度も登場させたんだろう」と気になってしまいました。

あと、ヒロインのマルリーがいまいちヒロインとして機能していないというか、ベンと会ってすぐに喧嘩をしてしまうので、どのあたりから急に惹かれ合っていったのかがよく分かりませんでした。

あんまりヒロインとしては機能していなかったマルリー
ちなみに小さく右に写っているのが魔女の正体です。(映画.comより引用)

良いところばかりなんですけどもただ一つだけ、魔女のビジュアと設定だけがあんまりハマりませんでした。

基本的には人間の中に入り込んでいるので言葉も喋りますし、人間のフリをしたまま近づいて子供を襲ったり、記憶を操作したりと静の恐怖を遺憾無く発揮しますし、人間の腹を割いて中からヌゥっと登場する様は圧巻の一言です。

なんですけどもその正体のビジュアルがいわゆる魔女のそれではなく、どちらかと言うと「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのゴラムに近くて、いまいち魔女っぽさが感じられません。

人間の言葉を喋ることもなく、1000年生き続けていることへの自信とか余裕みたいなものがなく、すぐに襲いかかってくるので魔女というよりかは本能で捕食し続け、気づいたら1000年生きてたクリーチャーのようです。これがものすごい高貴で美しい女性だったり、魔法らしい魔法を使っていれば魅力も増したと思うんですけど、いまいち華がなかったです。魔女だからこその設定みたいなものがもう少し欲しかったです。

魔女じゃなくて森の精霊とかでも話の内容は変わらなかったと思います。(映画.comより引用)

塩や物理攻撃が通用するため、“なんとか対抗策を取れる”、“ギリ倒せるかもしれない”くらいの強さ設定だったのはすごく良かったと思います。なもんでおそらくは戦闘力で生きながらえたというよりかは狡猾で人間を貶めて1000年もの間生き続けたんだと思います。

クライマックスでベンの話を信じて助けにきた父親が魔女に車で体当たりするシーンは非常に胸熱ですし、塩がまぁ万能です。物語の鍵を握るアイテムと言っても過言ではないくらい活躍します。

写真も非常に重要となってきます。(映画.comより引用)

ラストも「やっぱそうだよな」という後味が悪いものになっており、完全にそうだというわけではないけど十中八九そうじゃん!みたいな描き方が非常に好みでした。

Filmarks等で感想を見るとネタバレに近しいことがたくさん書かれているため、まずは先に視聴したほうがいいかもです。普段私もこのnoteで思いっきりネタバレを書きまくっているので人様のことをどうこう言えないのであれですが…

セリフの端々にヒントが隠されていたり、さりげなく引っ掛かるシーンが所々に散りばめられているため、全部を分かったうえでもう一度改めて見返したくなります。本当に見事な伏線でした。

王道のじっとりホラーでありつつ、少年のひと夏の冒険と恋と家族の再生物語をベースとしているため満足度がかなり高かったです。めちゃくちゃパンチが強いわけではないんですけども個人的にはかなり面白かったです。直接的な描写も無いですし、グロ描写が苦手な方でもご覧になれると思います。オススメです!

☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。

渋谷裕輝 公式HP↓


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