夏にぴったり!ノスタルジックなエモすぎジュブナイルホラー「トイレの花子さん」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(610日目)
「トイレの花子さん」(1995)
松岡錠司監督
◆あらすじ
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本町小学校の周辺で、小学生を狙った連続殺人事件が発生。同校に通う拓也のクラスで、生徒たちは自分も襲われないかと不安になる。そんな折、転校してきたばかりの美少女・冴子は人気者になったが、一転して殺人犯である幽霊“トイレの花子さん”だと噂されるように。彼女をかばう拓也だったが、冴子が疑われるような事態が発生。ある夜、拓は噂の真相を確かめようと深夜の校舎へ。そこで冴子と出くわし、意外な事実を知るが……。(Filmarksより引用)
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「バタアシ金魚」(’90)、「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(’07)、劇場版「深夜食堂」(’15)などでおなじみの松岡錠司監督が1995年に手掛けた作品で、子供たちを中心としたキャストでジュブナイル要素がかなり強めとなっています。
前田愛さんや河野由佳さんら子役陣を豊川悦司さん、大塚寧々さん、竹中直人さん、緋田康人さんなどの面々がしっかりと支えているため作品としての完成度も相当高いです。ちなみに栗山千明さんも出演されていらっしゃいます。
誰もが知る“トイレの花子さん”を恐怖の対象ではなく、子供たちを守る守護霊として描くという非常に斬新な切り口かつ私の大好きなジュブナイルホラーなのでとても楽しく見ることができました。
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先述しましたが、今作では“トイレの花子さん”を従来のような学校の七不思議や恐怖の対象としてではなく、子どもたちを見守る守護霊的な存在として描いているため実体などが映ることはなく、笑い声のみやトイレの扉が勝手に閉まるなどでその存在を表現しています。
そのため今作では「小学生ばかりを狙う不審者による連続殺人事件」と「“トイレの花子さんなのでは?”と疑いをかけられた転校生がクラスメイトからイジメられる様子」を軸に展開させていくため、オバケ的な怖さというよりかは完全に人間の怖さを描いています。
◇小学生ばかりを狙った殺人事件が立て続けに起きている本町。そんな本町小学校に転校してきた冴子は主人公ポジションである坂本兄妹(拓也となつみ)とすぐに打ち解け仲良くなるも、クラスで一番モテる拓也と仲良くしていることが気に食わない女子たちはこっくりさんのお告げや連続殺人事件などとこじつけて冴子をトイレの花子さん呼ばわりしていく。
ある日、学校で飼っていたヤギの首が切断され、それを目撃した冴子は「次は自分が殺されるのでは」と自分の身を守るために近くにあった血のついた鎌を持って校内をうろついていたところをクラスの女子に目撃されてしまい、ヤギ殺しの汚名まで着させられてしまう。極度の恐怖と緊張、イジメによるストレスで声を発することができなくなってもイジメが収まることはなく、ついにはトイレの個室に閉じ込められてしまい、夜の学校に取り残されてしまう。
冴子が学校に取り残されていることを知った拓也は急いで助けに向う。しかし同時刻、鎌を持った不審者もまた校内に侵入していた。
という風に展開していきます。
かなり子供向けに作ってあるとは思うんですけど、イジメの描写が非常にエグくてかなり胸に来るものがありました。最初は嫉妬からくる仲間外れ、それが徐々にエスカレートして無視に発展、最終的にはクラス全員の総意と称してトイレに閉じ込めるなど段階を踏んで内容がヒドくなっていく様子は見ていてかなりキツく、同調圧力や人間の業が垣間見えてとても嫌な気持ちになります。
特に『階段の踊り場で冴子となつみが会話中に視線を感じて振り返ると、階段の上からクラスメイト全員がこちらを無言で見つめていた』という演出はすこぶる恐ろしかったです。
またヤギの生首がダイレクトにがっつり写るのは今なら絶対に無理な演出だなと思いました。
学校に侵入した犯人から逃げ回る冴子と拓也。ラストはボロボロになりながらも冴子を守るために必死に犯人に食らいつく拓也でしたが力及ばず。犯人が冴子に馬乗りになって鎌を振り下ろすその瞬間、駆けつけたクラスメイトや教師、保護者が取り囲み、ついに犯人は観念する。
という、いかにもジュブナイルな終わり方がとてもステキでした。
ここで気になるのが、犯人はとんでもない数の子供たち(おそらく全校生徒)に取り囲まれます。「なんでそんな都合よく全校生徒が集まるんだよ!」とか「というか鎌持ってるんだから観念するの早くない?」とか「子どもたちも鎌持ってる男に近づくの怖いだろ!」等など色々突っ込みたくなります。
ここからは私の考えなんですけども、おそらくはトイレの花子さんの力によるものが大きいのではないでしょうか。
冴子と拓也が校内を逃げ回る時も都合よく犯人が転倒したり、鎌が壁に刺さって抜けなくなったりと明らかに子供たちを守るような事が起こりますし、全校生徒を呼び寄せたのも花子さんの力によるものなのかもしれません。子供たちに囲まれた時、もしかしたら犯人視点だとまったく違う何かに囲まれているように感じたのかもしれません。そう考えるとすぐに観念するのも納得です。
最後は、事件が解決して平和が訪れた学校の誰もいない教室で冴子と拓也がキスをするというかなりおませな締め方をしており、これも中々にエモいというか今では絶対に見られない演出だなと思いました。
あと、ここからは余談ではありますが
ご存知の通り“トイレの花子さん”を題材とした映像作品は非常に多いです。私調べではありますが、おそらく劇場版でもっとも古いものが今作の「トイレの花子さん」(’95)ではないでしょうか。間違ってたらすいません。
私は幼少期に今作を劇場で鑑賞した記憶がありまして、その時の同時上映が「ズッコケ三人組 怪盗X物語」だったと記憶していました。しかしこちらに関しては1998年上映なので正しくは「新生 トイレの花子さん」との同時上映でした。完全にごっちゃになっていました。
「ズッコケ三人組」はNHKのドラマ版も全て見ていたくらい大好きで、個人的にはハチベエのお父さんをあご勇さんが演じられていた時のシリーズが一番好きでした。
あと全然関係ないですけど、同じ枠で放送されてた「六番目の小夜子」とか「料理少年Kタロー」とかも面白かったですよね。土曜日の夕方の楽しみでした。
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